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アクセンチュアとベンチャーで学んだ全てを、魂と共にぶつける新規事業開発。

就職活動で壁にぶつかり、オーストラリアのビジネススクールに留学。帰国後にアクセンチュアに新卒入社した蛭田。6年間在籍して組織変革のプロジェクトをリードした後、データサイエンス系ベンチャー企業でのサービス企画職を経て、Chatworkへにジョインしました。担当しているのは、ITツールの提供にとどまらず、業務プロセスそのものを提供して中小企業のDXを推進する新規事業「BPaaS(Business Process as a Service)」のグロース。蛭田は「魂を込めてこの事業をグロースすることで、日本の中小企業の生産性を高めたい」と力強く言います。これまでのキャリアや、Chatworkでの新規事業開発の可能性について、詳しく聞きました。

■プロフィール

蛭田 栄太朗
インキュベーション本部 ビジネスユニット 
DXソリューション開発部 事業開発チーム

福島県いわき市出身。北里大学大学院在学中に、シドニーのビジネススクールに留学。2015年4月にアクセンチュアに新卒入社。大規模なシステム構築・運用プロジェクトや組織変革プロジェクトに携わる。2021年にデータサイエンス関連のベンチャー企業に転職。サービス企画やアライアンス開拓を手掛ける。2022年12月にChatworkにジョイン。中小企業のDXを推進する新規事業「BPaaS」事業を担当。運用チームをリードしている。

「落ちこぼれ」から一念発起して、北里大学へ。就活で挫折し、オーストラリアに留学

――どのような学生時代を過ごしましたか?

学生時代はずっと自分のことを「落ちこぼれ」だと思っていました。小学校時代は、国語の成績が学年で最下位でしたし、高校も進学校ではなく普通の学校に入学。目標を持たずに日々を漫然と過ごしていたのですが、大好きだった祖母に「大学に入った栄太朗が見てみたいの」としみじみと言われて、心機一転、受験勉強に打ち込みました。かろうじて数学の成績だけは悪くなかったので、私立大学の理系学部を目指すことに。祖母が病気がちで入院をしていたこともあり、なんらかの助けになれば、と北里大学に入学。ライフサイエンスにも活かせる有機合成化学を専攻した後、大学院は薬学系の研究科に進みました。

そして、修士1年で就職活動を始めたのですが、挫折を経験しました。グループディスカッションで他の大学の学生とやり取りしたのですが、全くかなわなかった。ずっと実験に打ち込んでいたので、コミュニケーションが得意ではなく、ビジネスに関する知識もない。ほとんど存在感を示すことができず、面接でも落ちまくりましたね。就活をこのまま続けてもダメだと痛感し、必要なスキルを身につけようと、一念発起してオーストラリアに留学したのです。

シドニーのビジネススクールやインターンシップで、様々な個性に触れたことが今につながっている

――なぜ、就活を突破するスキルを身につけるために、留学したのですか?

大学院では研究志向の人たちとばかり接していたので、なかなか面接やディスカッションのスキルが身につきませんでした。そこで、環境ごと変えたかったのです。活発な議論や自己主張をしなければいけない環境に身を置き、外国人と日々を過ごすことで、コミュニケーションスキルも身につくだろうと。学生時代も終わりに近づいているから、やりたいことを思い切りやってみたい、という想いもありました。

両親に渡航費と当面の生活費だけ出してもらって、ほとんど勢いだけでオーストラリアに渡りましたね。最低限の会話ができる英語力を習得して、シドニーのビジネススクールに入学したのです。現地での生活費はアルバイトで稼ぎました。

ビジネスについて学んだり、マーケティングの会社でインターンシップをさせてもらったりと、多くの機会に触れました。日本では出会わなかったタイプの仲間と日々を過ごし、ディスカッションを重ねる毎日が本当に楽しかったですね。様々な個性に触れることが、自分の生きがいにつながっていることにも気づきました。このときの体験が、今でも土台になっていますね。

