Cha道

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Chatworkの社員数が数千人になっても揺るがない、強固なコーポレートITの体制を構築する。

コーポレートITとは、企業内の業務効率化や企業の価値向上に従事するIT人材およびその人が所属する部署のこと。基幹システムの開発・運用や各種SaaSの導入・運営、ネットワークの構築、アカウント・セキュリティ管理、ヘルプデスクなど多種多様な社内IT関連業務に関わります。

このコーポレートIT領域のスペシャリストとしてオルトプラスやスマートニュースなどで働いた後、Chatworkへと参画したのが和田 正人です。和田がコーポレートITに魅力を感じる理由や、Chatworkで目指すビジョンとは?

■プロフィール

和田 正人
コーポレート本部 CSE部 マネージャー

学生時代、ゲームにのめり込んだことをきっかけにC言語の学習を始める。プログラマー・テスターとして複数社で働いた後、システム導入や運用改善のコンサルタントとして多種多様な業種の情報システム部門に入り込んで問題解決を行う。オルトプラスやスマートニュースのコーポレートIT部門の立ち上げ・運営を担い、2022年10月にChatworkへと参画。コーポレート本部 CSE部のマネージャーを務める。

かつては技術志向の強い、尖ったエンジニアだった

――まずは和田さんがエンジニアを志した経緯からお話しください。

学生の頃の私はゲームが大好きだったので、自分でもゲームを作りたいと思いC言語の勉強をしていました。なかでも印象に残っているのは、現在もシリーズが続いている「イース」というRPGです。ゲームの面白さやクオリティが衝撃的で、「プログラマーとして働きたい」と考える原点になりました。

就職活動では、ゲーム会社だけにこだわらずC言語での開発ができる会社を探していました。大手企業に就職できましたが、研修を終えて配属されたのが、厚生労働省のシステムにおける汎用機の運用管理業務でした。その仕事がすぐに嫌になってしまったんです。

――なぜ、嫌になったのですか?

若い頃の私はかなり尖った性格をしていて、「プログラミング以外の仕事は一切やりたくない。プログラミングをもっと極めたい」と思っていました。それで、運用管理業務をするくらいならばコードを書ける仕事に転職しようと考え、半年でその会社を飛び出したんです。

転職後は、C言語のプログラマーとしてWindowsの通信ソフトや映像配信グループウェアを開発しました。その会社は最新鋭の技術を積極的に取り入れており、働いていて楽しかったですね。各種のプロジェクトのなかで特に印象に残っているのが、シリコンバレーのサンノゼに新しい開発拠点を創設することになり、現地に滞在して1年間働いたことです。

サンノゼでのプロダクト開発は当時の日本の開発スタイルとは全く異なっており、非常にモダンでした。その頃、日本ではウォーターフォール的な開発スタイルがほとんどでしたが、サンノゼではよりアジャイル的に、エンジニアが主体となって意見交換をしながらプロダクト開発を進めていました。こんな世界もあるのかと、視野を広げることができたんです。

次はやり方を変えて、派遣社員として働きました。これには理由があって、前職時代に私はサーバーを立てるインフラ関連の業務も任されましたが、知識がないので何もできなかったんです。ソフトウェアのインストールくらいはできるものの、構成や設定をどのようにすべきなのかまるでわからない。このままでは、エンジニアとして将来がないと思いました。

そこで、30歳くらいまでは派遣社員としてさまざまな企業や領域で経験を積み、幅広い知識を身につけようと考えました。全く扱えなくて悔しい思いをした最初のサーバーはMicrosoft SQL Serverだったため、Microsoftに派遣社員として参画することを決めました。最終的には、派遣社員ではなくMicrosoftの正社員になったんですけれどね。

Microsoftでは多種多様なインフラの構築に携わることができ、非常に勉強になりました。もともと私はアプリケーションのプログラミングだけをやっていましたが、インフラ領域を経験したことでITの広い領域を扱えるようになりました。

「システムだけが解決策ではない」と思えるようになった

――その次は、コンサルタントになったと伺っています。なぜキャリアチェンジをされたのですか?

