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DeNA、カプコンでゲーム開発を手掛け、Chatworkでプロダクトマネージャーに。エンタメとBtoBの違いと共通点とは?

DeNA、カプコン、スタートアップ企業と、ゲーム開発者としてのキャリアを歩んできた本多。プログラミング未経験からエンジニアとなり、ディレクターやプロデューサーも務めてきました。「ユーザーの課題解決に向き合いたい」と、2023年1月にChatworkにジョイン。なぜ、ゲーム領域からBtoBに転じたのか?Chatworkではどのようにプロダクト開発に携わっているのか?詳しく聞きました。

■プロフィール

本多 太一
インキュベーション本部 プロダクト部

新潟県出身。早稲田大学理工学部を卒業後、2010年4月にDeNAにエンジニアとして新卒入社。プログラミングは未経験だったが、半年間の研修を経てソーシャルゲームの開発に携わる。2012年にカプコンに転職。自社IPを活用したソーシャルゲームの開発に従事した。2015年、当時の上司とゲーム開発会社を立ち上げ、1本目のタイトルが1000万DLを達成。2021年にRadiotalkに転職。プロダクトマネージャーを務めた。2023年1月にChatworkにプロダクトマネージャーとしてジョイン。ストレージサービスなど、新規事業のプロダクト開発に携わっている。

DeNAでエンジニアとしてキャリアをスタート。「当たり前の基準」を身につけた

――新卒でDeNAに入社した理由を教えてください。

大学では理工学部の生物系学科に所属していました。就職活動では、洗練されているイメージを持っていたので、外資系コンサルティングファームを中心に受けていました。大手から内定をいただいていたのですが、DeNAの創業者の南場智子さんが、私の出身高校の先輩だったこともあり、興味を持って受けてみました。

当時はIT業界に全く興味が無く、WindowsとMacの区別もつかないくらいで、DeNAという会社も知りませんでした。ソーシャルゲームの流行前のタイミングだったので、現在のような知名度は無かったからです。現場の社員とお会いして、勢いや熱のようなものを感じて、入社したのです。

――DeNAに在籍したのは、2010年4月からの約2年間でしたが、どのようなタイミングでしたか?

ガラケー向けのソーシャルゲーム事業が急激に伸びているタイミングです。それに合わせて、エンジニアを増員している時期でした。新卒社員を半年掛けて一人前に育てていましたね。プログラミング未経験の私が、サーバーサイドエンジニアとしてキャリアを歩むことができたので、入社時の研修には感謝しています。

研修を修了した後に、Mobage(当時は「モバゲータウン」)のゲーム開発を担当しました。当時は、ソーシャルゲームが爆発的に伸びていた時期です。この機を逃すな!と、新規タイトルを3ヶ月前後でリリースしたこともあります。かなりハードな現場でしたが、学んだことも多かった。DeNAの開発現場は「当たり前の基準」がとにかく高いのです。技術力を高めること、サービスのクオリティを維持することへのコミット力がすごかった。結果を出すために、ストイックにコミットするスタンスが培われ、その後のキャリアの柱になりました。

カプコンを経て、3名で新会社を立ち上げ。会社とゲームを起動に乗せるため、あらゆる役割を担った

――DeNAからカプコンに転職します。このときの背景を教えてください。

コンシューマーゲーム(ゲーム専用機で遊ぶゲーム)を開発する大手企業で、働きたかったからです。面白いゲームをつくることに集中してみたいと、カプコンに転職しました。「バイオハザード」や「モンスターハンター」など、既存IPを活用したソーシャルゲームを開発する中で、エンジニアからディレクターへと徐々にキャリアチェンジしていきました。そして、当時の上司が独立する際に誘われて、その立ち上げを手伝うことになったのです。

――そして、カプコンの元上司と共に新会社「アングー」の立ち上げに参画したのが、2015年です。

当時の年齢は28歳で、新しいことに挑戦したかったのです。既存のソーシャルゲーム会社に転職するよりも、ゼロから立ち上げた方が刺激的だと思って参画しました。誘ってくれた開発部長と、ベテランのゲームクリエイターの方と私の3人で立ち上げました。後に『モンスターハンターNow』の開発にも携わった会社です。

1本目のタイトルをリリースするまでに、必要なことは何でもやりました。社員を採用したり、外部との協業の接点を担ったり。ゲームの立ち上げと会社の立ち上げを同時に進めたので、多くの経験を積むことができました。開発現場でのメインの業務はサーバーサイド開発です。1000万ダウンロードを達成したのですが、DeNAで培ったノウハウや「当たり前の基準」を元に開発できたので、サーバー要因のトラブルは起きませんでした。

