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楽天、エス・エム・エスでの事業責任者を経て、Chatworkで描く次の一手とは?

実家は中小企業を経営し、高校時代から自身でもビジネスに触れてきた岡田。自らビジネスと密接に関わりながらも、大学卒業後は会社員としてキャリアをスタートしました。その後、楽天とエス・エム・エスで数々の新規事業の立ち上げを担当し、事業責任者として数百名のマネジメントも経験。Chatworkへは「幅広い事業開発を、手触り感のある規模感で進めたい」とジョインしました。様々な環境で事業開発や事業責任者を経験した岡田に、これまでのキャリアとChatworkで描く次の一手について聞きました。

■プロフィール

岡田 亮一
インキュベーション本部 本部長 
Chatworkストレージテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長

昭和リースでの勤務を経て楽天に入社し、ビジネスマッチング事業のセールスマネジメントやBtoB EC事業の立ち上げと事業マネジメントを行う。その後、エス・エム・エスに入社し、新規事業の開発に従事。2017年4月より介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の責任者として事業成長を牽引する。2022年5月、Chatworkに入社し、新規事業の開発及びマネジメントを務めている。

ともに事業主だった両親から、大きな影響を受けた

――ご自身のキャリアの原体験を教えてください。

これまでのキャリアに影響しているのは、両親がともに事業主だったことです。事業開発の仕事に携わっていることや、会社員として企業に勤めていることにも、影響を受けていると思います。父はハンコや名刺を製造販売している会社を経営していて、母は自宅でピアノ教室を営んでいました。幼い頃、父の職場には何度か遊びに行きました。そこで自宅とは違う、仕事の顔をしていたことは印象に残っています。

働くということを身近に感じただけでなく、会社の業績には、良いときもあればそうでないときもあることも実感しました。私の幼少期は、華やかなバブル経済の時代で、父の会社は絶好調でした。しかし、バブルがはじけた後は、苦労もしていましたね。その変化を目の前で実感したので、私自身は企業に勤め、堅実なキャリアを歩もうと考えたのです。

学生時代からお金を稼ぐことやビジネスに対する関心は高かったと思います。高校生時代からアルバイトもしましたし、物販で小遣いも稼いでいました。当時、ネットオークションが広がり始めたタイミングで、地元でバイクの不要なパーツを集めては、ネットで売りさばいていました。大学時代も、クラブを借り切ってイベントを開催したり、起業した友人を熱心に手伝ったり。あまりにもビジネスが楽しくて、学業よりも夢中になって取り組んだ結果、留年してしまったほどです(笑)。

茨城県の中小企業への営業職から、キャリアをスタート

――そして、2006年に昭和リースに新卒入社しました。リース会社を志望したのはなぜですか?

就職活動では金融業界を志望していました。仲の良い友人が金融業界で働いていたので、イメージがしやすかったことが理由です。都市銀行を受けたかったのですが、真面目に大学には通わず、単位もほとんど取っていなかったので、どこからも内定はもらえないと思い、諦めました(笑)。BtoBの方が合っていると思ったので、次に興味を持ったのがリース業界でした。大手リース会社を片っ端から受けたのですが、唯一、内定をもらえたのが昭和リースだったのです。

入社後は営業職として配属され、茨城県を担当することになりました。中小企業のお客様をクルマで訪問して、設備導入する際にリースを提案するのがメインの仕事です。この時代に、社会人のベースとなる仕事の進め方を身につけました。3年間の在籍でしたが、今の事業開発の仕事においても、このときの経験が糧になっています。素晴らしい上司や先輩にも恵まれ、社会人のスタートが昭和リースで良かったと思ってます。

若くして裁量を得たいと楽天へ転職。4ヶ月でサブリーダー、1年でリーダーに

――2009年に昭和リースを退職して、楽天に転職します。そのときの背景を教えてください。

成果に応じてポジションや裁量を得られる環境を求めていたからです。当時、昭和リースでは、課長になるまでには、早くても15〜16年の時間が掛かりました。そこで、成長著しく若手社員が活躍している楽天に転職したのです。

入社当初は、ビジネスマッチングサービス「楽天ビジネス」の営業に携わりました。今でいうクラウドソーシングのプラットフォームですね。楽天市場に出店している店舗様を中心に、ページ制作や商品撮影、メルマガ配信に関する業務など、多くの仕事が集まるプラットフォームで、そこに参加してニーズに応える事業者を新規開拓することが仕事でした。

当時は仕事中心の生活を送っていたので、寝る間も惜しんで働いていました。そこまで頑張ったのは、同年代に負けたくなかったから。1年浪人し、さらに留年もしたので、焦っていたところもあると思います。営業成績で負けるわけにはいかないと、常に数字や行動量にこだわって取り組んでいましたね。数々の泥臭い取組みが成果へとつながり、入社4ヶ月でサブリーダーを任され、1年後にリーダーに昇進しました。

新規事業チームにジョイン。営業・企画・マネジメントを任され、ハードシングスな毎日

――「楽天ビジネス」の営業の次は、どのような仕事に携わりましたか?

