Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
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元リクルートのクラウドチーム責任者と、元ミクシィ子会社COO。入社直後に新会社立ち上げを任されて何を思うのか。

M&Aを経て合弁企業として設立された、Chatworkストレージテクノロジーズ株式会社(以下CST社)。同社でクラウドストレージサービスの開発組織を立ち上げているのが、元リクルートの平本と元ミクシィの向田。入社直後から、ゼロイチの環境に置かれた2人は、何を感じて、どのように仕事を進めてきたのか。そして、ビジネスチャットとクラウドストレージサービスの融合を、どのように描いているのか。詳しく聞きました。

■プロフィール

平本 康裕
CTO室/Chatworkストレージテクノロジーズ株式会社 システム開発部 マネージャー

2012年、リクルートに新卒で入社。アプリ開発エンジニア、ビッグデータアーキテクト、クラウドエンジニア、マネージャーのキャリアを歴任。2022年4月、Chatworkにジョイン。M&AからPMIを担当。M&Aで連結子会社となったCST社において、開発組織の立ち上げやマネジメントも手掛けている。

向田 英雄
CTO室/プロダクト本部サーバーサイド開発部(PHP)・サーバーサイド開発部(Scala) マネージャー

1998年に大学を卒業。SIer勤務を経て、ヤフーにて自社サービス開発を手掛ける。その後、ミクシィおよびミクシィ子会社COO、デジタル広告系、人材系の会社で組織マネジメントや新規事業開発のVPoEを担当。2022年6月にChatworkにジョイン。CTO室に所属して、CST社をはじめとする様々な新規・周辺事業の組織開発・成長を支援している。

リクルートでクラウド専門組織を立ち上げ。「白地」を自分の手で埋めていく

――まず、開発マネージャーの平本さんに、これまでのキャリアを伺いたいです。

平本:新卒でリクルートに入社して、10年間勤めました。バックエンドやインフラを主に担当したのですが、入社5年目に自ら志願してインフラエンジニアとして「新クラウド基盤立ち上げ」に挑戦しました。その過程で新しい仕組みづくりに関わることが自分は好きなんだと感じました。会社や世の中の白地を捉え、どこからどのように解決していくかを考えている時が一番楽しいと感じます。

リクルートでは常に新しい経験ができており、自分の成長を実感しつつ満足度高く働けていました。より白地が大きくそこに挑戦していきたいという環境であれば、自分はより楽しく働ける。そう考えてChatworkに転職しました。

――どのように転職活動を進めたのですか?

平本:専門がクラウドだったので、外資系のクラウドベンダーからエンドユーザー向けのプロダクトを持っているスタートアップまで幅広く見ていました。面談や選考を進める過程で、自分の専門であるクラウドスキルを向上させるよりも、ビジネスへの関与度を高めることに挑戦したいと思い、開発だけでなく事業開発の経験ができそうなChatworkに惹かれたのです。そして、そのような機会をより多くいただけると感じたので、最終的に入社を決めました。思い返せば、新卒でリクルートを選んだ理由も「早い段階で予算獲得からその実現までを経験できる」という点でした。このあたりの志向は、学生の頃から変わっていないのかもしれません。

新規事業が続々と立ち上がるChatworkで、「あるべき開発組織」を追求したい

――Chatworkでは、「開発以外も含めて経験できそう」と感じた理由は、何でしたか?

平本:ビジネスチャットという柱の事業がある中、新規事業を次々と立ち上げるタイミングで、色々な打ち手を試せそうだと感じました。自前で事業をローンチするだけではなく、M&Aなどの手法も駆使しているのも魅力的でした。様々な事業立ち上げのシーンで、開発としてどのような役割を果たすべきなのか。それを自ら考えて実行できるのはやりがいが大きいと感じました。

一方で、不安もありました。Chatworkに内定をいただいた際に、CTOの春日さんから「開発だけではなくプロダクトマネジメントも責任範囲としてお願いしたい」と言われたのです。リクルート在籍時に、プロダクトやビジネスサイドの業務を経験したのですが、一度も上手く回らなかった。春日さんに「双方を兼務するのは難しいです。プロダクトマネジメントのエキスパートをつけてくれるならできます」と要望したら、会社立ち上げ経験のあるベテランの方を、業務委託として契約してもらいました。入社後は何とかキャッチアップしながら今に至ります(笑)。

