Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

立ち上げた会社を売却。24歳でChatworkへ。2年間で「経営者」「事業家」のスキルは格段に向上した。

ベンチャー企業複数社からの内定を断り、Webメディアを運営する会社を起業。半年でコロナ禍に直面し売却に至り、2021年3月にChatworkに入社した福本。約2年に渡って、新規事業立ち上げと、グロースを担う組織のマネジメントに関与してきました。なぜ、「経営者」から「従業員」へとキャリアチェンジしたのか、Chatworkのビジネスにおける強みは何か、この2年間で何を学んできたのか、詳しく聞きました。

■プロフィール

福本 大一
インキュベーション本部
ビジネスユニット DXソリューション推進部 マネージャー

奈良県出身。神戸大学経済学部に在学中に、自らの会社を起業。旅行系のWebメディアを手掛けたが、コロナ禍の末に撤退。2021年3月、Chatworkに中途入社。カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括するDXソリューション推進部のマネージャーに就任。全社戦略を推進している。

新卒の内定先を断り、憧れと勢いで起業した

――今のキャリアにつながる原体験はありますか?

奈良県の山村で育ちました。実家は工務店を営んでいて、父の働きぶりを見ていました。お客さんのほとんどが村の人たちで、私も父の仕事を横目で見ていて、人の温かさに触れる機会は多かった。一方で、外の世界への憧れもずっと持っていて、将来の選択の幅を広げるために県立の進学校に進学。大学は神戸大学の経済学部に通いました。

「生きていくためのお金は自分で稼ぎなさい」と両親には言われていたので、アルバイトの給料と奨学金で生活費をまかないながら、神戸で一人暮らしをして学校に通う毎日。生きる力をつけるために、就職活動には早期から全力で取り組みました。時間の許す限りインターンシップに通って、3年生の冬には複数社から内定をいただきました。そして、人材系のベンチャー企業への入社を決断したのです。

しかし、そのまま就職せず、起業へと舵を切りました。長期インターンに参加しながら、趣味でWebメディアを運用していた中で、今思うとほんの小さな金額でしたが初めて収益を生み出すことができました。そこでふと気づきました。ビジネスとしてコミットして資本を入れれば事業になるのではないかと。細かい試算などはもちろんしていたのですが、気づけば根拠のない自信を元に、好奇心のあるがままに内定先の会社にはお断りの連絡をして、自分の会社一本に絞りました。

今振り返ると、憧れと勢いで起業しました。新入社員として働くのではなく、いきなり経営者になれますし、自らでリスクを取って事業を立ち上げるのはカッコいい。そう思っていました。自分が頑張って事業を成長させることができれば、稼ぎにも直結する。脇目も振らずに、ファーストキャリアとして起業を選びました。

コロナ禍で事業がシュリンク。自ら立ち上げた会社を2年で売却

――ご自身の会社を立ち上げて、順調に成長したのでしょうか?

いえ、上手くいきませんでした。会社を立ち上げて半年後に、新型コロナウイルスの感染拡大によって、事業が大幅にシュリンクしました。旅行系のWebメディアを運営していたので、アクセス数が激減して、広告収益の見通しが立たなくなった。緊急事態宣言が出ると翌月の売上が半分吹き飛んでしまうといったこともあるような激動な日々でした。自分一人で生きていくには何も困らないような収益は創出できていたのですが、グロースが難しくなり、根本的に事業に対する意義を感じることができなくなったのです。

ユーザーが減少するサービスを運営する意味は何なのか。大手企業の旅行メディアがある中で、この小さいサービスを続ける価値はどこにあるのか。コロナといった自分ではどうしようもない外部環境の影響も大きく、資金も潤沢には無い中で、人を雇うこともできない。成長しない事業を運営することで、自分は何を得ることができるのか。1年くらい、ひたすら自問自答した末に、事業の売却を決断しました。ミッションもビジョンも掲げず、「社長になりたい」という憧れだけで起業した会社が、社会の変化の大きな渦に巻き込まれたら、継続するのは難しかったですね。

コロナ禍を事業への追い風にして、急成長している会社を横目に見ながら、考え方がガラリと変わりました。自分の会社からは離れて、そのような環境で力を発揮する方がポジティブに働けますし、社会のためにもなる。そう痛感して、売却を決断しました。悔しい思いはありましたが、次の環境に移るポジティブな感情の方が強かったですね。事業は失敗しましたが、その報酬として「事業はミッション・ビションを叶えるための手段である」と本質的に理解ができたこと、短い期間の中で仕事に圧倒的にコミットができた経験は間違いなく今の自分の成長の糧になっています。

Chatworkは、変化を乗り切れるミッションとビジョンを掲げていた

――2021年3月にChatworkに入社しますが、経緯や動機を教えてください。

元エス・エム・エスの執行役員で、Chatworkの取締役COOを務めている福田さんとの接点がきっかけです。就職活動時に内定を辞退したことをきっかけに福田さんと接点があり、SNSでつながっていました。ふとしたタイミングで福田さんがChatworkにジョインしたことを知って、以前から興味を持っていたのでメッセンジャーで連絡。そのまま面接を受けて、入社したのです。

