Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

15年間のヘルプデスク・カスタマーサクセス経験で、たどり着いた境地。電話越しにお客様の人柄を見つめて、フラットに力になる。

2008年に大学を卒業。15年に渡って一貫して、ヘルプデスクやカスタマーサクセス業務に従事してきた笠原。電話越しにお客様の声を聞いて、その要望に答え続けながら、あらゆる提案を行ってきました。その道のりで学んできた、「カスタマーサクセスのあるべき姿」や「成果を生み出すために必要なもの」は何なのか。根掘り葉掘り、詳しく聞きました。

■プロフィール

笠原 慶之
コミュニケーションプラットフォーム本部
セールス・カスタマーサクセスユニット カスタマーサクセス部 CSMチーム

大学時代にオーストラリアのパースに留学。2008年4月にベネッセコーポレーショングループのIT関連企業、シンフォーム(当時)に新卒入社。ヘルプデスクとしてキャリアをスタート。2013年5月、営業支援システムを展開するソフトブレーンに転職。ヘルプデスクやカスタマーサクセス部署に所属した。2021年5月にChatworkに入社。カスタマーサクセス部門でリーダーを務めている。

留学先でのコミュニケーションが、カスタマーサクセスの原点になった

――今のキャリアにつながっている原体験を教えてください。

苦手な英語を克服し、自分の武器に変えるためにオーストラリアのパースに留学しました。アルバイトで費用を貯めて、半年間滞在。滞在先のホストファミリーでの体験がキャリアの原体験になっています。最初は家事をやってもらっていたのですが、英語に習熟してからは、私も手伝うように。すると、心理的な距離が一気に縮まって、生活が一変しました。お互い何でも話せるようになり、毎日が楽しくなった。一歩踏み込んだコミュニケーションによって、新しい空間がそこに生まれたのです。

カスタマーサクセスの仕事も似ています。たとえ電話での会話であっても、コミュニケーションの中でお客様との心理的な距離が縮まると、そこに新しい空間が生まれる。お互いに有意義な時間を過ごせて、商談の成功確率もぐっと上がります。そのような「場」を作ることに、今でも注力していますね。

入社後の試験で、SEよりもヘルプデスクに適性があると判断されて、配属になった

――1社目のシンフォーム社には、どのような経緯で入社しましたか?

もともとは、英語を使う仕事に就きたいと思っていたのですが、TOEICの点数的に厳しかった。そこで、自分がどのような仕事が向いているのか、改めて考えたところ、自分から前に出るのではなく、人をサポートすることが好きだと気づきました。そこで、伸びているIT業界でSE職を志望して、1社目のシンフォームに入社しました。ベネッセの子会社で、安定して働けることも魅力でしたね。両親にも喜んでもらえました。

SE職を希望したのですが、配属の適性を決めるテストの結果によって、ヘルプデスクとしてキャリアがスタート。テストでフローチャートを描く問題が全く解けなかったので、SEには向いていないと判断されたのです(笑)。人事の方に「笠原君はシステムの知識があまり無い方たちの視点を持てるので、ヘルプデスクに向いていると思うよ」と言っていただき、そのまま配属になりました。この時のテストの結果と人事の判断が、私のキャリアを決定づけたと言っても、過言ではありません。今では、ヘルプデスクやカスタマーサクセスでキャリアを重ねてきて、本当に良かったと思っているので、感謝しています。

自分でも多くの問題を添削して、新システムのQ&Aを策定

――シンフォーム社で、転機になったプロジェクトはありますか?

