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チームを改善した原体験が、スクラムマスターとしての道を切り拓いてくれた。

2006年に初めてシステム開発に携わって以来、金融業界を中心にエンジニアとして活躍してきた前田明日香。キャリアの過程でコーチングに興味を持ち、認定スクラムマスター(CSM®️)と認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO®️)の資格を取得。金融系システム開発の知見を活かしつつスクラムマスターとしても活躍できる環境を求めて、Chatworkへ転職しました。

現在は福岡県でフルリモート勤務をしつつ、プロダクト開発部 料金プランチームの決済ドメインエキスパート兼スクラムマスターとしてChatworkを支えています。今回はこれまでのキャリアの歩みと、Chatworkでの活動についてインタビューしました。

■プロフィール

前田 明日香
プロダクト本部 プロダクト開発部(料金プランチーム)

保険系システムのサーバサイド開発からエンジニアとしてのキャリアをスタートし、複数企業で決済・金融系の開発/保守の経験を積む。大手IT企業にて決済プラットフォームの開発・保守運用のチームに携わったことをきっかけにスクラムとコーチングに興味を持ち、ストレングスファインダーのコーチング資格を取得。後に認定スクラムマスター(CSM®️)と認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO®️)の資格も取得する。2021年8月よりChatwork株式会社へ参画。料金プランチームにて、決済ドメインエキスパートとスクラムマスターを兼任する。

金融系の道を歩んできたエンジニアとしてのキャリア

――前田さんがITの世界で働くようになった経緯を教えてください。

もともと、大学時代は昼間に臨時社員としてクレジットカード会社の事務の仕事をしつつ、夜間の大学に通っていました。エンジニアを目指したきっかけは、仕事で使用していたシステムのメンテナンスに来たSEの仕事ぶりを見て、素敵だと思ったことです。

大学中退後に、クレジットカード会社の職歴をカウントして中途扱いで2006年にIT系の会社に入社したのが、キャリアの始まりでした。大学卒業後に新卒として入社することも可能でしたが、自分の性格上、みんなと同じ行動を強いられるのが苦手なんですよ。新卒で入社して同期と一緒に研修を受けたくなくて、大学中退・中途入社という選択をしました。

――そこから長い間、金融や保険、決済などのシステム開発に携わってきたと伺っています。金融系システムを中心にキャリアを歩んだ理由をお聞かせください。

クレジットカード会社の事務をしていた頃に金融系が面白いと感じていましたし、エンジニアとして初めて携わったプロジェクトも保険会社のシステムだったのが大きな理由です。金融系の業務知識を持っているのが大きなアドバンテージになるので、強みを伸ばすためにも意識的に金融系の仕事を選んできました。

――その後のキャリアに影響を与えた業務があれば教えてください。

まずは2009年頃に担当していた、日本の中央銀行のシステムを開発・保守運用する仕事です。若手ながら仕事に慣れてきた時期に、大規模なシステムの開発に携わり、重厚な開発スタイルを経験できたのはよかったです。エンジニアとしての地盤が固まるとともに、決済・金融系知識の土台ができ、大きな自信につながりました。

そのプロジェクトではクライアントがシステム・ドキュメント共に品質に厳しく、設計書などのレビューにおいても「てにをは」レベルの細かい点や、仕様に関することまで、びっしりと赤ペンで指摘が入りました。成果物の品質と徹底的に向き合い、細かいところまで気を配らなければ、システムの不具合などが起きて大きな事故につながるかもしれない。品質の高いシステムを開発する上で大切な姿勢を身に付ける契機となりました。

コーチングの手法を導入して開発組織を改善する

――他に、キャリアに影響を与えたプロジェクトはあるでしょうか?

2016年から、大手IT企業に転職し決済プラットフォームの開発・保守運用のチームに携わりました。私が所属していたチームは、部署全体で運用工数が肥大化していた状況を改善するために、運用業務を全体的に最適化することも目的としていました。また、そのチームで私は若手の育成にも携わっていました。

運用業務の情報を整理して自動化できる部分を自動化するとともに、それぞれの業務の担当を適切なチームに仕分けしていきました。その過程で、さまざまなシステムの仕様を深く理解でき、個人的にも達成感がありました。また、万が一障害が起きても即座にリカバリできるように手順書としてまとめるなどの改善業務を、特定の個人ではなくチームが一丸となってできたのが大きな成功体験です。もともと、あまり一体感のないチームだったため、組織の状況が良くなったことを実感できました。

――チームが一丸となれた理由はどのあたりにあると思いますか?

当時の私がスクラムマスターに近い役割をして、メンバーの強みを活かし、発言しやすい空気を作れたのが功を奏したのかなと思います。スクラムやコーチングに興味を持ったきっかけは、入社時点で受けたストレングスファインダーという自分の強みを見つけるための診断テストでした。

チームに参画した直後、あまり組織の状態が良くないと感じ、ストレングスファインダーのことを思い出したんです。診断結果を見てメンバーの資質を知り、考え方やコミュニケーションの取り方を理解すれば、改善のきっかけになると考えました。そして、私がコーチングを勉強して業務に取り入れれば、みんなが自分の強みを活かして楽しく仕事ができ、成果にもつながると思ったんです。これをきっかけとしてコーチングの力を知り、資格を取る決意をするきっかけにもなりました。

スクラムがコーチングを取り入れるフレームワークとして適していたことから、チーム内でなんちゃってスクラムのような取り組みを始めました。成果が出た事例としては、あまりモチベーションを持てずにいた新卒社員のコーチングがあります。せっかく一緒に働くからには仕事をキャリアの糧にして欲しいと思い、ストレングスファインダーの結果をもとに、モチベーションを高める方法やフォローの仕方などをチーム内で話し合い実践しました。

