Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
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愛着の持てるプロダクトに携わりたい。データサイエンスでめざす、ユーザーも働く人もハッピーな世界。

任天堂やLINEといった名だたる企業でデータ分析を行い、ゲーム開発やマーケティング、HR企画に取り組んできた田中が、新卒入社1年目に配属されていたのはなんと経理部。そこからどのようなきっかけでデータサイエンスの世界に足を踏み入れたのか、なぜ新天地としてChatworkを選んだのか。これまでのキャリアとこれからについて、話を聞いてみました。

■プロフィール

田中 賢太
コミュニケーションプラットフォーム本部 プロダクトエクスペリエンスユニット プロダクトマネジメント部 プロダクトオペレーションチーム
兼 データソリューション推進室 データ推進部

大学卒業後、任天堂株式会社に経理として入社後、マーケティング部門に異動してデータ分析に従事。その後、LINE株式会社に転職し、採用や組織開発、人事制度企画といったHR業務をデータの面からサポートするとともに、HR Data Managementチームを立ち上げ、マネジメントとしてチームを牽引。2023年1月からデータアナリストとしてChatworkにジョインしている。

一冊の本との出会いが、キャリアのターニングポイントに

──このインタビューにあたって田中さんの経歴を簡単に拝見したのですが、キャリアのスタートが経理部だったことに驚きました。そこから一体どんなきっかけでデータサイエンスに関わることになったのか、ターニングポイントとなった出来事などあれば教えてください。

そうですね…キャリアのターニングポイントという観点でいうと、もう少し前からお話しした方が良いかもしれません。

話は高校時代に遡るのですが、高校3年生のある日、とあるIT企業の社長さんが学校で講演をしてくださいました。話の内容は「夢」について。夢を持って願い続ければ必ず叶う…というような内容だったと思うのですが、私は前の方の席で友達とふざけて喋っていてちょっと騒がしかったんでしょう。講演の途中で急に壇上に上げられてしまって、私の夢をみんなの前で発表することになってしまって。とっさに「お金持ちになりたい」と答えたのですが、「じゃあ、本当にお金持ちになるためにはどうしたら良いか一緒に考えよう」と言われてさらに考えることになりました。その場はそれで終わったのですが、学校からの帰り道、週刊少年漫画雑誌を買おうと思って立ち寄った本屋さんで、一冊の本と出会ったんです。GMOグループ創業者の熊谷さんが書かれた「一冊の手帳で夢は必ずかなう」という本(熊谷正寿, 一冊の手帳で夢は必ずかなう -なりたい自分になるシンプルな方法- ,かんき出版, 2004)です。講演の中で話されていたことと近いことが書かれているような気がして、漫画雑誌は買わずにこの本を買って帰りました。

夢に向かって計画を立てることや読書の重要性についてこの本には書かれていましたが、これがきっかけで私は本を読むようになりましたし、キャリアというものについても考えるようになったのです。

──なんとも運命的な1日で、まさに漫画みたいな展開ですね。その後、どのようにキャリアについて考えられたんでしょうか?

まずお金持ちになるためには、経済について勉強しないといけないと考え、大学では経済学部に進みました。実は高校のときは理系で数学が得意だったのですが、そうした自分の強みも生かせると考えました。本との出会いによって、自分の強みを生かして目標達成に向かう「戦略」を立てることの重要性に気が付いたんです。

最初にご質問いただいた、任天堂に経理として入社したことも、実はこの話につながっていまして。ゲームが好きだったこともあり、就活では任天堂を志望していたのですが、人気企業なのでライバルはたくさんいます。事務系だと、営業やマーケティングは人気職種で応募が殺到しそうですが、経理なら倍率もそれほど高くなく、また私は簿記も持っていたので強みを生かせるのではないかと考えて選考に進みました。

経理 × ITで、自分だけのキャリアを模索

──実に戦略的な就活ですね。実際に働いてみて、経理の仕事はどうでしたか?