MicrosoftではR&D(研究開発)系の部署にいたので、ユーザーの声をほとんど聞くことがなかったんです。自分自身が成長するために、もっと広い視野を持ちたいと思いました。その頃に、知り合いが企業の情シスに入って問題解決をするコンサルティング会社を立ち上げたので、ちょうど良いタイミングだと思って転職をしました。

その会社ではコンサルタントとして、さまざまな業種・業態の企業の業務改善に携わりました。そのなかで最も規模の大きかったプロジェクトは、世界中に拠点がある社員1万人強規模の企業における、Windows基盤の総入れ替えです。サーバーの設計・運用だけではなく、ベンダーとのコミュニケーションや経営陣へのプレゼンテーションなど、ありとあらゆる性質の業務を経験したため、相当に勉強になりました。

――コンサルタントを経験したことで、どのようなスキルが身につきましたか?

企業の問題解決のためには、現場で使われているシステムの全体像や業務フローなどを把握し、課題を特定する必要があります。コンサルタントとして働いたことでより俯瞰的に、システムや業務のことを把握できるようになりました。

これは今の仕事にも通じていることですが、“ソリューション”を考えられるようになったわけです。問題を解決する方法はシステム導入だけではありません。逆に、システムを使わずに現場のオペレーションを変えてしまうこともひとつのソリューションです。必要に応じてITではない方法も採用できるようになりました。

よく笑い話として話すことですが、おそらく若手時代の私が最も嫌いだった姿が、今の私なんです(笑)。かつてはプログラミング至上主義だったけれど、現在は「問題を解決できるならば、どんな手段でも良い」と思っている。価値観に大きな変化がありましたね。

スタートアップ2社でコーポレートITの立ち上げを経験

――その後は、ソーシャルゲームを扱うオルトプラスに転職されたとか。

オルトプラスではコーポレートITの立ち上げに携わりました。コンサルタントはクライアント企業の問題を解決することが仕事で、その役割を終えるとプロジェクトから抜けます。でも、「問題解決してそれで終わり」ではなく「自分の知見やスキルを活かして、会社の成長に貢献し続けたい」と思うようになったんです。その経験ができる場として、当時まだ設立して間もないオルトプラスを選びました。

私はプログラミングもネットワーク構築も、サーバー構築もできます。どうせならば、すでにある程度の仕組みが完成したところではなく、ゼロイチの立ち上げを経験できる場所で自分の強みを活かしてみたいと思いました。

――オルトプラス時代の経験で特に印象に残っているエピソードはありますか?

すごいスピードで会社が成長していたので、それに合わせて体制を作る必要がありました。あるときには、オフィスで数十人くらいが働くと事前に聞いていて、それに合わせたネットワーク構成にしていたのですが、ふたを開けてみると予定の何倍もの人が入ったこともありました。ルーターが高負荷で動かなくなり、大失敗でしたね。そういったトラブルが起きないように、先回りして手を打つことがコーポレートITでは重要だと痛感しました。

それから、会社が上場を迎えたり、ベトナムのハノイにオフィスを作るために現地に行って日本とは異なる文化や価値観に触れたりと、成長期のスタートアップならではの貴重な経験が数多くできました。

オルトプラスで経験を積んだ後は、スマートニュースに移りました。当時は社員数が80人くらいで、資金調達はしたもののまだコーポレートITの部門もなく、これから人をどんどん増やしていこうというフェーズでした。

スマートニュースでは、オルトプラス以上に「企業の黎明期からの立ち上げ」を経験できたように思います。入社して間もない頃に、サーバールームに行くとダンボール置き場のような状態で足の踏み場もなくて、その片付けから始めました(笑)。

社内のネットワークの整備から社員に配布するパソコンの運用ルールの策定、入退社の管理など本当になんでもやりましたよ。そのうち、あれよあれよという間にグローバルで従業員1,000人規模の会社に成長しましたね。スマートニュースのキャリア後半では、私がコーポレートIT部門のマネージャーを担うようになりました。

――規模の大きな会社のコーポレートITで、気をつけるべきことはありますか?

小規模な会社と比較すると、解決の手段が異なるように思います。「コーポレートIT部門のメンバーが属人的な方法で頑張る」という手段で通用するのは、社員規模300名くらいまでです。それ以上の規模になると、組織の拡大を前提としてコーポレートITの運用設計や体制構築の方法を考えなければ、企業が内部崩壊してしまいます。目先の運用だけを考えるのではなく、中長期的な目線で仕組み化に力を入れなければなりません。

成長を続けるChatworkでコーポレートITの知見を活かしたい

――コーポレートITの業務において、大切にしている考え方はありますか?

