Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
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LINE、17LIVEのマーケティング × ブランドを組織化し、Chatworkへ。機能を統合させた新組織を立ち上げ、勝ち筋を見出す。

デザイナー、イベント・プロモーションの企画・運営、ブランドディレクション、そして戦略立案。マーケティング・PR業務を幅広く経験し、代理店と事業会社の双方でサービスのグロースを担ってきた田中 康太。新しいサービスを世の中に定着させるために必要なこと、IT業界特有のマーケティングの面白さ、Chatworkでの仕事のやりがいなどを聞きました。

■プロフィール

田中 康太
コミュニケーションプラットフォーム本部 マーケティングユニット
グロースマーケティング部 マネージャー

京都府宇治市出身。2006年3月に大学卒業後、制作プロダクション、広告代理店を経て、2015年にLINE株式会社へ入社。エンターテイメント、AI、EC、グルメなど様々な領域のマーケティングコミュニケーション戦略を担当。2021年に17LIVEに転職し、ブランド責任者としてグローバルでのブランド統一化に取り組み、ブランド ・マス広告・デジタル施策・クリエイティブ・SNSを横断したブランドマーケティング戦略をリード。Chatworkでは中長期戦略立案から顧客獲得施策まで幅広く従事している。

自動車ディーラーで働きながらデザイン学校へ。広告・PRへのキャリアを切り拓く

――今のキャリアにつながっている、原体験があれば教えてください。

大学時代のゲームセンターでのアルバイトです。クレーンゲームの専門店で働いていたのですが、導入する商品や並べ方、装飾によって、売上が大きく変動します。自分の創意工夫によって、目の前のお客様に喜んでいただけて、売上も増えてアルバイト先にも貢献できる。その瞬間がたまらなく幸せで、現在のマーケティング・PRへのキャリアにつながっていると思います。

大学卒業後は、クルマが好きだったので、地元の自動車ディーラーに就職。ただ、広告やPRの仕事への想いを抑えることができず、働きながらデザイン学校に通いました。関西の小規模のデザイン事務所に入社して実績をつくり、東京のプロモーション会社に転職したのです。若くても仕事を任せてくれる会社で、大手モバイル企業の海外展示会の企画・運営にも携わりました。英語が話せない中でも必死に食らいついていくことで、何とかやり遂げることができた。ここで学んだコミュニケーションスキル、困難な状況でもひるまないマインドは、その後の働き方のベースになっています。

マラソンシューズのプロモーションでは、国際的なスポーツイベントとタイアップ

――そして、2010年にPRコンサルティング会社に転職して、5年間在籍しています。

広告代理店とPR会社を兼ねている会社で、まさに自分が目指していた環境です。私は営業兼プロデューサーとして、クライアント企業と直接やり取りを行っていました。予算獲得のためのプレゼンテーション、ブランドコンサルティングからキャンペーン企画、クリエイティブ制作、プロモーション施策など一気通貫で担当。多くの学びを得ることができました。

大手シューズメーカーの案件では、マラソンシューズのブランディングを任されました。高機能で玄人に受けていたブランドを、ファッション性を打ち出して一般ユーザーにも認知を拡げることがミッションでした。その商品は海外では一定の人気を獲得していたので、流行への感度が高い人たちをターゲットに、「海外で流行っているブランドが日本に逆輸入」というコンセプトでプロモーションを展開。海外で撮影したクリエイティブをファッション誌に載せたり、国際的なスポーツイベントとのタイアップも行い、大々的に展開しました。日本での認知が一気に進んで、私自身もクライアントからの信頼を獲得。幅広い商品の企画プロモーションを任せていただけるようになりました。

LINEでPR戦略に特化した組織を構築。新規サービスを通じて、新しい生活を提案する

――2015年にLINEに転職しました。前職で実績を挙げていた中で、転職に踏み切った動機を教えてください。

デジタルの知見を深めたかったからです。前職では大手クライアントの案件で、SNSアカウントの立ち上げに携わって、大きな反響をいただきました。デジタルをフル活用したマーケティングが、今後は主流になると思い、デジタルの潮流のど真ん中で経験を積みたいと、LINEを転職先に選んだのです。

もうひとつの理由があります。クライアントから委託されるのではなく、自社でブランド戦略やマーケティングを遂行したかった。代理店から事業会社に移ることで、商品やサービス自体の戦略にも関わりながら、マーケティングを実行できる。LINEの周辺サービスが続々と立ち上がるフェーズだったので、チャンスが多くあるなと。数千万人が利用するプラットフォームを武器に、新しいサービスを通じて、新しい文化・生活を生み出せる。また、LINE社内にPR戦略を考え実行していく部署が無かったので、それができることも魅力に感じました。

「すぐにユーザー数と売上がアップする案を持ってきてください」

――入社後は、前職で学んだスキルを活かすことができましたか?