今でも強く印象に残っていて、かつ、退職理由につながったプロジェクトがあります。シンフォーム社では、ベネッセが展開する通信教材のシステムの保守・運用を担っていたのですが、添削者向けのシステムがリニューアルされました。その仕様に合わせたQ&Aのページや、ヘルプデスクのガイドライン・トークスクリプトの作成を任されたのです。添削者がシステム上で点数を入力したり、採点プロセスを動画で収録したりと、かなり多機能なシステムに生まれ変わる予定でした。

説明が無い状態で添削者が使いこなすのは難しいと感じて、まずはQ&Aを充実させました。私自身でも添削作業を行い、問題になりそうな箇所をピックアップ。Q&Aのコンテンツでは、テキストだけではなく、画像や動画を用いて、丁寧に説明するように心掛けました。ガイドラインやトークスクリプトは従来のものを活かしつつ、細かいブラッシュアップを重ねました。教材は小学生、中学生、高校生が対象で、さらに科目やレベルごとに分かれているので、膨大なパターンがあります。それぞれに対応できるように、細かい仕様調整を重ねることで、多くの添削者の不安を解消できるものに仕上がった。そう自負しています。相手の疑問や不安を想定して、先回りして解決することの大切さを学んだプロジェクトでもありましたね。

しかし、親会社との契約更新のタイミングで、このシステムのヘルプデスク機能が他社に移管されることになりました。私が中心となって立ち上げたヘルプデスクが、他に移ってしまうのは、正直に言えば辛かったです。他のシステムのヘルプデスクチームへの異動も考えましたが、東京拠点で運営しているものが少なく、シンフォームでの勤務を続けるのは難しいと判断しました。そして、退職を決意したのです。

お客様の言葉の奥にある、本当のニーズに触れる

――そして、2013年、ソフトブレーンに入社します。こちらの会社を選んだ理由を教えてください。

転職活動をする前から気になっていた会社でした。ビジネス書で取り上げられているのを目にしていて、「属人的な営業活動をシステム化する」というミッションに興味を持っていました。システムを扱う人間として、既存の業務がよりスマートになることに関心がありましたね。加えて、自社でシステム開発・運営を担っていることも魅力的でした。ヘルプデスクの立場で改善するべき点を見つけたら、すぐにエンジニアに伝えることができる。自らもプロダクト開発に関わりたいとも感じていました。

入社2年目に入ると、ヘルプデスクとしてトップクラスの評価をいただくようになりました。前職での経験が大いに活きていて、一人のお客様に掛かる対応時間を少なくすることで、部署でトップの対応件数を記録しました。それに加えて、お客様からも非常に高い評価をいただきました。「短い時間で有益な情報を与える」ことを、シンフォームでは徹底的に学んでいたので、そのスキルを発揮することができました。

――効率良く対応しながら、満足度を上げるのは難しいと思いますが、どのように実現していたのですか?

お客様の言葉の奥にある、本当のニーズに触れることを大切にしていました。お客様がおっしゃることに対して、そのまま反応するのではなく、とにかく真摯に傾聴を重ねて、根っこにある問題を引き出します。こちらからも仮説をぶつけながら聞いていると、相手の困っていることが、映像として脳内に再現される瞬間が訪れるのです。

お客様のシステム環境に私も入りながら、課題を可視化することで、さらにスムーズにやり取りすることができました。お互いに課題を共有した後に、丁寧に解決策を伝えることで、お客様から高い評価をいただくことができたと思っています。

ヘルプデスクからカスタマーサクセスへと異動。コミュニケーションが全く違う

――その後、カスタマーサクセスへと所属部署が変更になります。

カスタマーサクセスの部署で追加の人員が必要になって、ヘルプデスクから移りました。上司からの勧めがあり、新たなフィールドで知見を活かしたいと思い、異動したのです。ヘルプデスクとカスタマーサクセスでは、お客様とのコミュニケーションの内容が全く異なり、当初は苦労しましたね。

ヘルプデスクは、何かに困っているお客様からの問い合わせから、やり取りが始まります。その悩みの解決が、コミュニケーションのゴールです。カスタマーサクセスは、私の方から「何か困っていることはありませんか?」と働き掛けることからスタートします。潜在的な課題を引き出しながら、その解決と自社商材のアップセルがゴールになります。営業的な要素も強いことが、カスタマーサクセスのコミュニケーションの特徴です。

