Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

カルチャーをアップデートして勝負をかける。働き方の未来を、誰よりも速くつくるために。

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2018年に代表取締役CEOに就任。2019年の株式上場、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による業績の急成長、と目まぐるしい3年間を過ごしてきました。代表取締役CEOの山本は、直近の成長をどう捉えて、Chatworkの「未来」をどう見据えているのか。そして、「今」をどう直視しているのでしょうか。
「ここで一気に勝負をかける」そう語る山本は、今、設定している課題の打ち手について、そして目指すべき未来と過去の原体験について、ざっくばらんに語ってくれました。

■プロフィール

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代表取締役CEO
山本正喜

電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中に兄と共に、EC studio(現Chatwork株式会社)を2000年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、Chatworkを開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。2018年6月、当社の代表取締役CEOに就任。

この1年間で、働き方が大きく変わった。ここで一気に勝負をかける。

――上場後2年が経ちましたが、現在の事業と組織のテーマを教えてください。

この1年間の環境変化を背景に、一気に勝負をかけようとしているのが「今」です。新型コロナウイルスの感染拡大によって、世の中の働き方が根本的に変わっていきました。リモートワーク、在宅ワークが一気に浸透しましたが、おそらく感染が終息した後も、元に戻ることはないでしょう。その働き方の変化と合わせて、ビジネスチャットの利用率は急速に高まっています。一般への普及が加速する「キャズムの壁」が、目の前に迫っているのです。
ここでどこまでのシェアを獲得できるかが、今後の事業展開に大きな意味を持ちます。そこで、一気に勝負をかけようと。これまでは、比較的黒字を維持したまま成長していく、かなり堅実な経営をおこなっていました。しかし、上場から2年が経って力もついてきたので、投資スピードを劇的に速めています。ただ、その投資を活かすことができるケイパビリティを持った、それぞれのメンバーの存在が前提になるので、優れた組織をつくることに全力で取り組んでいます。

社員数を倍にした次は、カルチャーをアップデートする

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――具体的には、どのように組織をつくっているのでしょうか?

この1年間で採用を加速して、社員数を約100名から約200名に増やしました。正直、このペースで増員を図ったことは過去のChatworkにはありません。それくらい思い切った投資なのですが、これからは拡大したメンバーをしっかり定着させて、それぞれが活躍できるカルチャーの再構築にシフトしていきます。
Chatworkは、100名くらいのフェーズが長かった会社です。そこで培われたカルチャー、オペレーション、制度は機能していたと思います。ただし、組織のフェーズが変わると、合わなくなってくる。100名の会社と200名の会社では、必要なマネジメントの要素が異なるので、サイズに合わせた運営手法にアップデートすることが急務でした。古参の社員よりも、新しい社員の割合が増えていく中で、これまでに培ってきたものを受け継ぎ、新たなケイパビリティも獲得する。そのためにカルチャーや制度のアップデートに取り組んでいます。

自社サービスの拡大期を迎えて、「バリュー」をアップデート

――カルチャーのアップデートは、どのように進めているのでしょうか?

まずは、組織の土台にあるカルチャーからアップデートを進めています。Chatworkはこちらのようにミッション、ビジョン、バリューを定めていますが、改変したのはバリューです。バリューはメンバーの日々の行動指針を表すもので、組織のカルチャー醸成に直結しているからです。

●ミッション

働くをもっと楽しく、創造的に

●ビジョン

すべての人に、一歩先の働き方を

●旧バリュー

  • いつも心にユーモアを
  • 自然体で成果を出す
  • オープンマインドでいこう
  • ユーザーに笑顔を
  • 自分ごとで行動する

※以下ページより転用
https://corp.chatwork.com/ja/style/

旧バリューは、2018年11月、私がChatworkのCEOに就任した直後につくりました。当時は90名くらいの規模で、社員の半分弱がエンジニア。「とにかくこだわって良いサービスをつくろう」という、ものづくりが中心の会社でした。そして、2021年になり、自社サービスの拡大期を迎えると、ビジネスサイドの力がより必要になってきた。すでに100名近くのビジネスサイドの社員が入社しており、2018年当時のエンジニアのカルチャーを適用するのは無理が生じていました。すると、ビジネスサイドのトップの福田さん(執行役員CSO兼ビジネス本部長)から、「自組織向けに、新しい行動規範をつくりたい」との声が出たので、行動規範の元になるバリューを改めようと決断したのです。

Chatworkらしい「遊び心」「楽しむ」を残し、今後の成長に必要な言葉を加えた

――では、どのようなバリューにアップデートしましたか?