いえ。そんなに甘くはなかったです。入社後の半年間は、ほとんどの提案が通りませんでした。新規サービスの役員や事業部長にブランド戦略やPRのプレゼンテーションを行っても、なかなか採択されない日々が続きました。前職で担当していた有形商材やファッション領域とは打って変わって、IT企業では数字が重視されます。DAUや売上をすぐに伸ばした経験が、自分には乏しかったので、このときはしんどかったですね。

ただ、長い目線での戦略やPRの重要性を感じている人もいました。彼らと連携しながら提案を続けて、数値で説明できる効果もアピールしていると、次第に風向きが変わりはじめたのです。提案に耳を傾けてくれる方が少しずつ増えてきました。

流行を知ることができる音楽サブスクリプション、多角的な企画を行った求人サービス

――「LINE MUSIC」や「LINEバイト」などさまざまなサービスを担当されたと伺いました。どのような戦略を形にしたのでしょうか?

「LINE MUSIC」は、サブスクリプション型の音楽サービス。当時から競合がひしめく分野で、機能差別化は難しい状況でした。そこで、コミュニケーションツールであるLINE本体との相性を考えて、音楽を聞くだけのサービスではなく、「流行を知ることができる」というサービスとして訴求していこうと思いました。ランキング機能を前面に出すことで、旬な楽曲を知ることができる。そして、気に入った曲をLINEや日常の会話の中で共有することによって、友人とのコミュニケーションを楽しめる。そのような訴求を戦略的に行ったところ、サブスク型の音楽プレイヤーの順位で常に上位に食い込めるようになりました。マスメディアがランキング系のコンテンツを好むことも計算に入れていて、TVやWebメディアで何度も取り上げられたことも、サービスのグロースに寄与しました。

「LINEバイト」はアルバイトを必要としているお店や企業が、LINEで応募者とやり取りできるもので、多くの中小の事業者に活用いただいています。競合事業も多く当時はマス広告を打ち合う環境だったのですが、LINEらしいLINEならではの施策をできないかと考えました。その中で、若者の認知を拡大するために、人気のラッパーとタイアップしたプロモーションを行ったり、海の家を期間限定で設置することで、リゾートバイトの訴求を行ったりと、数々の施策を実現しました。様々なメンバーとがっちりと連携しながら、独自性の強い企画を行えることにやりがいを感じていました。

17LIVEでは、グローバルでのリブランディングに向き合った

――そして、2021年2月に、LINEから17LIVEへと転職します。

ひとつのサービスに集中して関わりたかったからです。LINEではマネージャーを務めていたので様々なサービスに携わらなければならず、どこかのタイミングで一度ひとつのサービスに集中してみたいと思っていました。サービスグロースに徹底的に伴走することで、新たな世界が見えてくると考えていました。

そこで、転職先に選んだのが17LIVEです。台湾発祥のライブ配信サービスで、日本をメインの市場として展開しています。当時は、まだまだライブ配信のマーケットは群雄割拠の状態で、どの企業にもチャンスがあった。この場所なら新しい経験ができそうだと感じてジョインしたのです。

任されたプロジェクトは、グローバルでのリブランディング。各国で独自に展開していたブランド戦略をグローバルで統一するプロジェクトです。様々な国のユーザー特徴やジェンダー等を意識しながら、サービス名称やUIを見直すのは大変な作業でした。与えられた期間は半年。日本のユーザーを意識するだけではなく、世界中の文化を理解した上で、一つひとつの戦略を積み上げる必要がありました。

このときに感じたのは、ITサービスのブランド浸透の難しさです。サービスを取り巻く市場の変化が激しいので、1年後に事業環境が全く変わっていることも珍しくありません。変化への対応を前提に、中長期での戦略を構築するのはやりがいがありました。新しいカルチャーや生活習慣をじっくり浸透させる見せ方と、サービスのユーザーを短期的に増やす施策を両立させる。この課題に向き合いながら、何とかリブランディングを軌道に乗せることができました。

BtoB領域を深掘りするためにChatworkへ。最初に着手したのは、組織の大幅な改変

――その後、freeeを経て、2023年7月にChatworkにジョインしました。

BtoBでの経験を積みたかったのがジョインの理由です。LINEなどでも経験はありましたが、BtoB領域のマーケティングをもっと深掘りすることで、自分のスキルの幅も拡げたかった。Chatworkに入社したのは、中小企業のマーケットに真摯に向き合っているスタンスに共感したからです。ビジョンやミッションが明確で、周りの社員とも一体感を持ちながら課題に向き合える。そう感じました。加えて、ビジネスチャットがメインのプロダクトなので、LINEで培ったコミュニケーションツールのグロース経験が活かせる印象もありました。

マネージャーとして、入社直後に取り組んだのは体制づくりです。まずは全メンバーと1on1を行うことで、スキルやモチベーションの源泉を把握しました。一人ひとりのポテンシャルをより発揮してもらうために、組織の再編成を提案して実行に移したのです。

具体的には、全体として1つの目標を目指すことができるように、幾つかに分かれていたマーケティング・事業PRの部署をひとつに統合しました。新しい「グロースマーケティング部」を創設し、私自身がマネージャーとして就任。その中に、戦略立案、プロモーション、事業PR、コンテンツを行う4つのチームを配置したのです。

戦略、プロモーション、事業PR、コンテンツの4分野が、有機的に連携できるように

――組織体制を整えた後は、マネージャーとしてどのようなことに取り組んできましたか?

