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ベネッセ、エス・エム・エスで乗り越えた数々の修羅場。セールス責任者として、年平均成長率40%に立ち向かう。

大学時代にマスマーケティングを専攻したが、電話を使うテレマーケティングの世界に飛び込んだ飯田。ベネッセなどでコールセンターのマネジメント業務を約15年に渡って務めた。そして、エス・エム・エスに転職し、介護事業者向けSaaSのグロースに参画。リーマンショックでの事業縮小や、値上げによる顧客のクレーム対応を乗り越えて、多くのことを学んできました。Chatworkでは、年平均40%の成長を牽引するセールスとカスタマーサクセス組織をリード。組織戦略の立案やその実行において心掛けていること、そして描いている未来について聞きました。

■プロフィール

飯田 洋介
ビジネス本部カスタマーエクスペリエンスユニット
セールス&サクセス部 マネージャー

埼玉で生まれ、静岡で育つ。立命館大学産業社会学部を卒業し、1999年4月に大手テレマーケティング会社のTMJに入社。コールセンターのマネジメント業務や法人営業を担当。2006年、親会社(当時)のベネッセコーポレーションに移籍。教育関連事業のテレマーケティング組織の責任者を務める。2014年、医療・介護系の人材ビジネスを展開するエス・エム・エスに転職。介護事業者向けSaaS「カイポケ」のグロースに貢献。2021年4月にChatworkにジョイン。セールスとカスタマーサクセス部門のマネージャーを務めている。

新卒で飛び込んだのは、大手企業のコールセンター。そこで数字の大切さをたたき込まれた

――セールスやマーケティングに興味を持ったキッカケを教えてください。

京都の立命館大学に通い、産業社会学部でマーケティングのゼミに所属していました。マスマーケティングを勉強していたのですが、就職活動の中でダイレクトマーケティング、その中でも特にテレマーケティングに興味を持ちました。マスのように一方的に大衆に情報を流すのではなく、リアルタイム・インタラクティブに見込み顧客と電話で直接やりとりできるのは「新しい」と感じたのです。そのようなマーケティングの世界に飛び込んでみたいと思い、大手テレマーケティング会社のTMJに入社したのです。

新卒で入社してから3年に渡って、コールセンターの現場でのマネジメント業務を経験しました。50名くらいのチームで、配属されている正社員は私と先輩だけ。この先輩に鍛えられて、テレマーケティングの専門家として生きていくために、必要なスキルを身につけることができました。

例えば、数字に対する考察力。あるオペレーターが1日に「100件」の電話を受けたとします。この数字から何を見出すのか。「100件」の意味合いは何なのか。そのオペレーターが常に100件の電話を受けているケースと、成長途上でたまたま100件を受けたケースでは、見えてくる課題やそれに対する打ち手が異なります。そこをとことん考えるのです。TMJには、科学的なマネジメントを重視するカルチャーが根付いていたので、新人時代から日々数字に触れることを余儀なくされました。50名一人ひとりの業績に毎日向き合い続けることで、考察力や洞察力が身についたのです。

10代の学生と50代の主婦。それぞれに伝わる言葉を紡ぎ出す

――確かに、日々の業務を数字で管理するためには、考察力が必要になりますよね。

そして、もう1つ。「人に対する伝え方」も勉強になりました。マネジメント業務において、人を動かして成果を達成することは最重要項目の1つ。その原理原則をこの3年間で刷り込まれました。コールセンターには10代の学生から50代の主婦(夫)まで、様々なスタッフが在籍しています。働くモチベーションや人生経験にも幅があるチームで、着実に成果を上げていくには、それぞれのメンバーに伝わる言葉で、丁寧にコミュニケーションを取ることが肝要です。

50名のスタッフ一人ひとりのKPIの達成に向けて、「個人KPIレポート」というツールを通して個別にコミュニケーションを図っていました。業務改善のアドバイスを私が書いていたのですが、その内容や言葉遣いに対して、先輩社員から何度も指摘されました。一人ひとりのスタッフに対して課題を正しく設定するだけではなく、その解決のための行動を、本人に伝わる言葉で指示をする必要があります。50名全員のコメントに先輩からOKをもらえるまで、7〜8回に渡って修正案を提出していました。「課題の分析が浅い」「言葉が練られていない」とダメ出しの嵐で…。ただ、苦しんだ分だけ成果が出たのも事実です。その1行のコメントに魂を込めることで、明らかにパフォーマンスが変わる人も出てきました。新人時代に学んだことが、現在のマネジメント業務においても、大きなよりどころになっていますね。

ベネッセに移ってほどなく、リーマンショックが起こる。経営陣から受けた叱責が、仕事への意識を変えた

――TMJの次はベネッセコーポレーションに移っています。その背景を教えてください。

2006年、TMJの親会社であったベネッセに事業が移管されたので、私もそのまま移りました。ベネッセは、郵送DMによるダイレクトマーケティングに大きな強みを持つ会社だったのですが、テレマーケティングの機能を強化するために、TMJの事業を吸収したのです。私は同じくセールス機能のコールセンターのマネージャーを務めました。社員が3〜40名、アルバイトが百数十名も在籍している大きな組織を担当しました。