Chatworkらしさである、「遊び心」「楽しむ」といった言葉は残しつつ、これからの事業展開に必要になる「チャレンジ」「スピード」「変化し続ける」「社会への責任」といった内容を加えました。

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私たちは中期経営計画の中で、「2024年に中小企業No.1ビジネスチャットになる」「その先はビジネス版スーパーアプリになる」という目標を掲げています。「ビジネス版スーパーアプリ」とは、「チャットツールにとどまらず、中小企業のあらゆるビジネス課題を解決できるアプリ」を指しています。この高い山を全員で登りきるために、必要な指針を盛り込みました。メンバー一人ひとりがこのバリューに基づいた行動を重ねることで、事業戦略の実現や顧客への価値の提供、そして個人としての市場価値の向上が実現できる。そのようなバリューをつくりました。

創造的な仕事をしながら、挑戦を楽しめる風土をつくる

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――では、それぞれのバリューに込められた意味を教えてください。

1つ目の「遊び心を忘れず、チャレンジを楽しもう」ですが、「遊び心を忘れず」に込められた意味は、クリエイティビティを大切にして欲しいということ。創造的な仕事をするためには、ユーモアやそれを取り巻く心理的安全性が必要なんですよ。周りの空気を読みながら仕事をするよりも、自分の創造性を活かした仕事をしてほしいと。
そして、「チャレンジを楽しもう」なのですが、「チャレンジ」という言葉は、市場を切りひらいていくビジネスサイドの仕事をより意識しているものです。挑戦には苦労がつきものですが、苦しい中でも楽しむことが大切だと思っています。そして、挑戦している人を賞賛するような風土もつくりたい。失敗したときの後悔や悲しみを打ち消すくらいに、楽しめる文化ができれば、個人としてもチャレンジを厭わなくなるし、組織としても強くなるはずです。

成功するためではなく、学ぶために速く行動する

――次に「速く学び、変わり続ける」ですが、こちらはいかがでしょうか?

Chatworkは、サブスクリプションで安定した収益を上げながら、好きなものづくりに集中してきた会社です。言わば「農耕民族」のような会社で、社会に変革をもたらしたり、市場環境の変化に対応する力は弱かった。市場のめまぐるしい変化にアジャストする力を身につけないと、個人も会社も取り残されてしまう。そのような危機感がありました。
そこで、「速く」という言葉を入れました。ただし、「速く成功する」「速くいい結果を出す」のではなく、「速く学ぶ」ことが最も大切だと考えています。成功か失敗かは問題ではなく、そこから学ぶことの方が大事で、「学ぶために速く行動する」と言ってもいいくらいです。
さらに「変わり続ける」は、世の中の動きにアジャストし続けることを意味します。AIやロボティクスといった新しいテクノロジーによって、市場の変化が加速するのが目に見えている中で、私たちも変わり続けようと。単に変わることが目的ではなく、環境に適応するために変化を継続する。そのような組織にしていきたいのです。

社会インフラを運営する事業者として、大切にするのは誠実さ

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――最後は、「チーム、顧客、社会に対して誠実に」ですね。

まずは「チーム」という言葉がポイントです。「会社に対して誠実に」ではありません。社内と社外で分けるのではなく、一緒に働く人すべてに対して誠実にいよう、という意味です。「顧客に対して誠実」は、自社の利益重視の商売はしない、「社会に対して誠実」については、社会インフラとして、プラットフォーマーとしての責任をしっかりと果たそう、という方向性を込めました。
「誠実」という言葉の定義なのですが、双方のハッピーを目指してコミュニケーションをすることだと解釈しています。単に正直に向き合うのではなく、相手の成功を考えた上で、自分の成功も求めながら、ウソをつかないコミュニケーションを重ねるイメージです。社会に欠かすことができないインフラを運営する事業者として、顧客やステークホルダーとともに長い目で未来をつくっていく。そのために「誠実であること」は重要なスタンスだと思っています。

バリューを個人が体現することによって、ビジネスパーソンとしての価値も向上する

――先ほどの説明の中で、「バリューの実現を通じて、メンバー個人としての市場価値も上がる」とありましたが、どのような意味でしょうか

バリューをアップデートする前から、役員たちと会社のあり方として議論していたのが、「人材輩出企業でありたいよね」ということ。「Chatwork出身者はすごく優秀だよね」「Chatwork出身の社長がたくさんいるよね」と言われる会社にしていきたいので、新バリューの制定においても意識しました。キーワードである「チャレンジ」「速く学ぶ」「変わり続ける」「誠実に」を体現すれば、間違いなくビジネスパーソンとしての価値も上がっていく。そう確信しています。
メンバーに対して「長く在籍してほしい」というスタンスで接するよりも、「市場価値を高めて欲しい」とアプローチする方が、中長期的には自社のためにもなりますし、もちろん個人のためにもなる。そして、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを、自社内で体現することにもつながります。仮にメンバーが他の会社に移ったとしても、Chatworkで感じた働く楽しさをその会社で伝えてくれれば、ミッションの実現に近づいていると言えます。そういった意味でも、「人材輩出企業」になることは大切なことなのです。

仕事が「我慢の場」であってはならない。そのような仕事観を変えようと、CEOになった

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――そもそも、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを掲げた理由は何ですか?

