Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
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「1ドル500円になる日がくるかも?」不確実な未来に備える仕事を。日本製チャット×ピープルマネジメントの可能性に挑む。

プロダクトと同じプライオリティでチームをつくる。ピープルマネジメントの可能性に挑戦するため、2023年6月、Chatworkにジョインした原。現在は、開発四部のマネージャーを務めています。数々の新規サービスを立ち上げ、自身の会社も起業した経験は、どのように今に生きているのか?これまでのキャリアで培ってきたこと、プロダクトと人の考え方について、詳しく聞きました。

■プロフィール

原 孝治
プロダクト本部 プロダクト開発ユニット プロダクト開発四部 マネージャー

広告制作会社、印刷会社システム部に勤務の後、産業技術大学院大学を修了。株式会社識学 識学開発部開発責任者、株式会社GA technologies Project Manager、株式会社ランドネット 経営企画室副部長、株式会社FOLIO 証券基盤部長を経て、2023年6月にChatwork株式会社に入社。開発組織のマネージャーとして、ピープルマネジメントに従事している。

社内SE、エンジニアとして、11年間勤務。開発とインフラと情シス、全てをこなすゼネラリストに

――どのような経緯でエンジニアを目指したのでしょうか?

初めてパソコンに触れたのは小学校に上がる前でした。大学生の頃にインターネットが一気に普及して、コンピューターが、一部のマニアが使うものから、誰でも当たり前に使うものに変わっていきました。Chatworkの最初のビジネスが創業したのもこの頃ですね。当初は別のキャリアを考えていましたが、ウェブに可能性を感じ、紆余曲折を経て、プログラミングの知識を活かそうとエンジニアのキャリアへと転向。印刷会社に入社しました。

その会社では、情報システム部で11年に渡って勤務しました。ネットワークの構築や社内、社外向けのサーバーのデプロイ、ファイアーウォールやセキュリティの設定など、インフラの管理から、画像を処理するプログラムをつくったり、入稿用のシステムやデータベースを構築したり、印刷に用いるアプリケーションを開発したり。今だとそれぞれ専門のエンジニアが担当すると思いますが、黎明期だったのと、人数が限られていたので、色々なことを経験できました。

2年間、仕事を辞めて大学院へ。起業も経験。

――とても幅広いスキルを身につけていますね。中堅企業の社内SEだからこそのキャリアだと思います。

今考えても、幅広い経験をさせてもらったと思っています。ただ、独学で学んだことも多く、社外に出ると通用しないと感じていたので、常に危機感を抱いていました。スキル的にも頭打ちになってきたので、一度、システム開発を体系的に学び直そうと、印刷会社を退職。産業技術大学院大学に入学したのです。

――大学院に通いながら、仕事は続けていたのですか?

いえ。大学院専業でした。学修に集中しようと思い、在学中の2年間は基本的に学生に専念しました。主にプロジェクトマネジメントやシステム開発の講義を受けながら、新規事業立ち上げについても学びました。そして、その知識を活かそうと、研究室のメンバーと一緒に会社を設立したのです。この経験は非常に大きな学びになりました。ただ、経営のノウハウが乏しく、色々な機会もいただけたのですが、出資を受ける覚悟は持てませんでした。残念ながらその会社はクローズしてしまったのですが、経営者の目線を持ちながら、サービス開発を行った経験はその後のキャリアでも大いに活きました。

――産業技術大学院大学を修了後、どのようなキャリアを歩んできましたか?

コンサルティング会社の識学、不動産テックのGA technologies、ランドネットに在籍して、新規サービスの開発やシステム開発組織のマネジメントを経験。そして、2020年7月にフィンテックのサービスを展開しているFOLIOにジョインして、部長職として開発マネジメントを担当しました。証券システムには堅牢性が求められるので、仕様を細部まで固めた上で、着実に形にする必要があります。ユーザーの財産を預かるシステムで不具合は許されないので、クオリティを担保しつつ期限を守るためには、開発チームが健全に機能していることが必須でした。

プロジェクトマネジメントにおけるピープルマネジメントの重要性

――FOLIOで特にこだわっていたことはありますか?