そうしたなか、とても大きな障害が起きて、新卒社員も含めてチームのみんなで障害対応をしました。障害対応は多くの場合、辛い作業になりがちですが、その事例ではみんながポジティブな雰囲気で取り組むことができ、新卒社員にも意見をもらいつつ対応しました。そして、障害を乗り越えたときにはチーム全員に大きな達成感が生まれました。私個人としてもチームとしても、印象に残る成功体験でした。

将来的に、スクラムマスター専任の働き方をしたいと思い始めたのもその頃でした。プログラミングが得意な人はたくさんいるけれど、コーチングを開発に取り入れようとする人はあまりいない。自分の強みになるし、やりがいも大きいと感じました。

Chatworkで念願のスクラムマスターに

――その後、Chatworkに転職するまでの流れについて教えてください。

次の会社では社内インフラエンジニアとして、クラウドネイティブバンクの立ち上げに携わりました。そして、その会社ではスクラムマスターやプロダクトオーナーとしての実務はしていなかったものの、認定スクラムマスター(CSM®️)と認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO®️)の資格を取得しました。

前職でやっていたのはなんちゃってスクラムだったので、ちゃんと体系的な知識を学びたいと考えました。プロダクトオーナーの資格も取ったのは、スクラムマスターの知識だけでは開発者寄りの視点になり過ぎると思ったからです。

現場でスクラムマスターをきちんと実践したいと考え、それができる転職先を探しました。とは言っても、優先度としては金融系システムに携われることが7割、スクラムマスターができることは3割くらいの感じで、金融系の仕事を継続できることのほうが優先でしたね。

そんなタイミングで、Chatworkの決済ドメインエキスパートの求人を目にしました。私のやりたいこととは非常にマッチしていたものの、「私はエキスパートと呼べるほど専門的な知識を持っていない」と不安で。自分のレベルでは無理そうだと感じていました。

しかし、エージェント経由でマネージャーと話してみたところ、「前田さんは金融系の知識を持ちつつも、さまざまな経験をしているためジェネラルな視点があるのがいい」と言ってもらえたんです。それなら力になれそうだと思い、安心して入社しました。また入社時点では、スクラムマスターになりたいとは伝えていませんでしたが、コーチングを開発に取り入れたいと話したら快い返事をもらえ、その点も魅力的でした。

――Chatworkでの現在の業務についてお聞かせください。

料金プランチームで決済ドメインエキスパートとスクラムマスターを兼任しています。決済ドメインエキスパートの業務ではこれまで培ってきた金融系の知識を活かし、ノウハウをチームに提供しています。

入社直後、比較的すぐにスクラムマスターをしないかと打診されたのですが、チームの状況的に「スクラムマスター=チームリーダー」のような誤解が生まれそうだったため、まずは様子を見ました。1~2カ月くらいチームメンバーの動きや業務内容を確認した上で、頃合いを見てスクラムマスターに就任しました。

就任直後に気を付けていたのは、チームがすでにスクラム的な動き方をしていたのですが、そのやり方を否定しないことでした。私の目から見ると、改善したほうが良さそうな点はありましたが、すぐに「ここを変えてください」と言ってしまうとメンバーも反発心を持ってしまいます。

時間をかけて、メンバーの心の解きほぐしやティーチングをすることから始めました。様子を見ながら、少しずつメンバーに改善提案をし、スクラムの土台を整備していきました。頑張って取り組んだおかげで、今はスムーズにスクラムが回るようになり、業務改善や新しいチャレンジをしやすい環境になっています。

チャレンジを否定しないで助け合うのがChatworkの魅力

――スクラムマスターをしていて印象に残った出来事はありますか?

最近携わった、プランを統合して組織での管理機能を拡充したプロジェクトが挙げられます。チーム全体でどのようにスクラムをするのか、どういったやり方が全員にとってプラスになるのか問いを立てつつ取り組んだ結果、チーム全体がすごく成長できました。プロジェクトを円滑に進められたため、チームとしてさらに上のステップに行けたと感じます。

また、こうしたプロジェクトを通じて私自身もスクラムマスターとして成長できました。スクラムマスターになったばかりの頃は知識が少なかったため、自分ができる打ち手は限られていました。ですが、現場でスクラムマスターとしての経験を積んだり、各種のカンファレンスや記事、本などから知識を得たりしたことで、自分自身の行動の選択肢も広がったように感じます。

――Chatworkで働く良さはどのような点にありますか?

メンバーがすごくサポートしてくれるところです。何か新しいチャレンジをするときに否定せずに一緒に乗っかったり、助けてくれたりする温かい雰囲気を感じています。いい意味で刺激し合って、和を大切にできる人たちが集まっているので、仕事しやすい職場ですね。

また、私は今福岡に住んでいてフルリモートで仕事をしているのですが、Chatworkは多様な働き方を許容してくれる会社なので、働きやすいです。通常、フルリモートでの稼働はオフラインよりもコミュニケーションが難しい面があります。たとえば前職でもリモートワークでしたが、ミーティング時に画面オフで話す人がいるなど、少しやりにくさを感じるときもありました。

でも、今のチームはミーティングなどで積極的に顔出しして話しますし、リモートワークを改善するためのツールなども導入しているため、距離が離れていても一緒に働いている感じがします。

――その雰囲気はまさに“Chatworkらしさ”ですね。最後に今後の目標をお聞かせください。

さらにスクラムの経験を積んで、最終的にはアジャイルコーチを目指したいです。いろいろな人が才能を発揮し、個人や会社の成果につながる働き方を実現する手助けができればと考えています。成果を出して事業が成長すれば、社会はより良くなります。スケールの大きい話ですが、そうした活動がいずれ世界平和にもつながると思って、日々の仕事に励んでいます。

撮影場所:WeWork ゲイツ福岡