Chatworkに転職先として興味を持っていた理由は、コロナ禍で急成長していたからだけではありません。ミッション(働くをもっと楽しく、創造的に)と、ビジョン(すべての人に、一歩先の働き方を)を明確に掲げていたからです。その2つを曖昧にして失敗に終わった経験から、Chatworkは社会に必要とされ続ける企業だろうと。次に身を置く環境としては、これ以上のものは無いと感じました。事業を通じて、どのような価値を世の中に提供していきたいのか。自問自答して苦しんだ時期があったからこそ、Chatworkの良さに気づいたとも言えます。

福田さんとお話しする中で、事業の可能性の大きさを実感できたのも大きかったです。ビジネスチャットツールを軸に、様々なサービスを中小企業向けに展開していく。コロナ禍を契機にDXの波が押し寄せる中で、その変化が最大級の追い風になると鮮明に感じました。

さらに、共に働く人たちにも惹かれました。現在も上長である桐谷さんにお会いして、同じ20代なのに、ここまで広い視野を持った人がいるとは!と驚きました。専門的なスキルに長けている人には多く出会ってきましたが、ゼネラリストとして年齢に比例しない圧倒的な優秀さにすごくインパクトを受けたことを覚えています。

変化が激しい時代において、そのど真ん中にいる会社には、ヒト・モノ・カネ・情報が一気に集まって来る。だからこそ、多くの優秀な人材がジョインしている。自分自身も、そんなChatworkでがむしゃらに働きたいと強く感じて、入社を決断したのです。

戦略ドリブンな機敏性が、Chatworkの最大の強み

――Chatworkに入社後は、どのような仕事をしましたか?

入社後の2年間は、苦しみながら、泥臭く走ってきました。入社当初は「Chatwork」のユーザー資産を活かして、とにかく新しいサービスを企画してリリースすることに注力していました。まだ事業開発の組織自体が立ち上げのタイミングだったので、とにかく手数を増やして、失敗しながら勝ち筋を見出すスタンスです。私が立ち上げに携わったサービスの一つに「Chatwork DX相談窓口」があります。ユーザーのニーズに応じて、提携しているDXソリューションを紹介するサービスです。ただし、ソリューションを紹介するだけでは、なかなか中小企業のDXが進まない難しさに直面して、別の事業も模索することになりました。

ミッションやビジョンの実現のためには、戦略や事業の方向性を変更するのをChatworkは厭いません。お客様との接点を通じて、本質的な課題が見えてきて、その解決が従来の戦略の延長線上に無い場合は、戦略を修正をする。そして、新しい戦略に応じて、組織体制やメンバーの役割もスピーディに変化させる。戦略ドリブンな機敏性が、Chatworkの最大の強みだと思いますし、その渦中にいることで多くのことを学べています。戦略の立案や修正の方法、効果的な仮説検証の手法とスピードなど、「変化を味方にする」スキルが、自分の中に蓄積されていますね。

試行錯誤を繰り返す中、ようやくいくつかの勝ち筋が見えてきました。その一つが「Chatwork アシスタント」という「BPaaS(Business Process as a Service)」事業の新規サービスです。ITツールの提供に留まらず、業務プロセスそのものを提供して中小企業のDXを推進します。まさに「Chatwork アシスタント」は、ミッションやビジョンの実現のための有力な勝ち筋になりうると同時に、日本の産業構造の大きな課題を抱える中小企業のリアルを本当に変えられると感じています。

中小企業のバックオフィスとファイナンスの課題を、ビジネスチャットを軸に解決する

――そして、2023年1月より、マネージャーに就任しました。どのような組織を担当していますか?

「DXソリューション推進部」を担当しています。ビジネスチャット以外の新規サービスのグロースを担う組織です。前述した「Chatwork アシスタント」のような自社の新規事業やM&Aによってグループにジョインしたサービス、そして提携先の商材など、あらゆるサービスを扱っています。

セールス、マーケティング、メディア運営の3つのチームに分かれています。セールス・マーケティングチームでは、お客様の課題の発掘から適したサービスを提案するプロセスを担っています。バックオフィス、営業、マーケティングなどの顧客課題をヒアリングして本質的に改善していくべき道筋を立て、最適なソリューションを提案していく、言わば「DXコンサルティングサービス」を提供している組織です。メディア運営のチームでは、まだまだアプローチしきれていない中小企業やDX課題を抱えているビジネスパーソンをメインのターゲットに、様々なビジネス情報を提供しています。グループとして新たに強固な顧客基盤を作ると同時に、コンテンツを活用して顧客のニーズを捉え、データドリブンなマーケティング・セールス活動を実現する戦略を掲げています。

――「Chatwork」以外のあらゆるサービスを扱っていますが、注力しているものはありますか?