そして、2008年、リーマンショックが起こります。コールセンターへの投資を削減する方針が出されました。私は経営陣に対して「現在と同じレベルのサービスを提供するためには、予算を維持する必要があります」と提案しました。経営陣は私の危機感の薄さを厳しく叱責。悔しくて、悔しくて、自分の甘さを痛感しました。そのときに初めて、経営者の目線を意識できました。自部署の成果だけを考えるのではなく、他の部署も俯瞰して見る必要がある。その全体最適の視点を持つことが、会社全体、ひいては自部署の発展にもつながる。仕事に向き合う意識がガラリと変わった瞬間でした。

コールセンターの集約化と新しい業務フローを導入することで、ベネッセのマーケティングスタイルを変革した

――リーマンショック後はどのようなプロジェクトを進めたのでしょうか?

その後、リーマンショックや個人情報保護法の改正によって、ベネッセの得意としていた郵送DMの返信率が下降していきました。電話を主体とするテレマーケティングへの期待感が高まる中、コールセンターの業務効率化と成果の向上を図るために、2つの大規模な打ち手を実行しました。1つは、コールセンターの集約化です。リーマンショックで学んだ教訓を活かして、組織の大胆な集約化に挑みました。メインとなるコールセンター数社に業務を集中させて、内部で運営していたコールセンターはクローズ。社内スタッフは外注のマネジメントに特化することで、組織のスリム化と業務の効率化を実現しました。

そして2つ目の打ち手として、新しい組織体系に合わせて業務フローを再構築しました。組織をスリム化するのと同時に、消費者へのコンタクト数は増やさなければなりません。当時、年間数百万件の架電を行っていたのですが、その数を拡大することも念頭にいれ、全く新しい業務フローを現場に実装していきました。郵送DMからテレマーケティングへと、カルチャーを転換する仕事でもありましたから、かなり苦労しましたね。

――どうして、そこまでの困難を乗り越えようとしたのでしょうか?

ベネッセの教育事業の成長に、自らの手で関与したかったからです。自分が所属している会社が、時代の変化に取り残されるのは耐えられない。テレマーケティングの新しい可能性を、これだけの大規模な会社で追求したかった想いもありました。年間数百万人に直接アプローチできる会社は多くありません。自分のもとに集った40名のメンバーに、ベネッセの新しい柱を担って欲しかったのです。

エス・エム・エスに転職。北海道日高の山奥にまで、顧客への説明に赴く

――そして、次のキャリアへと移るタイミングはいつでしたか?

TMJからベネッセに移籍し、合計で15年が経過したときに、初めての転職を経験しました。大企業でのテレマーケティング畑でのキャリアを一貫して歩んできたのですが、違うフィールドで自分の力を試したくて、エス・エム・エスに転職しました。医療や介護業界向けの人材ビジネスをメインで展開している会社です。当時は、介護事業者向けの経営支援サービス「カイポケ」がリニューアルされたタイミング。2014年、そのグロースのためにジョインしました。

メインの業務はCRM、今で言うカスタマーサクセス担当でしたが、小さな組織だったのでプロダクト開発にも積極的に関与しました。各担当との連携を図りながら、新しいプロダクトの価値を顧客に伝えていくのがミッションでした。やるべきことをすぐに実行に移せるのは気持ち良かったです。

ただ、すぐにベンチャー組織の洗礼を浴びることに。入社後ほどなくして、「カイポケ」の利用料金の値上げが行われました。少額の値上げであれば、お客様対応は難しくないと思いますが、約7倍の値上げを実施したのです。「何でここまで値上げするんだ!」「解約の方法を教えろ!」とお客様からクレームを嵐のようにいただき、コールセンターはパンクしてしまいました。チーム一丸となって誠心誠意の対応をすることで、想定よりもユーザー数の減少を抑えられたのですが、あのときの大変さは忘れられません(笑)。

さらに、その8ヶ月後に第2弾の値上げが行われることに。信頼を失うわけにはいかないので、千数社のお客様に対して、こちらから対面か電話での説明を行いました。私自身は、北海道の日高の山奥にある事業所にも伺いました。あのような経験は後にも先にもありません。遠方まで出向いてお客様の表情に直に触れることによって、得られたものは大きかったです。どのような気持ちで「カイポケ」を使ってくださっているのか、痛いほど生で感じることができましたから。

そのときに得られた感覚が、その後の仕事においてもベースになりました。値上げ対応後は、事業のグロースに注力。インサイドセールス組織の立ち上げや、全国各地の事業所組織をダイレクト(フィールド)セールス組織として再構築したり、非対面カスタマーサクセス組織を立ち上げ・拡張させていくことで、「カイポケ」を業界随一のサービスに成長させることができたのです。