ヘルプデスクでは、商材であるシステムを理解していれば対応は可能でしたが、カスタマーサクセスはそれだけでは難しい。相手の業務を理解した上で、その改善の提案をセットで行わないと、追加でお金をいただくことはできません。お客様の業種もシステムの活用手法も様々なので、事前準備でカバーできることにも限界があります。短い商談時間の中で、お客様の業務についても把握しながら、頭の中で解決策を立案して、その場で提案することが必要です。私は10年以上、一貫してヘルプデスクとして活動してきたので、頭を切り替えるのに時間が掛かりました。

カスタマーサクセスを極めるためにChatworkへ

――そして、2021年5月にChatworkにジョインします。動機と経緯を教えてください。

カスタマーサクセスの仕事を、より極めたくなったからです。ソフトブレーンでの仕事にやりがいを感じてはいましたが、当時はシステム面の対応に時間を取られることも多く、お客様への提案に注力することが難しいこともありました。そこで、多くのお客様が使っていて、技術的にも信頼性の高いプロダクトを扱っている会社を探したところ、出会ったのがChatworkだったのです。前職の同僚だった大河内さんの紹介がきっかけとなって、カスタマーサクセスの仕事内容を入社前に知ることができたのも決め手になりました。

入社後は、カスタマーサクセス部に所属しています。プリセールスを経験後、アカウントの追加獲得を目的としたカスタマーサクセスを経て、現在はオンボーディングのチームでリーダーを務めています。プリセールスは受注前のお客様に対して、「Chatwork」の活用手法を提案して有料化に結びつけるチームです。オンボーディングは、受注後のお客様の早期立ち上げをサポートする部隊になります。

今でも「短い商談の時間内で、できるだけ多くの有益な情報を提供する」ことを心掛けています。シンフォームやソフトブレーンで培ってきた仕事のスタンスを、Chatworkでも大切にしていますね。「お客様の時間を奪っている」意識を常に持ちながら、「それに対するメリットを提供する」ことを、いつも心のどこかでは考えています。「笠原さんとの時間で多くのものをもらった」と、どのお客様にも感じて欲しいのです。

商談の前に、お客様の「人となり」をじっと見つめる

――お客様に有益な情報を提供するために、必要なことは何ですか?

まずは相手の性格や特徴を把握すること。あくまでビジネスの会話の場ではありますが、「相手の人となり」を見ることが大切です。話すのが好きなのか、聞くことが好きなのか。速いコミュニケーションが好きなのか、ゆっくりが好きなのか、「Chatwork」やIT商材に対する関心度は高いのか、低いのか、などを感じながら商談を進めていきます。そこで、お客様のご年齢も重要な要素になります。20代のお客様と60代のお客様では、デジタルツールに対する慣れや、自社内でのポジションや発言権の大きさが異なることが多い。それぞれに応じたコミュニケーションが求められます。

もう一つ心掛けていることは、相手に話していただく時間をできるだけ長くすること。そのために、自由に回答できる「オープン・クエスチョン」と、「はい」「いいえ」で答える「クローズド・クエスチョン」を使い分けることを意識しています。オープン・クエスチョンをメインに聞くことで、相手の発言量は必然的に増えます。ただ、難しい質問を投げ掛ける場合は、クローズド・クエスチョンの方が答えやすい。これらを組み合わせることで、情報量の多い会話をスムーズに交わしながら、真のニーズに触れることができるのです。

事前の準備として、インサイドセールスからの情報には徹底的に目を通します。入力されたテキストや録音された会話内容から、仮説を立てることができる。また、お客様の話し方から、パーソナリティを類推することも可能です。

お客様のためなら、「Chatwork」以外のツールを提案することも許される

――お客様の性格と課題を把握した後に、こちらからの提案を行います。そこで心掛けていることはありますか?