アクセンチュア入社1年目に、大規模システムがダウン。その復旧作業から学んだこと

――留学から帰国して改めて就職活動を行い、2015年4月、アクセンチュアに入社しました。

留学こそしましたが、これまでの学生生活で挫折を経験していたので「自分は劣等生なんだ」とずっと感じていました。その感覚を払拭して自分に自信をつけるために、大手企業で認知度があり、報酬も高いアクセンチュアを選びました。内定者懇親会に参加していた先輩社員たちに、温かい方が多かったのも入社の理由です。皆さんと一緒に働けば、分からないことはフォローし合え、様々な知識を吸収して成長できる。そのようなカルチャーにも魅力を感じましたね。

さっそく入社1年目に転機となったプロジェクトを経験しました。ある大手流通業のクライアントに対して、EC関連の大規模システムの運用保守を提供していたのですが、そのシステムが3連休の初日にダウンしてしまった。数時間にわたってサイトが閲覧できない状態が続き、大きな損失につながったのです。クライアントの社長や部長から叱責を受けながら、必死の思いで復旧作業を行いました。毎日夜中まで作業を行い、何とか問題なく運用できるように。再発防止の対策まで含めて、1週間くらいは掛かりましたね。

データベース関連の不具合が原因だったのですが、以前担当していた開発会社が設定したもので、私たちはその内容を把握していなかった。そのため、復旧や対策立案にも時間が掛かり、クライアントに大きな迷惑を掛けてしまいました。事前にシステムの構成を把握しておくべきでしたし、その情報をプロジェクトチームに共有しておく必要がありました。行き当たりばったりにプロジェクトを進めると大きなトラブルにつながりますし、自分一人では何もできない。これらの教訓を大きな痛みと共に学べたのは良い経験だったと思っています。

アクセンチュア6年目。このまま同じ仕事を続けるのか、全く新しい環境に飛び込むのか

――その後、手掛けたプロジェクトの中で、印象に残っているものはありますか?

多くの海外エンジニアとの仕事は思い出に残っています。オフショア開発の現場で、中国、インド、フィリピンの方々とプロジェクトを共にしました。学生時代のオーストラリアへの留学と同じで、様々な個性に触れることができたのは楽しかったですね。プロジェクトの成功のために、国籍が異なる人たちが意見をぶつけ合う。その光景は刺激的ですし、プロジェクトが完遂したときの喜びは非常に大きかったです。

今のChatworkのプロジェクトも、同じような環境で仕事をしています。メンバーは日本人ですが、それぞれのキャリアや得意技が違う。個性の溢れる人たちと、同じ目標に向かって激論を交わすのはとても面白いですね。

――アクセンチュアには新卒から6年間勤めました。退職を決意した理由を教えてください。

当時、30歳を過ぎていたのですが、このまま続けて良いのか、ふと考えてしまったのです。一定の業績を残していたので、マネージャーやシニアマネージャーへのキャリアも見えてはいました。ただ、同じ環境で同じ仕事を続けるよりも、全く新しい環境に飛び込んで、非連続に自分を成長させたくなったのです。薬学系の大学院に通いながら、オーストラリアに渡ったときの感情に近いかも知れません。しかも、動くなら体力もある若いうちの方が良い。ほとんど直感のようなものでしたが、転職を決意したのです。

20名規模のデータサイエンス系企業へ。保健福祉領域の新サービスを協業先と開発

――2社目に勤めたのは、データサイエンス関連のベンチャー企業です。こちらを選んだのは、どのような背景がありますか?