昔から考え方の軸は変わっていなくて、守りの目標と攻めの目標があります。守りの目標は、ヒマなコーポレートIT部門を作ること。インフラをつかさどるチームは、どのような事態が起きても絶対に慌ててはならないと思っています。発生し得るさまざまな事態に備えて、先回りして対応策を準備しておけるヒマなチームでありたいです。

攻めの目標は、お金を稼ぐコーポレートIT部門です。コーポレートITがコスト部門と言われてしまうのは避けたいです。たとえば、自社の持つノウハウをもとに他社の手助けをするとか、自社のシステムを他社にも利用してもらうなど、なんらかの方法で売り上げに貢献できる組織でありたいと考えています。

――それらの要素は、Chatworkに転職した理由にもつながりますか?

そうですね。もともとコミュニケーションツールの「Chatwork」をオルトプラス時代に利用して知っており、転職を考えているときにエージェントから紹介を受けました。Chatworkはこれから会社として大きくなっていくフェーズだったため、私のこれまでの経験を活かしたチャレンジができそうだと思いました。

さらに、ChatworkはDX推進に課題を感じている中小企業に対して、業務プロセスそのものを提供するBPaaSを軸として本質的なDXを実現しようとしています*1

ほとんどの会社のコーポレートIT部門は共通した悩みを抱えているので、私がこれまで培ってきたノウハウなどを、そうした課題の解決のために活用できるのではないかと考えたんです。これは“お金を稼ぐコーポレートIT部門”という目標につながってきますね。 

――現在の和田さんのChatworkでの役割について教えてください。

コーポレート本部のCSE部のマネージャーを担当しています。CSE部とはコーポレートソリューションエンジニアリングの略で、今回のインタビューに出てきたようなコーポレートITを担う部署です。

CSE部には3つのチームがあります。まずはコーポレートITチームで、SaaSの導入・管理、入退社時の処理など、いわゆる情報システム業務を担います。

次がIT統制チームで、セキュリティ関連のルール策定・実施、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの資格の取得・運用などをつかさどっています。さまざまな部署とコミュニケーションを取りつつ、セキュリティや個人情報保護などのルールが守られているかを見ています。*2

もうひとつが開発チームで、社内のさまざまなサービスを連携するようなツールや社内システムなどを開発・運用しています。

――今後、実現したいことはありますか?

これから、Chatworkはさらに会社として成長しますし、M&Aなどを行うことで扱う事業領域も広がっていきます。おそらく、今年から来年にかけてが、ひとつの組織拡大の節目になってくるだろうと考えています。そして人が増えていくと、その影響を最もダイレクトに受けるのがコーポレート部門やHR部門です。

現在はChatworkの社内体制で効率化できている部分とそうでない部分とがあるため、今のうちに手を入れておく必要があります。それを実現するうえでも、CSE部に開発チームがあるのはすごく効果的なんですよね。要するに、特定の業務を自動化したり、システム同士の連携を強めたりといったことに、開発チームがあることで取り組みやすいんです。これは、ChatworkのコーポレートITの強みだと思っています。

――他の会社のコーポレートIT部門ではなく、Chatworkのコーポレート本部のCSE部で働く良さはどのような点にあると思われますか?

Chatworkは事業拡大期にあり、非常に面白いフェーズだと感じます。私自身は、このタイミングで会社に入れたのはとてもラッキーでした。それから、CSE部にはコーポレートITチームとIT統制チーム、開発チームという役割の異なるチームがあるので、相互で協力し合いながら、さまざまなことを実現できる体制なのが非常に良いと思います。

今後はより事業内容も増えていき、社員数もより一層増加していくと思います。規模が1,000人とか2,000人になっても揺るがないようなスケールする仕組みや体制を構築していきたいです。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)

*1:関連記事:BPaaSの仕組みを知らずして、SaaSの進化は語れない──ChatworkのCEO・COOが語る、ビジネスチャット×PLG×BPaaSという戦略の結節点とは

*2:IT統制チームは、プロダクト本部で担っていたプロダクトセキュリティと統合し、4月から「セキュリティ室」として再編されました(引き続き協力しながらセキュリティに取り組んでいきます)