まずは、チーム間での連携を生み出すことに注力しました。マーケティング・PRの領域では、個人がやれることには限界があります。チームの内外で連携することで、その価値が増幅されるのです。たとえば、コンテンツチームでホワイトペーパー(「Chatwork」の活用ノウハウなどをまとめた資料)を作成するだけではなく、プロモーションチームと連携することで、より多くの見込み客に届けることができます。また、PRチームで取り上げた顧客事例を、コンテンツチームがセミナーなどのコンテンツに落とし込むことで、新たに有用な事例を提供できる。チームの枠を超えて連携することで、お客様が喜んでくれることはもちろん、事業のグロースに直結したKPI設計が可能になり、メンバーたちも迷いなく目の前の仕事に打ち込むことができるようになりました。

また、メンバー同士で人となりが見えるように、ある施策を推進しました。ほとんどの社員がリモートで勤務しているのですが、毎朝の勤怠入力に併せて、メンバー同士で出勤報告をするグループチャットがあります。定型文での入力は禁止にして、一言、その日の気分や共有したいことをシェアしてもらうように改めました。「おはようございます。今日も良い天気ですね」「昨日は●●のテレビ番組を見ました」と、一言添えるだけでも、メンバーの関係性が変わります。ご家族や趣味の話をポストする人も増えて、お互いの人となりが分かるようになってきた。そして、仕事でも協働をしやすくなったのは雰囲気で感じています。

コミュニケーションインフラをグロースさせるために、明確な壁が見えてきた

――これまで手掛けてきた商品・サービスとの違いは、どのように感じていますか?

ビジネスチャットのグロースには、おそらく明確な勝ちパターンは存在しません。人事や会計などのバーティカルなSaaSプロダクトは、領域が限定されるのでユーザーが抱えている課題を特定しやすい。一方で、ビジネスチャットはホリゾンタルなプロダクトでもあり、コミュニケーションのインフラです。様々な業界のビジネスシーンで使われるので、課題を特定することはできません。「●●で困ったときは、Chatwork」と単一コンセプトで世の中に浸透させるのは難しい。解が無いからこそ、面白いのです。

「Chatwork」を使ってもらうために、どのような壁を取り除かなければならないのか。そして、より高頻度で活用してもらうために、どのようなイメージを持って登録してもらうべきなのか。日々、メンバーと議論を重ねる中で、気づいたことがあります。会員登録前から「Chatwork」の活用イメージを持ってもらうのが大切だということです。誰とどのようなコミュニケーションを取りたいのか、そのイメージを持っていないまま使いはじめても、次のステップには進むことが難しく、ずっと使い続けてもらうことにはつながらない。コミュニケーションツールは、1人だけでは使えない特殊なサービスでもあります。チーム全員の力を合わせて、この壁を突破したいと思います。

「Chatwork」の周辺サービスも増加。グロースの機会も拡大していく

――ビジネスチャット周辺のサービスも増えてきていますが、グロースマーケティング部としては、どのように関与していきますか?

Chatworkグループとしての訴求が大切になると思います。中小企業の幅広い課題を解決できるようになるので、何か困ったことがあれば、いつでも相談できる存在になっていたい。「忙しくてコア業務に集中できない」という課題が顕在化していれば「Chatwork アシスタント」をオススメしますし、人事や労務関連業務の効率化を求められた場合は、グループ会社の「MINAGINE勤怠管理」を提供できます。ビジネスチャットをコミュニケーションプラットフォームとして存在させながら、課題解決の選択肢を認知してもらうことが、私たちのミッションになるでしょう。周辺サービスを合わせたグロースにおいては、LINE在籍時の経験を活かせると思います。

――田中さん自身の今後のキャリアは、どのように考えていますか?

まずはビジネスチャットの利用率を上げることが目標です。現在は20%くらいの普及率*1ですが、これをスピーディーに増加させていくことを目指したいですね。これまでは明確な勝ち筋はありませんでした。ここからは戦略をゼロから考えたり、これまでにない手法を生み出すことが求められている。チャレンジを重ねることで、自身のスキルをアップデートしていきたいです。

これまでのキャリアにおいて、迷っても一歩を踏み出すことで、新しい道が見えてきました。これまで携わってきた代理店時代の施策においても、LINEの各サービスや17LIVEのグロースにおいても、もがきながら世の中に知ってもらうことができた。Chatworkでも、成功と挫折を経験しながらサービスをグロースさせて、中小企業の働き方を変え、新しい社会をつくることに少しでも貢献できれば、と考えています。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)

*1:18.6%(当社依頼による第三者機関調べ、2023年3月調査、n=30,000)