自社サービスを運営している会社を希望していました。生のデータを扱いながら、業務とITを連携させることで、新たなサービスやソリューションを生み出したかったからです。入社当時は10数名規模の会社。大企業からベンチャーへの転職でしたが、不安はありませんでした。全く違った環境に飛び込んだ方が、多くのことを吸収できると思っていたので。

そこでは、データ分析ツールと教育コンテンツを提供していました。私自身は、サービスをグロースさせる企画業務と、協業先の開拓をメインで担当しました。販売代理店を探す仕事も進めましたが、協業先と一緒にサービスを開発したのが楽しかったです。一例を挙げると、児童虐待予防のためのサービスを作りました。保健所が収集しているデータを分析して、最適なフォロー体制を割り出すものです。当時はコロナ禍で、保健師さんのキャパシティが逼迫していたので、このサービスはとても喜んでいただけました。保健所のデータを管理するシステムに、分析ツールをアドオンした形で開発。協業先と価格や運用体制を決めたり、保健所や保健センター向けのプレゼンテーション資料も一緒に作りました。今でも、このサービスは稼働中です。

――ベンチャー企業には約2年間在籍しましたが、退職に至った理由を教えてください。

刺激と成長を求めて入社して、一通りの経験ができたからです。アクセンチュアでのITコンサルタントとして身につけたことと、ベンチャー企業での自社サービスの経験。これらを活かして、自分自身が事業のオーナーシップを持ちながら、サービスのグロースによりコミットできる環境を求めて、転職を決意したのです。

Chatworkでは、新規事業「BPaaS」をゼロから立ち上げ

――そして、2022年12月にChatworkにジョインしました。そのときの経緯を教えてください。

とにかく魂を込めて働ける環境を探しました。今回の転職は、自分の成長が目的ではありません。地に足をつけて本格的に事業をグロースさせるために、徹底的に伴走をできる会社を求めました。妥協をしたくなかったのです。担当するサービスにも、一緒に働く人にも。

数名の人材エージェントに、大手企業やメガベンチャーを紹介してもらっていたのですが、ある方から「蛭田さんには、Chatworkが向いていると思います」と提案をいただいたのが最初の接点でした。「新規事業も次々と立ち上げていますし、とても面白いと思いますよ。とりあえず、社員に会ってみませんか」と言われて、話を聞いてみると、求めていたキャリアのイメージにピッタリと合致したのです。

そこで初めて知ったのが、「BPaaS(Business Process as a Service)」という新規事業でした。中小企業の現場のDXを推進するために、ビジネスチャットをインターフェイスにして、顧客のあらゆる業務を巻き取り、業務プロセスそのものを改善・提供するサービスです。「これは面白い!伸びる可能性しかない!」とその場で感じました。特に中小企業というターゲットゾーンが魅力的でした。ITを活用した業務改善サービスは、中堅〜大手企業向けがほとんど。中小企業1社1社に対してカスタマイズされたサービスは聞いたことがありません。世の中に知られていない全く新しいサービスなので、提供手法や価格、プロジェクト体制など、全てにおいてチャレンジが必要になります。

自分自身で組織を作って、事業をグロースさせながら、きちんと利益を上げる。経営者として一つの会社を立ち上げるのと同じ経験ができそうだと感じました。これは面白いなと。

――「BPaaS」はゼロからの立ち上げになりますが、不安は感じませんでしたか?

不安は全く感じませんでした。なぜなら、アクセンチュアで身につけた業務改善・運用構築スキルがそのまま活かせますし、ベンチャー企業で学んだ事業開発ノウハウも活用できるからです。自分の全能力を解放して、キャリアの集大成として取り組めるので、とてもワクワクしましたね。

「大企業向け」と「中小企業向け」。それぞれの業務支援の違いはどこにあるのか

――昨年の12月に入社して、どのような仕事を担当してきましたか?

「BPaaS」をお客様の職場に提供するのがメインの仕事です。商談設定までは別のチームが行うのですが、商談からプロジェクトにジョインします。お客様の悩みや課題をヒアリングして、支援内容や活用するツールなどソリューションの内容をすり合わせ、体制を構築します。社内のリソースだけでは不十分な場合は、外部のパートナーに声を掛けることも。アクセンチュアでの経験を、より上流のフェーズから活かせている感覚です。

ただし、大企業のお客様とは異なることも多いです。まずはステークホルダーの数が違います。大企業は幅広いステークホルダーに対峙することが必要ですが、中小企業ではほとんど社長か役員に一本化されるので、合意形成は圧倒的にスムーズです。一方で、中小企業では業務の線引きが難しいケースもあります。現場の組織が機能ごとに分かれていないので、どこからどこまでを支援対象にするのか、明確にすることがより重要になりますね。

――ご自身で導入を進めたプロジェクト事例はありますか?