前職に限らずずっとそうですが、期日通りにリリースするということには特にこだわっていました。もちろん、単にリリースすれば良いということではなく、リリース後に不具合なく運用できる体制も含めてです。そこで意識していたのは、当たり前のことですが、必要なメンバーをアサインし、一人ひとりのメンバーにきっちりとパフォーマンスを発揮してもらうこと。そのために力を入れたことは、採用活動と情報伝達の場の整備です。

既存メンバーだけでリソースが足りなければ、採用活動を積極的に行いました。仕組みがなければ立ち上げつつ、一人ひとりの求職者に全力で向き合いました。大変なこともありましたが、入社してくれたメンバーが、想定以上のパフォーマンスを発揮してくれました。一人ひとりが強みを発揮して弱みを支え合うことで、想定以上のアウトプットが生まれたことは多かった。組織がスケールするということを何度も実感できました。

また、特にコミュニケーションの整備には力を入れ、スムーズに情報伝達できる最適な会議体を設計し、必要なことが抜けや漏れ無く伝わるようにしました。会議体設計の重要性を最初に認識したのは、以前の職場でオフショア組織を立ち上げた際です。情報の透明性というと大げさですが、ボードメンバーやマネジメントが「分かってくれているだろう」と思っていることも、しっかりメンバーに会議体の中で伝達することで、本来必要のない懸念や疑念が生じないよう意識しています。

FOLIOで部長として比較的大きい規模の開発マネジメントを担当したことは、キャリアの転機になりました。特にピープルマネジメントの重要性を学べたのが大きかった。マネージャーの人に対する考え方次第で、プロダクトのクオリティと開発スピードが大きく変わる。そして、メンバーの成長角度にも大きく影響します。

プロダクト開発のために、宅建や証券外務員一種の資格を取得

――少し話は変わりますが、原さんは在籍した会社の業務に合わせて、様々な資格を取得しています。

そうですね。不動産関連の会社に勤めているときに「宅建」と「不動産コンサルティング技能試験」を取りました。また、前職では「証券外務員一種」と「内部管理責任者」を取得したのですが、それぞれのビジネスロジックを理解して、プロダクト開発に活かしたかったからです。宅建を取得することで不動産取引の要点が分かりましたし、証券外務員一種を取ることで証券取引の仕組みが分かりました。不動産と金融、どちらの領域でもビジネスサイドとスムーズに連携できました。運用フェーズに入っても、資格取得を通じて学んだ知識は、役に立ちましたね。

ピープルマネジメントの可能性に挑戦するために、Chatworkへ

――そして、2023年6月にChatworkに入社します。そのときの経緯を教えてください。

一言で言えば、ピープルマネジメントの可能性にチャレンジしたかったからです。これまで、マネージャーや部長職として開発組織をマネジメントしていましたが、その職責はプロジェクトマネジメント、プロダクトマネジメントに加えてのピープルマネジメントでした。プロジェクトマネジメント、プロダクトマネジメントについてはそれぞれ専門の職種があるくらいですが、開発組織を長期間にわたって運営していくためには、ピープルマネジメントが非常に重要な役割だと感じていました。次のキャリアを考えていた中で、Chatworkの面接を受け、ピープルマネジメントという役割を大切に考えていることに共感しました。Chatworkには、当時「ピープルマネジメント部」が創設されていたので、大きな魅力を感じましたね。

――改めて、ピープルマネジメントはなぜ重要なのでしょうか?

エンジニアは誰もが「発展途上」にあります。技術的にもコミュニケーションについても完璧な人はいません。日々悩みながら、頭の中にモヤモヤを感じながら、その中でコードを書いています。そのモヤモヤになる原因をできる限り取り除き、目の前の業務に集中してもらうことが大切だと思っています。情報共有の重要性や、組織の透明性など、モヤモヤを取り除くためにできることは沢山あり、マネージャーが働きかけることで、エンジニアのパフォーマンスは大きく変わります。結果として、事業の成長スピードも向上させることができる。

ビジネスチャットツール「Chatwork」は10年以上にわたって、改善を重ねてきました。これからずっと、プロダクトに向き合い続けていく中で、ピープルマネジメントの重要度が高いと思っています。個人とチームが持続的に成長し続ける環境をつくるのは、非常に興味深いテーマだと感じました。

Chatworkのエンジニアは、中長期の目線で開発に取り組んでいる

――入社後は、どのような仕事を担当しましたか?

入社後2ヶ月は横串でのピープルマネジメントに携わっていました。そして、2023年8月より、開発組織3チームのマネージャーを務めています。組織図上で所属しているメンバーは15名です(2023年8月時点)。プロジェクトマネジメントは専任の担当者に任せて、私はピープルマネジメントに専念しています。まだ着任してそれほど日数が経っていないので、現場の状況を把握して、前任が築き上げた良い部分を残しながら、どのようにアップデートするのかを計画している最中です。それぞれのチームで開発スタイルは異なりますが、経験豊富なエンジニアが新卒入社のメンバーに技術移転をしている風景もよく見かけますね。チーム全員で協力しながら、成長しながら、良いプロダクトにつなげていく。そのようなカルチャーが、Chatworkには醸成されているのを感じています。

――これまでに所属していた企業の開発チームとのカルチャーの違いは感じますか?