上場直後のミクシィに入社し、現場よりもマネジメントに向いていると気づいた

――では、向田さんに伺います。これまでのキャリアを教えてください。

向田:私はSIerからキャリアが始まりました。約7年半にわたって、お客様先に常駐してシステム開発を行っていたのですが、自社でWebサービスを開発したいとヤフーに転職。その後、上場直後のミクシィにジョインして、SNSの開発組織でプレイングマネージャーを担当しました。当時は、様々なサービス開発が同時並行で進んでおり、企画サイドと開発サイドの意見相違やコンセプトについてディスカッションする機会が多く発生していました。時には、自ら調整役を買って意見交換の場を作ったり、メンバーから相談され間を取り持ったりしていました。すると、少しずつ組織が上手く回り始めていったのです。そのことに気づいてからは、自分は開発現場だけでなく、マネジメント領域・事業領域を意識してキャリアをシフトさせていきました。自分が携わることで事業や企画側のメンバーと開発側のメンバーがスムーズに連携し、サービスやプロダクト開発ができるのではないかと思ったからです。

その後は、ミクシィの子会社で事業責任者やCOOを務めたり、人材系企業で新規事業チームの立ち上げなどを担いました。ただし、上手くいかなかったことも多かったですね。ミクシィの子会社では、一定の成長はしていたものの、個人的に掲げていた3カ年の目標を達成できずに、自らの意志でCOOを退任しました。また、人材系企業では、プロダクトの仮説・検証や市場投入はできたものの、大きな成果に結びつけることができませんでした。そして新型コロナウイルスが感染拡大していった影響もあり、結果を出す前に投入するリソースが削減されていき、事業推進がスタックしてしまいました。VPoEという役割で、プロダクト開発の組織をスケールしてきたタイミングでしたので苦しい決断でした。これらの失敗経験を踏まえて、私のようなキャリアで事業のグロースに貢献できる会社を改めて探していたところで、Chatworkに出会ったのです。

――なぜ、Chatworkにジョインしたのですか?

向田:平本さんと同じように、会社や事業のフェーズを魅力に感じたからです。強い事業を起点に、様々な新しいチャレンジを推進できるタイミングで、数々の新規事業に携わった自分の経験を活かしたいなと。

CTO室にジョインするにあたり、CTOの春日さんに「入社後、3カ月、6カ月、1年で、どのようなプロジェクトにアサインされる予定ですか?具体的な期待は何ですか?」と聞いたのです。「正直、あまり先のことは決まっていません。これからM&Aも積極的に進めていくので、私自身も予想がつかないんですよ。ただ泥臭いことも多いのは確かで、そこに一緒に向き合って欲しい」と言っていただいて、逆にワクワクしたのを覚えています。

4,000社が使うクラウドストレージサービスと、Chatworkのシナジーを生み出す

――お2人は、CST社にてクラウドストレージサービス「セキュアSAMBA」の開発マネジメントを手掛けています。まずは、プロダクトの特徴を教えてください。

平本:中小企業をメインターゲットにした、オンラインのストレージサービスです。すでに4,000社の企業に使っていただいております。スターティアレイズ社のサービスをM&A・合弁会社化し、協業しています。それがChatworkストレージテクノロジーズ社です。現在はPMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)のフェーズです。自前でプロダクトを立ち上げるのではなく、ある程度のベースができあがっている他社のプロダクトを、両社のシナジーを活かしつつグロースさせるのは貴重な体験だと感じています。

向田:正直、まだまだ白地の大きなプロダクトだと思っていて、Chatworkグループに入りシナジーを生み出せることも含めて、強化できる点は多くあります。そういう意味だと「1→10」ではなく「0→1」に限りなく近いフェーズです。ストレージサービスとしての機能強化に加えて、「Chatwork」との連携もこれからです。「Chatwork」自体が急成長していて、既に500万以上のユーザー*を抱えている中で、どのような機能を連携させて、どのような価値を提供するのか。そこには非常に大きな可能性を感じていますし、その具現化に向けてゼロから絵を描いて実行していくのは、かなり刺激的なチャレンジですね。

*2022年6月末時点(ユーザー数534万人)

M&A後の2社が混じり合う開発体制を、ゼロから考えて形にする

――M&A後の開発体制は、どのように整えたのでしょうか?