そして、1本目のタイトルに携わった後は、複数のカジュアルゲームの新規立ち上げとプロダクトマネジメントを担当しました。開発スタッフは、元カプコンのクリエイターが多数を占めています。クリエイターにポテンシャルを発揮してもらうために、私は全体をマネジメントしたり、事業としての収益を上げることに注力しました。ゲームクリエイターの資質が活きるような仕事を獲得して、職場環境を整えるポジションに、いつしか収まっていたのです。ゲーム開発だけではなく、事業開発や営業、人事・総務など、必要な業務は何でもやりました。ひとつの役割にこだわりすぎずに、柔軟に対応できるのが自分の持ち味ではないか。そう気づいたのも、この会社での6年間があったからこそでした。

ゲーム開発者から、プロダクトマネージャーにキャリアチェンジ

――その後2021年1月に、音声配信プラットフォームを運営するRadiotalkに転職します。

立ち上げ業務を一通りやりきって、次の環境を探していました。ずっと前からポッドキャストを愛好していて、音声配信のプロダクトに関わりたいとも思っていました。以前から知り合いだったRadiotalkの代表の井上さんが、SNSで「プロダクトマネージャーを募集中!」とポストしているのを見て、すぐさま応募したのです。入社後はプロダクトマネージャーとして、サービス開発とマーケティング業務に携わりました。

前職までとは、仕事の進め方が全く異なるので、最初は驚きましたね。ゲーム開発においては、ディレクターやプロデューサーの権限が大きく、個人の感覚的な指示をベースに形にしていくケースが多い。一方で、Radiotalkでは、メンバー全員で話し合って、数字やロジックをベースに企画を決めていました。私がメンバーに依頼するだけでは開発は進まず、費用対効果を合議で合理的に判断した上で、プロジェクトが進んでいく。この開発スタイルに慣れるには時間が掛かりましたが、以降のキャリアにつながっています。Chatworkでも、ロジックを判断基準に合議で決めていく。一人ひとりがアイデアを自由に出して、フラットに議論できる環境だと思います。

前職で思い出に残っている仕事は、イベントを戦略的に実施して売上を10倍に伸ばせたこと。クリスマスや正月にイベントを開催したり、月の初旬にキャンペーンを行ったり。ソーシャルゲームのノウハウをそのまま活かすことで、ユーザー数と売上が急速に拡大し、事業に貢献できました。ゲーム開発で培ったノウハウが、プロダクトのグロースにも活かせることに気づいたのです。

プロダクトマネージャーのフィールドが拡大していくChatworkを、転職先に選んだ

――そして、2023年1月にChatworkにジョインしました。このときの動機を教えてください。

Radiotalkの事業を軌道に乗せることができて、ふと考えました。BtoBの領域で顧客の課題をダイレクトに解決することはできないのか、と。これまではBtoCのエンタメ領域のみで経験を積んできたので、BtoBの領域を経験したかったのです。エンタメのサービスを開発する中で感じていたのが、「ユーザーの課題」が見えないこと。エンタメは、優秀なクリエイターが感覚的に良いものを作って、世間が受け入れればヒットが生まれるケースも多い。自分のようなプロダクトマネージャーが、より明確に事業に貢献している実感を得ることができるのは、BtoBの領域だと感じて転職を考えたのです。

Chatworkとの接点は、スカウトメールでした。最初はそこまで志望度が高い会社ではありませんでしたが、現在は同じ部署で働いている向田さんと面談することで、イメージががらりと変わりました。ビジネスチャットを軸にして、数々の新規事業を立ち上げて、M&Aも含めた拡大戦略をとっている。新しいサービスの立ち上げやグロースに、プロダクトマネージャーとして関わることができる。フィールドが拡がっていくイメージを持つことができたので、入社を決めました。

中小企業向けのサービス開発は、難易度が高いし面白い

――入社して、1年弱が経ちましたが、どのような仕事をしてきましたか?