どの企業もモノづくりに真摯に取り組んでいますが、カルチャーの違いは感じます。プロダクトのフェーズの違いが影響していると思っています。「Chatwork」は既に多くのユーザーが活用しているサービスですから、より長期的な目線を持ちながら、目の前の仕事に取り組んでいる印象が強いです。とは言え、Chatworkの中でも新規事業は「今が勝負!」のようなカルチャーかもしれません。私はどちらも好きですね。

「普通」に使ってもらえるプロダクトをつくることが、社会課題の解決につながる

――プロダクトとしての「Chatwork」の価値は、どのように感じていますか?

「Chatwork」は、中小企業のコミュニケーションのインフラとも言えるプロダクトです。「日々の業務で使うのが当たり前」「サービスが止まると仕事ができない」といったお客様もコロナ禍を経て急激に増えました。ビジネスチャット「Chatwork」を継続していく社会的責任はすごく大きいと思っています。

インフラですから、お客様が「普通に」使えれば良いと思われがちなんですが、普通に使えるのは、絶え間なく改善しているからこそ。チャットに限らず、あらゆるサービスは常に改善されていて、お客様が満足するハードルは少しずつ上がるので、少しでも油断するとすぐに使い勝手が悪く感じられてしまう。

「普通に」使ってもらっているということは、ものすごく大きな価値があるんです。しかも、その使ってもらえている状態が、「中小企業の働き方」という社会的な課題解決と直結している。このような日本製のプロダクトは、まだまだ少ないと感じています。

リモートワークが一般的になって、「チャットはインフラです」という言葉の重みは明らかに変わりました。私たちはグローバルなウェブサービスを日常的に使っていますが、もし1ドル500円になったら、とか、もし海外の法律が大きく変わったらとか、潜在的なリスクが無くはないですよね。チャットサービスに日本製の「Chatwork」という選択肢があるというのは、顕在化していない価値があると思っています。開発エンジニアのアウトプットに、マネージャーとして貢献することは、社会的な責務を伴うと言っても、過言ではありません。他に類を見ないプロダクトを進化し続けることは、私自身、モチベーションにもなっています。そのような仕事の大きな意味を、チームの皆にも共有していきたいですね。

その1行のコードの先に何を見るのか

――Chatworkでは、どのようなスタイルでマネジメントをしていこうと思っていますか?

仕事としてやる以上、事業に貢献している実感を持ちながら働いていると、充実感がありますよね。自分がつくったものが世の中で使われるだけでなく、周りからも評価される。そのようなサイクルが回りだすと、開発組織がドライブしていく。自分が書く1行のコードの先に何を見るのか。その視点を持ってもらえると良いなと。メンバー全員が事業や社会への視点を持つことで、アウトプットが洗練されていく。そのプロセスを再現することを大切にしています。Chatworkはそのような環境をつくりやすいと思いますね。

過去に在籍していた会社では、サービス終了やチーム解体の辛さも味わったこともあります。私自身も起業した会社をクローズしましたし、他の会社では同僚が泣く泣くサービスを閉じる瞬間を間近で見てきました。そのような事態を避けるためにも、エンジニアが積極的に事業に貢献することは大切だと、心の底から思いますね。私自身が不動産や証券の資格を取得したのも、事業に貢献したかったからですし、今後も事業としての視点は常にアップデートしていくつもりです。

――最後に、今後の方針を教えてください。

エンジニアの採用をさらに強化します。既存プロダクトの使い勝手を良くするためにも、新しいサービスを開発するためにも、より多くのメンバーに「Chatwork」の開発に携わっていただき、一緒に社会に貢献したいと思っています。

人事との連携や協力も密に行っており、マネージャーと人事で集まって、一緒にスカウトを行う社内イベントも定期的に行なっています。採用活動は、一緒に働きたい人を自分で決める行為でもあるので、全ての社員にとって非常に重要だと思っています。人のことを真剣に考えるのは、エンジニアとしての成長にもつながりますし、自分が採用に関わった人と入社後も協働することによって、「仲間感」も出て楽しく仕事ができる。一人ひとりのエンジニアが、一緒に働くメンバーをより大切にする組織をつくっていきたいですね。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)