平本:まずは、人員体制と予算の計画を立てて、その承認を取ることから始めました。体制については、スターティアレイズ社のエンジニアチームをベースに、Chatworkのスタッフにどのようにジョインしてもらうのか。そして、どのような体制を中長期で確立するのかを、ゼロベースで考えました。両社のエンジニアが組織で混じり合う際に、スターティアレイズ側のエンジニアたちの信頼をどのように獲得して、どのようなカルチャーにするのか、熟考しましたね。また、開発案件の優先度も整理して、全体としてのプロジェクトマネジメントがスムーズに進むようにもしました。まさに白地ばかりの仕事です。あるべき姿に向かってチャレンジを重ねるのは、初めてのことが多いですが、非常に充実しています。

向田:私は、主に組織を作るための人事的な側面を支援しています。最も力を入れているのは、採用活動です。Chatworkは会社としてビジネスチャットのイメージが強く、「出来上がった会社」と見られているのが少し悔しいですね。実際は社会インフラというビジネスチャットで安定したサービスを提供しながらも、日々改善を重ねて急成長している会社だということ、スーパーアプリ構想に向けた様々な取り組みをしていることを、我々が伝えていかなければならない。特に新規領域においては、安定を求めて入社する方は合わないですし、自分の役割に閉じてしまう方には、あまり向かない環境だとも思っています。

サービス企画や会社の方向性に、エンジニアの意見が反映される

――プロダクト企画に対して、エンジニアが意見をする機会はありますか?

平本:もちろん企画にも意見は出しますが、より根っこにある戦略立案にも深く関わっています。どのターゲットを狙って、どのような機能を実装して、どのようにグロースさせるのか。それぞれの仮説を立案しては、ビジネスサイドの社員と意見を交わしています。最近では、ターゲットのペルソナ像について、熱いディスカッションが繰り広げられました。さらには施策の企画を一緒に立てて、実行と振り返りも行っていますね。まだまだ組織がコンパクトだから、色々なことに首を突っ込める。刺激的な毎日を過ごしています。

また、1on1や小さい集まりのディスカッションから、事業やプロダクト開発のきっかけが生まれることがあります。さらに検証や実装もスピーディに行われるのでフィードバックが速い。机上の空論に終わらないのも魅力だと思います。

向田:私も、恵まれた環境だと思いますね。前職の人材系の会社では、新規事業の部署はマイノリティな存在でした。しかし、Chatworkにおいては、CST社そのものが新規事業という側面があり、そこにコアな社員を採用し送り込んでいます。初めてのM&A案件でもあり、会社からの期待が大きく感じられますね。

社長との距離も近い。迷うことなく仕事を進められる

――今、少しお話に出ましたが、元エス・エム・エスの事業責任者の岡田亮一さんがChatworkにジョインし、8月よりCST社の代表取締役社長に就任しました。お2人とはどのようなやりとりをしているのでしょうか?

平本:非常に合理的で、フラットに議論ができていて働きやすいと感じます。また、過去の事業開発の経験で得られたエッセンスも分かりやすく教えてくれるので、仕事を一緒にしているだけでも勉強になるなと感じます。

向田:岡田さんは、フラットに物事を捉えていて、相手の役割も柔軟に設定できる人です。新規事業を開発する際には予期しないことが次々と起こるので、変化を余儀なくされる。岡田さんはその変化に柔軟に対応できる方なので、CST社の社長としてプロダクト開発やエンジニアと真摯に向き合ってくれます。迷ったり困ったことは隠さず相談できる安心感がありますね。