「楽天ビジネス」の事業責任者が、新たにBtoBのEC事業「楽天B2B」を立ち上げたので、そのチームにジョインしました。EC事業は5名でスタート。私自身に新規事業立ち上げの経験がなかったので、とても苦労しました。事業企画を担当していた先輩社員が、人事異動で抜けてしまったときは、私がその業務を引き継ぐことになり、かなり大変でしたね。サービスの規約を作ったり、業務オペレーションを構築したり、システムの要件定義を行ったり、未入金を回収したりと、毎日がバタバタでした。

また、新規事業を管掌する組織が変わったことも大きな変化でした。当時の組織は、バックグラウンドが外資系戦略コンサル出身の人が多かったです。そのような環境で働くことで、いかに自分が無知であったかを思い知ることになり、社会人大学院に進学してMBAを取得することにしました。2年間、働きながら大学院に通う生活でしたので、非常にハードな毎日でしたが、死に物狂いで色んなことを学んでは実践していきました。

何とか事業を回すことができたと思ったら、今度は責任者が退職することとなり、暫定的に私が事業全体をマネジメントすることになりました。ほどなく後任の責任者がジョインし、マネジメント業務を引き継いだのですが、自分で事業責任者として挑戦したいと強く思うように。結果、私自身も社外に活躍の舞台を求めることになりました。

エス・エム・エスでは、介護事業者向けのSaaSや新規事業を手掛けた

――そして、2014年にエス・エム・エスに転職します。どのような背景がありましたか?

エス・エム・エスでは、介護事業者向けのSaaS「カイポケ」をプラットフォーム化し、これから大きく伸ばそうという時期で、周辺事業をグロースできる人材を求めていました。そのポジションに魅力を感じたからです。また、当時、楽天は公用語が英語になったタイミングで、英語が苦手な私は辛い思いをしていまして(笑)。世の中はグローバル化の流れが進んでいましたが、ドメスティックでまだ成長できるマーケットを探していたので、ここしかないと思って入社しました。入社当初は、物販領域や金融領域の事業開発を担当し、そこでの成果を評価いただき、周辺事業全体の事業開発を任されました。その後、格安スマホレンタルサービス「カイポケモバイル」や、M&A仲介サービス「カイポケM&A」を立ち上げ、「カイポケ」全体を統括する本部長に就任。数百名のメンバーのマネジメントを担いました。

「カイポケ」を統括していた前任者は、現在Chatworkで取締役COOを務めている、福田升二さんです。社長から「カイポケ」を引き継ぐ打診をされたとき、一度、私はお断りしました。管掌する組織が大きくなることで気を遣う場面も増えますし、現場の手触り感がなくなるのが嫌だったからです。「私には向いていません」と社長に伝えたところ、「岡田さんにとっても良い機会になると思う。せっかくの機会だからチャレンジしてみてはどうか」とお話しいただき、「分かりました。ただし、3年を上限にしてください」とお願いしたら、「分かった。3年間頑張ってくれ」と。結局、4年やることになったのですが(笑)、その4年間で、多くのことを学び、事業もグロースさせることができました。

会社から与えられた機会を受け入れ、人としての幅を広げてきた

――新しい事業を始めたり、キーマンが離れたり、急速にグロースする際に新しいポジションを任されていますよね。

確かにそうですね。新しい課題が生まれた際に、その解決のために呼ばれることが多かったです。ポジションを打診された際に、自分には向いていないと思っても、会社が提供してくれた機会を、なんとか活かそうと考えてきました。

楽天に在籍していたときに、短い期間ではありましたが、管理業務を担当したことがありました。この経験が自分としては良い経験になったので、機会を受け入れるようになったのかもしれません。当時は、営業が自分の強みと考えていたので、担当変更を言い渡されたときには戸惑いも大きかったのですが、今考えるとこの経験は大きくプラスになっています。私自身が事業開発として動く際に、管理部門の皆さんが何を求めているのか分かるのです。新規事業を持ち込む際に、どのようなメリットを伝えれば良いのか、相手の思いをどのように汲み取れば良いのか。そのときの管理部門での経験があったからこそ、エス・エム・エスでの連続した新規事業立ち上げが上手く行ったのだと感じています。

Chatworkでは、新規事業に無数の選択肢がある

――そして、2022年5月にChatworkにジョインしますが、このときはどのような背景がありましたか?

Chatworkで副社長執行役員CNOを務めている山口勝幸さんとは、エス・エム・エス在籍時からつながりがありました。一緒にご飯を食べたりする中で、Chatworkという会社はこれからも伸びそうだな、と感じていたのです。エス・エム・エスからの退職を決めて転職活動を進める中で、幾つかの会社と接点を持ったのですが、事業フェーズに大きな魅力を感じて選びました。

具体的には、ビジネスチャットのプラットフォーム性を軸に、非常に幅広い事業展開が可能だと感じました。「カイポケ」は介護業界に特化しているので、周辺事業の幅はどうしても限られてしまう。一方で、「Chatwork」は中小企業向けのコミュニケーションインフラですので、あらゆるサービスと連携を取ることが可能です。ただ、「カイポケ」が強いのは、業界内でのプレゼンスも大きく、過去にも豊富な実績があること。新規事業を立ち上げる際に、グロースできる予測がつきやすいのです。「Chatwork」はユーザーの幅が広く、無数の選択肢があるから難しい部分もある。

でも、だからこそ、面白いのです。エス・エム・エスからChatworkに移った理由も、まさにそこにあります。すでに大勢が決まっているマーケットで勝負するよりも、未開のマーケットでゼロから何かを生み出す方がワクワクするのです。既存の仕組みを回すのではなく、業界を変える仕組み自体を作り出したい。そう強く感じていたので、Chatworkにジョインしました。

Chatworkの次の一手は、「BPaaS」

――2022年5月にChatworkに入社して、どのような仕事を担当しましたか?