ある医療法人のお客様に対して、長期のご契約を結ぶこととプロジェクトを拡張することができました。まずは経理系の業務にサービスを導入することで、大幅な効率化を図りました。その次のステージとしては、人事領域へと支援を拡げています。人事労務システムや給与計算オペレーションをゼロから見直したり、社内のコミュニケーションを活発化させたり。お客様からは高い評価をいただいていて、「これからも何でも相談したいです」と頼られているのは嬉しいですね。大手のコンサルティングファームに頼むと、相談するだけで費用が掛かることもある。悩みや課題が明確でない段階から、会社の変革や業務改善に寄り添えるのは、大きなやりがいにつながっています。

オーストラリアのビジネススクールや、アクセンチュアの多国籍環境よりも、多くのことを吸収している

――どのような職場環境で働いていますか?

「BPaaS」に関わっているのは、個性的な人ばかり。刺激溢れる毎日を送っています。セールスチームのリーダーの小野寺さんは、新卒1年目からずっと事業開発を推進してきた方で、大手企業グループで子会社を立ち上げた実績もあります。自らを「BizDev中毒」と言うほど、「BPaaS」の開発にのめり込んでいます。上長の桐谷さんは、学生時代から事業立ち上げを経験して、成功も失敗も数多く味わっている方です。まだ20代ですが、底が知れない雰囲気を醸し出しています(笑)。さらにその上長の岡田さんは、言語化が非常に得意な方で、本質をズバズバ突いてくる。このような環境で働けるのは、面白いですよ。オーストラリアでのビジネススクールや、アクセンチュアでのオフショア開発よりも、多くのことを吸収しています。

「BPaaS」を担う「DXソリューション開発部」は、マーケティング担当・インサイドセールス担当と運用担当でチームが分かれてはいますが、一丸となって動いています。プロジェクトを手探りで進めることも多いので、メンバー全員でチャレンジしています。未知の課題に対して、全員で解決策を練り上げて、全員で実行するようなイメージです。日々、困難に向き合っていますが、とても刺激的な毎日を過ごしていますね。

「Chatwork」の導入社数は38万社超。「BPaaS」のマーケットはかなり大きい

――最後に、今後のキャリアの展望を聞かせてください。

私自身の今後のキャリアは、今はあまり考えていません。とにかく「BPaaS」事業の拡大に専念するだけですね。売上、顧客数、顧客の中でのアクティブユーザー数、LTV、自社の組織の規模など、全ての拡大を図っています。

「Chatwork」の導入社数は38万社を超えていて*、「BPaaS」のマーケットはかなり大きい。さらにM&Aや自社開発で、中小企業向けの様々なサービスを立ち上げていくので、私たちの活躍できる余地は無限にあるんですよ。ツールをただ提供するだけでは、現場で使いこなすことは難しいので、私たちの存在がキーになる。現場に入り込んで、従業員の皆さんとも何度もやり取りしながら、地に足をつけて「一歩先の働き方」を継続的に提供するのは、私たちにしかできませんから。

オペレーションチームの採用活動も積極的に行っています。早急に現在の3〜5倍の規模に拡大したいです。何らかの強みとなるスキルを持ちながら、様々な変化を受け入れられる柔軟性を持っている人と一緒に働きたいですね。さらに、外部のパートナーの発掘や契約締結も推進中です。自分がやれることは何でもやりたい。「BPaaS」チームの成長が、日本の中小企業の生産性向上に直結している。その想いを持って、事業の拡大にコミットしています。

*38.6万社以上(2022年12月末時点)

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)