Chatworkでは、エンジニアの仕事が経営課題に直結している

――改めて、CST社での仕事も含めた、Chatworkでプロダクト開発を行う魅力を教えてください。

平本:エンジニアとしての成長機会は、大きく3つに分類できると思います。1つ目は、新規プロダクトを作りユーザーの反応を受けてサービスを改善していくこと。2つ目は、大規模な開発プロジェクトをマネジメントすること。そして、3つ目は高いサービスレベルの実現と高負荷に耐えられる強靱なシステムを作ること。Chatworkには、これら全ての成長機会があります。今のCST社は1つ目が面白いフェーズですが、ビジネスチャットとの融合が進んでいけばパフォーマンスとの戦いになるはずです。すると、3つ目の成長機会も得ることができて、ひいては2つ目のプロジェクトマネジメントスキルも身につくでしょう。

向田:私はCTO室に所属しながら、CST社以外の開発組織にも携わるようになりました。平本さんが言うように、様々なプロジェクトがChatworkにはあります。ただし、どの仕事においても、エンジニアの裁量は非常に大きいですね。ただ目の前の開発を行うのではなく、少し先の将来を見据えて今何を選択するのか、ゼロベースでより適した手法がないのか、常に模索しながら、実行に移しています。自らの意志で開発を進めたい人には向いている環境です。

平本:Chatworkは日本では稀少な会社だと思います。なぜなら、エンジニアの日々の仕事が経営課題に直結しているからです。グローバルなITサービス企業では、プロダクトをリリースすると全世界からアクセスされて高い負荷と時差的にサービスを停止しにくく、3つ目のタイプのエンジニアがかなり重要視されるのではないかと感じています。

Chatworkはその状況と似ていて常時大量のトラフィックが発生しています。それゆえ3つ目のタイプのエンジニアの技術力も高いと感じます。プロダクトを作るだけではなく、可用性やパフォーマンス問題を解決できるアーキテクトも多く在籍していて、彼らが楽しく働いて成長できる珍しいタイプの会社だと思います。

向田:経営との距離の近さは、Chatworkの代表取締役CEOの山本正喜さんが、エンジニア出身ということも影響していると思います。正喜さんは元CTOで、その”ものづくり”の思想は、現CTOの春日さんにもきっちりと受け継がれている。だからこそ、経営陣とエンジニアとの間では、無駄で面倒な手続きは一切必要なく、健全に意見を言い合える環境が継続できているのです。

より良いサービスを提供するためにSaaS企業の提携や統合が進む中で、ここで学んだスキルを活かす

――最後に、お2人の今後のキャリアの展望を教えてください。

平本:少なくともこれからの3年間は、今の仕事をしていると思いますね。当面の目標は、CST社を中小企業向けストレージ市場でのNo.1企業に成長させること。ファイルを作って他者と共有する作業は、どのようなツールを使っても手間が掛かります。メールやチャットで送る際には、わざわざ添付して送信して、受信者はダウンロードしなければならない。クラウド上でやり取りするにしても、社内外では使えるシステムが異なることもある。このような手間の掛かるやりとりをシームレスにできれば、ビジネスのスピードが速くなるし、気持ち良く仕事もできる。そのような世の中を作るのが、私のミッションです。

向田:これからも、新規事業を生み出す組織作りには関与していきたいです。CST社はPMIのフェーズにある珍しい会社ですので、苦労も多いですが、学べることも多い。変化が激しい組織ですから、自分自身の様々な引き出しを活かせることも、やりがいにつながっています。まだまだ小規模ですが、PMIの成功事例になるような組織にしていきたいですね。

平本:確かに、PMIのフェーズにある企業だからこそ、希少なスキルが身についている実感があります。エンジニア視点から、デューデリジェンス(投資対象となる企業を精査すること)で何を見ればいいのかが分かってきました。エンジニアの視点を活かせば、投資やM&Aの成功確率は向上すると感じています。今の日本には、SaaS企業がたくさんある状態ですので、今まで以上にM&Aが増えていくと思います。少し先の未来で、ここで学んでいることは活きるはずです。今のタイミングでCST社で働けているのは、本当に大きなチャンスだと捉えています。

 

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)