メインで担当しているのは、ストレージ事業のプロダクトマネジメントです。M&Aを経て合弁会社として設立された、Chatworkストレージテクノロジーズが提供する、クラウドストレージサービスを担当しています。ビジネスチャットを軸にしながら、大容量のファイルをやり取りいただくことで、中小企業の業務を効率化するプロダクトです。

難易度が高く、解決のしがいがある課題に向き合っています。Chatworkのメイン顧客である中小企業の現場では、充実したIT環境でストレージを使えないケースがほとんど。スペックの高いマシンが使えなかったり、一人ひとりの従業員に対して社用のメールアドレスが付与されていないこともあります。このような環境下で、誰もが使えてストレスの無いサービスを提供するのは並大抵の努力ではできません。日々その難易度の高さとやりがいを感じながら、サービスの進化に取り組んでいます。

現時点では、ストレージサービスの連携先はビジネスチャットがメインですが、今後は様々なサービスと接続されます。Chatworkは「ビジネス版スーパーアプリ」の実現に向けて、様々な取り組みを進めている最中です。中小企業のあらゆる業務をサポートすることを目指しており、すでに人事労務支援サービスなどを提供しています。続々と立ち上がるサービス間でデータの受け渡しを行うためには、使い勝手の良いストレージが不可欠。安定稼働はもちろんのこと、中小企業の皆様が心地良く、本業を邪魔しない形で使えるサービスを目指しています。プロダクトの仕様を考えるだけでなく、開発体制を構築したり、開発における規定やルールを固めるのも私の仕事です。

社内の働き方を進化させるツールも、自ら手を挙げて開発中

――その他に担当している仕事はありますか?

Chatworkは「BPaaS(Business Process as a Service:ソフトウェアを提供するのではなく、業務プロセスそのものを提供するサービス)」の仕組みを使った新サービス「Chatwork アシスタント」を2023年6月に正式リリースしたのですが、その運用業務を効率化するツールを開発しています。お客様からの問い合わせ内容を、オペレーションスタッフが管理するためのツールです。事業は急拡大のフェーズに入っており、社内の働き方も併せて進化していく必要があります。お客様からの依頼にスムーズに対応し、社内の業務も効率化する。その双方を支援するプロダクトを開発しているのです。

ストレージサービスをメインで担当する中で、「BPaaSにも関わりたい」と手を挙げたらアサインが叶いました。オペレーションスタッフに既存のワークフローやそこで困っていることを綿密にヒアリングして、プロダクトの仕様を考えて形にしています。

エンタメとBtoBサービス。プロダクトマネージャーに求められるものの違いは?

――エンタメ関連の仕事と、Chatworkでの仕事の違いは感じていますか?

違いは大きく2つあると思います。1つ目は、サービス自体が主役であるべきかどうか、という点です。BtoBのサービスは決して主役ではありません。エンタメはそのサービス自体を楽しむものです。ユーザーはそのゲーム自体を楽しみ没入するので、あくまでサービスが主役です。一方で、Chatworkが提供しているBtoBサービスは、ユーザーにとっては主役にはなりません。例えば、料理人は料理を作ることが仕事であり、介護職の方はケアをすることがメインの仕事です。私たちが提供しているストレージサービスや「Chatwork アシスタント」は、あくまで本業でないバックフォイスなどの業務を楽にするツールですので、本業の邪魔をしてはいけません。「使いづらい」「起動するのが面倒くさい」と感じさせてしまうとすぐに使われなくなります。使っていることを意識させないサービスを私たちは目指すべきです。

2つ目は、エンタメは、課題解決ではなく、感動の提供に重きが置かれるため、時には0点になるリスクも取りつつ、120点、200点を目指す必要があります。一方でBtoBサービスは、顧客の課題解決が目的であり、必ずしっかりと100点を取ることが求められるのです。多様な課題を解決するために、全て安定して100点を取り続ける別の難しさがあります。中長期的には、エンタメ業界で培った200点を目指すノウハウを、Chatworkでも活かすことで、私らしいプロダクト開発ができると感じています。個人的な目標として、そのようなプロダクトマネージャーになりたいですね。

次々と生まれる多様な課題に、常にアプローチできる環境に身を置きたい

――最後に、今後のキャリアの展望について教えてください。

今後、Chatworkは多くの新サービスを展開します。ユーザーの様々な課題解決に従事できるのはとても楽しみです。ビジネスチャットを軸にしながら、BPaaSがあり、ストレージサービスも自社で展開している。まだ400名規模の会社で(2023年6月末日時点)、ここまで多様な事業を通じて、様々な中小企業の課題を解決できる。このような環境は他には無いですし、今後も飽きることなく、この仕事を続けていけると考えています。

プロダクトマネージャーという職種には、特にこだわりはありません。課題設定に必要な情報が集まり、解決のためのリソースにアプローチできる立場であれば、他のポジションでも構いません。必要だったら、またエンジニアに戻っても良いですし、採用業務をメインで遂行するのも歓迎です。とにかく目の前の課題や難題を当事者として解き明かすのが楽しいのです。そのような仕事をずっと続けていると思いますが、エンタメ領域の知見を生かして、事業を大きくグロースさせていきたいですね。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)