2018年に、CEOのポジションを創業者の兄から託されたのですが、正直、やりたくなかったんですよ(笑)。私はものづくりが好きで、コードを書くのが楽しくて仕方がなかったので、「え?俺がCEOをやるの?」という感じでした。ただ、受けざるをえなかったので、「どういうミッションの会社だったら、自分がCEOをやりたいだろうか」と考えて、内省に内省を重ねて出てきたのが、このミッションだったのです。
ミッションの根本には、私の原体験があります。Chatworkの創業は2000年で、私は大学生だったのですが、この仕事が楽しくて楽しくて。小学校、中学校、高校、大学と、何の為にやるのかわからない勉強が嫌いでずっと逃げたくて仕方がなかったのに、このモチベーションのギャップに驚きました。自分が好きなプログラミングをやっていれば、お客さんに喜んでもらって、お金ももらえる。社会と接続していると感じられて、自分の存在意義も見いだせる。これは最高だなと。土日も関係なく、寝食を忘れて、目の前の仕事に夢中になりました。

――「仕事」との出会いが、非常にポジティブなものだったのですね。

そうです。これが私の原体験だったのですが、ほどなくして、誰もがこの喜びを味わえるわけではないと気付きました。高校や大学の同級生と飲み行く機会があったのですが、就職を境に彼らの目の輝きが失われていったのです。最初は「俺は●●に就職したんだ。お前、起業なんかリスクがあるぞ」と言われていたのが、2年目、3年目になると、愚痴しか出なくなってきた。私は「仕事は面白いもの」と思っていたのですが、彼らにとっては「仕事は我慢の場」だった。それがものすごくショックだったのです。
我慢の仕事を20代から60代まで続けるのは、彼らにとって、ものすごい人生の損失です。また、多くの人たちの発揮するべきクリエイティビティが失われるのは、社会にとっても大きな問題だと感じたのです。ここを何とかしたい。「仕事って面白い」と思える仲間を増やしたい。それが根本的な想いとしてあります。その想いを言葉にしたもので、Chatworkの事業を通じて実現したい世界観が、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションなのです。

「お金のため」「生活のため」に働かない未来が、すぐ近くに来ている

――最後に、Chatworkという会社の未来を、どのようにイメージしていますか?

間違いなく、近い未来に「働く目的」が変わってくると思います。今の社会では、「お金のために働く」「生活のために働く」ことが主な目的です。ただし、AIやロボティクスの時代になると、社会を回すために必要な労働は、かなりの部分が代替されます。基本的な生活必需品をロボットが生産して、ベーシックインカムのようなものが普及すると、「生活のために働く」という考え方は薄れていくでしょう。

では、その次の働く目的は何か。エンターテイメント、アート、クリエイティブ、イノベーションのような領域に移ってくると考えています。人間が楽しむため、より良く生きるために働く。そのような時代がおそらく近い未来にやってくる。この未来の働き方のイメージが、Chatworkのミッション「働くをもっと楽しく、創造的に」そのものなのです。私としては、その働き方を早く広めたいし、当たり前にしたい。つまり、「働く」という人間の営みに、パラダイムシフトを起こしたいのです。それが私自身の生きる意味であり、Chatworkという会社の存在意義でもある。そう考えています。

「働くをもっと楽しく、創造的に」。そのミッションを実現したら、Chatworkは解散する

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――ビジネスチャットツールは、そのパラダイムシフトにどのようにつながっているのでしょうか?

その世界観を実現するために、ビジネスチャットツールが現時点では最も有効だと判断しているため、事業として注力しているだけです。導入すれば、職場のコミュニケーションが変わり、会社のカルチャーが劇的に変わります。私たちはこのツールに、理想とする働き方への想いを込めています。ただ、より効果的な手段があるのでしたら、ミッションの実現を優先してそちらを取るでしょうね。
ビジネスチャットというツールだけでなく、仮にCEOの私自身がいなくなったとしても、Chatworkのミッション、そして組織は残り続けるでしょう。「働き方の未来をつくりたい」という想いで集まった集団を、バーチャルに定義しているのがChatworkという法人というだけ。ですから、たとえこの会社に在籍していなくても、同じ想いを持っている人がいれば、仲間だと思っていますし、そういう人を増やしていくのも、私の大切な仕事です。
「働くをもっと楽しく、創造的に」。世界の全人口の多くが、そういう働き方になったときが、私にとってのミッション・コンプリートなのです。そのときには、私はChatworkを去り、他のミッションを掲げているでしょう。いや、Chatworkという会社自体も存在意義を全うして、解散しているかもしれませんね(笑)。