その年に経理として新卒入社したのは私を含めて4名でしたが、他は全員英語ができて、税理士や公認会計士の資格を持っていました。私は英語もそれほどできませんでしたし、簿記3級の会計スキルでは到底勝負になりません。そこで、自分はITに強くなろうと考えたんです。

当時、iPhoneが出たばかりで私もアプリ開発に興味を持ち、趣味でもぐらたたきのゲームアプリをつくっていました。本当に簡単なゲームなのですが、1回ゲームをつくるとソフトウェアのことがある程度わかるようになるんです。経理の仕事はわりと現場の方と会話することも多くて、たとえば会社として機器を購入した際、会計上の科目整理をするのですが、そのために必要な現場ヒアリングがスムーズにできるので重宝されました。

──アプリ開発経験という強みが、経理としても生かされるのはおもしろいですね。

そうですね。アプリ開発は本当にただの趣味で、ゲームはもともと好きだったので、そういった自分の強みが業務で役に立つというのは嬉しかったですね。

また「ゲーム好き」を生かして担当業務以外でも、人事評価シートの要望欄にオンラインショップの改善提案などを書いていました。今振り返ると、恥ずかしいくらいの内容なのですが…ただ、こういったことが人事の目にとまったようで。田中は数字にも強いし、分析系の仕事が向いているのではないか、ということで入社から3年目でマーケティンググループへ異動になり、データマーケティングを担当することになりました。

データ分析によって人が動くおもしろさ

──ご自身の希望ではなく、人事異動なんですね!珍しいキャリアではないですか?

社内でも珍しかったと思います。若手も部署内で自分1人だけでしたし。タイミングが良かったというか、本当にラッキーだったと思います。

──いよいよここからデータアナリストとしてのキャリアが始まるわけですが、アプリ開発経験があったとはいえ、大きなキャリアチェンジではあるので最初はたいへんだったのではないですか?

部署の先輩方からはSQLなどのプログラミング言語について教えてもらいましたが、まぁ最初はまったくわからないので、平日は出社前に朝から、休日もずっとPCと参考書を持ってカフェにこもっていました。もちろん苦労はしましたが、つらくはなく、むしろ楽しかったですね。学生時代にこれも趣味の1つとして株の勉強をしていたとき、たとえば飲食店のサイトをクローリングしてデータを取ってきて予測モデルをつくるのですが、そういった経験とつながったり、それがまた生きたりして、楽しみながらデータ分析について学んでいきました。

──実際の業務はどうでしたか?

業務も本当に楽しかったですね。いくつか例を挙げると…任天堂の商品は店舗での棚作りが大事で、たとえば女性をターゲットにするなら、女性に人気のタイトルを分析して営業に企画を提案します。またハード(本体)と一緒に購入されやすいソフトと、ハードを購入した後に購入されるソフトがあります。じゃあこのソフトはハードとセットでどこまで値引きして、どんな売り場をつくって…といったことをさまざまなデータから分析・検討して提案していました。

実際に売り場に行って、商品を手に取ってくれているお客さんを見るとそれがまた嬉しくて。すごく気持ちが良いというか、この仕事のやりがいを実感できました。

新領域でのデータ活用、組織立ち上げを経験

──お話をうかがっていると、日々の仕事もキャリアとしてもとても充実していそうな気がしますが、なぜ転職を考えられたんでしょう?

仕事も楽しく、任天堂は本当に良い会社だったので、辞めたいと思ったことはありませんでした。ただその頃、スマホアプリ開発でDeNAと協業する機会があり、ビジネスのスピード感や横のつながりというか他社との交流にも魅力を感じていました。任天堂を離れることに迷いもありましたが、これまで培った経験を生かしてさらにキャリアの可能性を広げてみたいと考え、転職を決意しました。

──LINEではデータをHR施策に活用するなど、新たな領域を開拓していますね。

入社後しばらくはゲームの分析を担当していましたが、業務自体はわりとすぐに回せるようになり、もっとスキルの幅を広げたいと思うようになりました。副業も始めましたが、何かもっとチャレンジできることはないか…と悶々としていたとき、ちょうど社内でHRTechプロジェクトの立ち上げメンバーを募集する社内公募を見つけて応募しました。

もともとはゲームの知識と分析スキル両方生かせるということで転職先としてLINEを選んだということもあったのですが、分析スキルをより高めるためには新しい領域に踏み出さないとダメなんじゃないかと思ったんです。また人事は会社組織全体をつくる大事な機能でもあるので、学びも大きいと考えました。