“3歩先の話をしない”ことです。「業務を一気に効率できます!」とお伝えするのではなく、現実的に実現可能な打ち手からご提案していきます。「半歩先」や「1歩先」くらいに留めておくのが、ベストだと思いますね。「Chatwork」はコミュニケーションツールで、活用手法は多岐に渡ります。「グループチャットを作る」レベルから、「チャットでの会話量や内容を分析して組織課題の解決に活かす」レベルまで、あらゆる事例を持つツールです。目の前のお客様にとって「これくらいだったら、すぐにでも試すことができる」というレベルはどこにあるのか、会話の中で見極めながら、商談を進めていきます。

加えて、「フラットに接すること」を心掛けています。アップセルのチームに所属していたときも、自社都合での営業はしませんでした。あくまでお客様の課題にフラットに向き合うことを、常に意識していましたね。私たちは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションを掲げています。お客様の働き方が効率化されるのであれば、場合によっては、「Chatwork」以外のツールを提案することもありました。当時の上司には逆に褒められましたね。

――特に印象に残っているお客様はありますか?

2社あります。どちらも介護事業者のお客様です。介護の現場では、まだまだペーパーレス化が進んでいません。たとえば、日勤と夜勤の引き継ぎ時にも、申し送り事項を紙の書類に書いて受け渡すこともあります。文字が読みづらかったり、紛失することもあるので、「Chatwork」上でデジタル化することで一気に効率化が進みました。外出先でもチェックできるようになり、データの紛失やセキュリティのリスクを低減することができて、お客様に喜んでいただけました。

開発部門との距離が近い。プロダクトの改善にも貢献できる

――これまでの業務を振り返って、Chatworkのカスタマーサクセスの仕事の面白さはどこにあると感じていますか?

まずは、約600万人*1のお客様に利用いただいている規模感が、非常に魅力的ですね。単純にお客様にご提案できるチャンスが多いですし、幅広いお客様がいらっしゃって、人生の勉強にもなる。現場の課題に触れることができるので、知識量がどんどん増えていきます。たとえば、家族と街に買い物に行ったときに、物流トラックを見かけると、「このトラックはルート配送だね」「中距離を担当しているので大変なんだよ」など、話をしています(笑)。経済に関する知識・関心が高まったのは、自分でも感じますね。

また、社内の風土がフラットで、他部門の人ともチャットで気軽に相談できます。カスタマーサクセスは、お客様と最前線で接する部署です。一度ではなく、お客様が解約するまではコミュニケーションが続くので、それぞれの現場における「Chatwork」の活用状況の変化もつかんでいます。この情報はプロダクト開発において、非常に価値の高いものです。私たちがつかんだ顧客ニーズを開発部門にフィードバックすることで、プロダクトのブラッシュアップにつなげることも、私たちの重要な役割の一つです。

お客様との日々の接点から、この国の働き方をアップデートしていく

――最後に、今後のキャリアの展望について、どのように考えていますか?

ヘルプデスクやカスタマーサクセスとして、約15年のキャリアを重ねてきました。振り返ると、「目の前のお客様に対して、短い時間で少しでも役に立ちたい」という想いだけで、日々を積み重ねてきた気がしています。おそらくその姿勢は変えずに、この仕事を続けていくと思います。

「Chatwork」を使っていただいているお客様の多くは、中小企業の皆様です。日本の企業で90%以上を占めるのが中小企業です。従業員の方々がより気持ち良く働けるために、私たちカスタマーサクセスは日々の接点を持ち続けています。そこで有益な情報を提供し続けることで、多くの職場が働きやすくなるはず。その積み重ねによって、この国の未来に貢献していきたいです。

Chatworkは、今後も急成長を遂げると思います。中小企業のあらゆる働き方の課題を解決するために、続々と新規事業も立ち上がっています。10年〜20年先には、今とは全く異なる世界が形になっているでしょう。たとえば、高齢者が「Chatwork」を起動したら自動音声で会話が始まり、色々なツールとつながって、健康状況を把握できたり、外から安否確認ができるようになったり…。個人的に「Chatwork」は、働く現場だけでなく、生活の現場でも欠かせないツールになる可能性も十分にあると思っています。そのためにも、日々のお客様と直接の接点を担う、私たちのチームが果たすべき役割は大きい。そう信じて、目の前のお客様に向き合い続けます。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)

*1:ID数:596.8万人(2023年3月末時点)