特に力を入れていているのが、バックオフィス領域のソリューションです。「Chatwork アシスタント」とも連携しながら、お客様のバックオフィスに関する課題を、あらゆるサービスで解決する。それが現在の注力ポイントです。また、バックオフィスの領域から、ファイナンスの領域へと課題解決のフィールドが広がるようなケースもあります。助成金支給の診断や、退職金制度の構築について、相談を受けることも多いです。私たちが提供したノウハウを元に新たな取り組みが始まり、お客様から多くの感謝の声をいただいています。

これらのサービスをお客様に提供する中で、中小企業のDXの課題が見えてきました。経営課題の解決のために、利用できる制度やITツールは沢山あるのですが、その存在を知らないケースが多い。まずは情報に触れていただくだけでも、大きな価値があると実感しています。「Chatwork」はコミュニケーションのプラットフォームとして、あらゆる有益な情報を提供できる。そこに私たちの新たな勝ち筋が生まれると確信しています。

中小企業のDXの実現のためには、「領域 × 深さ」の事業運営が必須になる

――今後は、どのような事業展開を考えていますか?

「Chatwork アシスタント」の提供を通じて、お客様の現場のリアルな実態に触れることも多くなってきました。サービス提供を通じて得られるフィードバックと膨大な顧客のデータ、そして「Chatwork」を活用したコミュニケーションの実態やオペレーションを統合的に捉えることで、本質的な中小企業の課題が浮き彫りになる。顧客満足度や売上の向上、従業員のパフォーマンス向上や離職防止など、事業の根幹にある様々な課題に対して、私たちがアプローチできる機会が増えています。また、ここで得られた知見が新しい事業創造のキッカケになり、非連続的に有益な事業を生み出し続けていくサイクルを構築していく。このような事業開発体制が実現できれば、「Chatwork」のプラットフォーム価値は飛躍的に向上していくと考えています。加えて、「Chatwork」はSaaSの中でも、あらゆる業種・職種のお客様が毎日使う、唯一のSaaSという独特なポジションを築いています。この顧客とのタッチポイントをいかに上手く活用するかが、今後の事業グロースにおいても重要な鍵になるのは間違いありません。

ただし、何にでも手をつければいい、というわけではありません。多くの中小企業のDXを実現するためには、「領域 × 深さ」での事業運営が必須になると考えています。営業、経理、財務、マーケティングといった「領域」と、ソリューションの情報提供に留めるのか、導入支援まで提供するのか、顧客の現場に入って業務プロセスを変えるのか、という「深さ」。この掛け算の数だけDX課題に対するアプローチの選択肢があると考えています。全体の施策のバランスを整え、「サービスを利用していただけるお客様の数を増やす」と同時に「お客様ごとに提供する価値を最大化させる」ことでChatworkが生み出せるインパクトを最大化させる。その戦略を立案して実行していくのが、私の仕事だと捉えています。

そもそも、中小企業のDXは、ビジネスとしての難易度が高いんです。現場が抱えている問題は様々で、ITツールを一様に提供するだけではその解決は難しい。それぞれにカスタマイズしたソリューションを提供するとコストが跳ね上がる。ビジネスエコノミクスが成立しづらく、利益を上げ続けるのが難しいため、自ずと中小企業に対して本質的にコミットした価値提供がしづらくなると私自身も感じています。

その矛盾を解決できる唯一の会社が、Chatworkだと本気で思っています。ビジネスチャットがお客様の日々の業務オペレーションに深く入り込んでいる。そのデータやインターフェースを活用しながら、お客様の課題解決に有用なITツールを提供するだけではなく、現場に入って変革を主導できる体制も抱えている。このような業態の会社は他には見当たりません。誰もが到達したことのない山の頂に向けて、日々挑戦を続けられることが、Chatworkで働く最大のメリットだと感じています。

「経営者」「事業家」としてのスキルは格段に向上した

――最後に、今後のキャリアの展望を教えてください。

起業した会社を売却してから、約2年間をChatworkで過ごしました。自分自身は大きく成長したと感じていますが、その理由は「環境が良かった」の一言に尽きると思います。変化が激しいフェーズで入社して、数々のチャレンジができましたし、戦略ドリブンの思想も身についた。自分で会社を経営していたときよりも、「経営者」「事業家」としてのスキルは格段に向上した実感があります。また、ミッションやビジョンが組織に浸透している会社で働くのは、こんなにもワクワクするものなのか、と感じました。経営者から従業員の立場になって、学べたことも多いですね。

この先のキャリアについては、具体的には考えていません。変化が激しくて社会的にも意義のある事業には、これからも携わっていきたいですね。また、再び起業することも無いとは言えません。自分の資本で会社を経営する憧れは、正直に言えば、まだ残っています。自分なりに世に問うべきビジョンやミッションを見つけることができたら、チャレンジするかもしれません。

ただ、これから5年くらいは、Chatworkで働くのが最も面白いのは間違いないです。非連続な成長の中で事業・組織が一気にグロースする瞬間においては、想像できないような機会が生まれる可能性も充分にある。社会に貢献できる領域も深さも広がり、自分の成長にもつながる実感が明確にあるので、当面は今の仕事に全力で取り組みたいと思っています。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)