ここでデータマネジメント組織の立ち上げと分析基盤の立ち上げを経験できたためキャリアの幅が大きく広がりました。さらにコロナ禍のタイミングで、テレワーク導入時の交通費支給方法の変更、出社率算出によるオフィス削減検討など全社レベルの意思決定に携わることができ、仕事のインパクトは飛躍的に拡大しました。

さらにLINEでのキャリア後半はマネジメントも経験でき、たくさんの学びを得られました。メンバーの採用も行い、チームの規模も大きくなってマネジメントとしてのやりがいはあったのですが、徐々に私がいなくても回るようになってきたことで、また次のキャリアを模索するようになったんです。

自分たちのプロダクトを愛している会社で働きたい

──次はどのようなキャリアを描き、なぜChatworkを選ばれたんでしょうか?

まずChatworkとの出会いについてお話しすると、副業として中小企業を支援していたのですが、その企業で使っていたビジネスチャットが「Chatwork」でした。LINEから次の転職先を考えていたときにふと思い出し、IR情報などを調べてみるとおもしろい会社だと感じて興味を持ちました。

──他にもキャリアの選択肢はいろいろあったかと思いますが、何が最終的な決め手になったんでしょう?

1つは、プロダクトに対する「愛」です。任天堂とLINEでゲーム事業に関わってみて、それぞれビジネスにおける強みやおもしろさは異なりましたが、私は自社製品に強烈な愛情を持って接している人が多い環境で、データを通してプロダクトに関わりたかったんだ…ということに気づきました。私自身、「Chatwork」というプロダクトに愛着がありましたし、Chatworkで働く人はみんな「Chatwork」を愛していると感じます。なにより、CEOの正喜さんが「Chatwork」の開発者です。トップがプロダクトへの強い愛を持っているということが、大きな決め手になりました。

もう1つは、働きやすさです。LINEもおそらく日本でトップレベルの働きやすい企業だと思いますが、Chatworkはさらにその上を行くかもしれません。たとえば、私は子どもが生まれたばかりでLINEでもテレワークの恩恵は存分に受けていたのですが、子どもが家にいるときなどどうしても自宅では仕事が進められないときもあります。そんなとき、出社かオンラインかの2択だと、片道1時間以上かけて通勤するのはちょっと…と感じることも。その点、Chatworkでは全国各地にサテライトオフィスを契約しているため、通勤時間がそれほどかかりません。一つひとつは小さなことなのですが、こういった働きやすさを向上させる仕組みがChatworkにはたくさんあるんです。

データ分析を施策につなげ、ユーザーも働く人もハッピーに

──あらためて、Chatworkでの現在のお仕事について教えてください。

主にPdM(プロダクトマネージャー)向けのデータ分析をして、分析結果を機能開発に生かすということをやっていますが、他にもカスタマーサクセスなどさまざまな部門と連携しています。また現在取り組んでいるのは、分析環境再構築(Snowflake導入)のための移行作業です。新たな分析環境でデータテーブルを揃えることで、事業における意思決定の精度とスピードを上げることを目的にしています。

──今後、Chatworkで挑戦してみたいことはありますか?

まず目先のことで言うと、これは分析環境再構築の延長線上になるんですが、分析基盤とユーザー側とを連携して、より適切なタイミングで適切な情報提供ができる状態を実現したいと思っています。ユーザビリティの向上は、利用率拡大や有料課金にもつながっていきますので。

もう少し中長期の話であれば、今よりもっとプロダクトに関わる方々がサクッとデータを見てインサイトを得られて、ユーザーのためにじっくり時間をさけるような世界を今後つくっていきたいですね。PdMでもカスタマーサクセスでも、個々人が分析スキルを高めること自体は良いことだと思うのですが、「Chatwork」のお客様であるユーザーと関わることにもっと時間を使ってほしいんです。

──なるほど。やっぱり田中さんは、売り場でゲームを手に取るお客さんの姿を見たときのように、データ分析を通じてユーザーをハッピーにしたいんですね。

たしかに、そうかもしれません。Chatworkにはさまざまな専門性を持った社員がいますが、それぞれ得意なことを生かして、私であればデータ分析ですが、それで働く人もユーザーもハッピーになれると良いなと思います。そんな世界をつくりたいですね。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)