「Chatwork」というプラットフォームを活用した、事業開発全般をマネジメントしています。全体の戦略を描きながら、次の柱になる事業を生み出してグロースさせるのがミッションです。

Chatworkの新規事業は様々な選択肢がありましたが、これから注力していく事業として選択したものは、「BPaaS(Business Process as a Service)」と呼ばれるものです。聞き慣れない言葉かもしれませんが、SaaSがソフトウェアをサービスとして提供するのに対し、BPaaSはビジネスプロセスそのものをサービスとして提供するものを指します。

――なぜ、ChatworkがBPaaSに注力することにしたのですか?

すでに、ChatworkではDX推進の取り組みとして、顧客のニーズに合わせて様々なSaaSの提案を行っています。一定の成果は上がっているのですが、今のやり方でDXが実現できる中小企業は一部のアーリーアダプター層までと考えています。UXの異なる様々なSaaSを使いこなすのは大変です。そこで発想を変えて、顧客側でDXするのではなく、ビジネスチャットをインターフェイスとして業務そのものを巻き取り、ITのエキスパートである私たちがDXを推進しようと。ビジネスチャットの普及もキャズムを越え、これからマジョリティ層が中心になっていく中で、中小企業向けDXの中心はBPaaSに移っていくと考えています。

テクノロジーで切り開く中小企業向けBPaaS

――BPaaSによって中小企業のDXが一気に加速していきそうですね。事業をグロースさせていく上でのKSFは何ですか?

いくつか重要なものがあるのですが、その中でも特に重要なものと捉えているのは「テクノロジーの活用」ですね。業務代行と聞くと人力で業務を回すイメージを持つ人も多いと思いますが、最近はAIやRPAなどを活用するロボットを指す「デジタルレイバー」により自動化できる業務は多く存在します。

業務代行というものは大企業を中心にすでに浸透しているのですが、これがなぜ中小企業に浸透しないかというと、価格感が合わないところも大きいかなと。ですので、いかに多くの業務をデジタルレイバーに置き換えてコストを抑えるかが勝負だと思っています。その観点で言えば、テックカンパニーであるChatworkがBPaaSに参入するのは必然だと考えています。

――BPaaSはテクノロジーを活用した事業なのですね。組織という観点ではいかがですか?

まだまだ足りないケイパビリティが多く存在しています。これからバックオフィス業務を中心に様々な業務に対応していきたいと考えていますが、それぞれの領域で専門的な知識が必要になってきます。また、人にしか対応できない業務も存在するため、人が生産性高く働く環境を構築するケイパビリティも必要になります。

今回、労務管理アウトソーシングサービスなど人事労務領域で複数事業を展開している、株式会社ミナジンにグループインいただいた*ことは大きなポイントです。これからミナジンのノウハウとChatworkのテクノロジーを合わせて、まずは人事労務領域のBPaaSを立ち上げていきたいと考えています。将来的には、経理や総務など様々な領域の業務に対してもBPaaSを提供し、Chatworkが導入されていれば様々なビジネス課題が解決され、より付加価値の高い仕事に集中できる環境提供を実現していきたいと思っています。

*参考:人事労務領域で複数事業を運営する株式会社ミナジンをChatworkがグループ会社化

これからも、中小企業のお客様に「手触り感」を持って貢献していきたい

――最後に、これまでのキャリアを振り返ってみていかがでしょうか?

昭和リース、楽天、エス・エム・エス、Chatworkとキャリアを歩んできましたが、ずっと中小企業のお客様に対峙をしてきました。昭和リースのときは茨城県の中小企業にリースを提案していましたし、楽天でも中小の小売業者がお客様でした。エス・エム・エスのお客様の介護事業者も、ほとんどが中小企業の規模感です。自分の実家も中小企業を経営していたことも、この仕事に意義を感じている理由の1つですね。

――今後のキャリアはどのように考えていますか?

正直、先のことはあまりイメージしていません。大きな組織をマネジメントするよりも、自分もプレイヤーとして動けて、気の合う仲間と手触り感のある事業開発をしていきたいです。今のポジションは、理想的と言っても過言ではありません。Chatworkはこれからも急速にグロースすると思います。組織は拡大していきますが、一人ひとりの社員がリアルな手触り感を持ち続けられることで、仕事を楽しんでもらえるはず。新規事業だけではなく、そのような環境を作り続けることも、私の役目かもしれません。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)