年平均40%の成長率で、2024年に100億円の売上を目指す。チャレンジングな目標に惹かれて、Chatworkに入社した

――そして、2021年4月にChatworkにジョインしましたが、その理由を教えてください。

Chatworkに入社した理由は、エス・エム・エスでのグロースの経験を活かして、他の会社でも事業成長を再現したかったからです。「カイポケ」では、7年間で、20億円弱の売り上げを60億円まで伸ばすことに貢献できました。もちろん自分だけの頑張りではありませんが、そのプロセスが思いのほか楽しかったのです。その経験をもう一度味わいたい。エス・エム・エスで学んだことを活かせば、もっと速く・大きなグロースが実現できるはずだ。そういった想いを抱えて、Chatworkにジョインしたのです。

他社も検討しましたが、Chatworkの事業フェーズと戦略が、私の志向に最もフィットしました。私が入社したのは2021年4月ですが、「年平均40%の成長率で、2024年度に全社で100億円の売上高を目指す」という中期計画を掲げていました。弊社CEOのブログ(https://note.com/cwmasaki/n/na40742a81682)でも触れられていますが、この目標はかなりチャレンジングです。「カイポケ」の年平均成長率は20%前後で、それでもとても大変なこと、苦しいことが多かった。その半分くらいの時間軸で、倍の成長率を目指すのですから、私の中では前人未踏の領域です。ただし、荒唐無稽な目標では一切なく、綿密な戦略が描かれていた。大きな目標に対して真っ当に挑戦できる環境が、非常に魅力的に映りましたね。目標数字や時間軸の置き方も絶妙でした。仮に「2030年度に100億円」であれば、私はこの会社を選んでいません。

ミッションは「セールス・カスタマーサクセスを強くする」こと。10名規模のチームを、3〜4名の小集団に分割

――Chatworkに入社後、どのような業務を担当していますか?

ミッションは「セールス・カスタマーサクセスを強くする」ことです。セールスは、最初の顧客接点を担う「インサイドセールス」と、商談とクロージングを担当する「フィールドセールス」に分かれていますが、それぞれの課題を抽出して、それを埋めることに尽力しています。2021年4月の入社当時は約30名の組織でしたが、現在では約50名にまで増員されました。加えて、現在ではカスタマーサクセスチームも含めたマネジメント業務に携わっています。

――どのようなアプローチで、セールスチームの課題を解決したのですか?

TMJ、ベネッセ、エス・エム・エスで培った手法を活かしています。大まかに言えば、1年後の組織の「あるべき状態」を明確に描いて、そこに至るまでの戦略を設定します。想定外のことが起きれば、優先順位を入れ替えて対応する流れです。

私が注力してきたのが、セールスのチーム編成を見直して、マネジメントの単位を再構築したこと。以前は大まかに言えば10名で1チームという構成だったのですが、3〜4名の小集団に分割しました。それぞれのチームに活動のテーマを担ってもらい、アジャイルに実行してもらっています。体制を変更することで、PDCAのスピードが一気に加速。若手にチームリーダーを任せることによって、人材育成面でも成果を挙げることができました。私自身の関与はまだまだこれからですが、2021年度は47.9%の成長率を記録しています。

やはり細かい解像度で現場を把握した上でマネジメントを行うのは、セールスやインサイドセールスのチームでは重要だと思います。TMJでのコールセンタースタッフ向けの「改善コメント」で学んだことが活きていますね。

メンバーのキャリアの転換点になる組織に。「人材輩出部署」としての存在感を高める

――飯田さんがChatworkに入社してまだ1年ほどではありますが、この後の目標を教えてください。

2024年に100億円の売上目標を達成した後も、成長を続ける組織にすることが大きな目標です。そのためには、チームリーダーへの働きかけを行うことで彼らの成長を促し、リーダーから事業全体を見ることのできるマネージャーへと脱皮してもらう必要があると感じています。その過程において、彼らの下につくメンバーも引っ張られて成長していく。どんなに洗練された仕組みがあっても、それを活用して成果につなげるのは「人の力」以外にはありません。

Chatworkのセールスやカスタマーサクセスはまだまだ若い組織です。優秀なメンバーが揃っていて、一人ひとりのポテンシャルは、私が在籍してきたどの会社よりも大きいと感じています。魅力的なテーマを与えて、全員の能力を解放することで、事業とメンバーの成長につなげていくのが、私の責務なのです。

そうすることで、メンバーのキャリアの転換点になる組織をつくることができるはず。SaaSのセールスやカスタマーサクセスの領域で、専門的な知見を持っている人はまだまだ少ない。現在のフェーズのChatworkで3年の経験を積めば、おそらく人材市場では“引く手あまた”になっているはず。「あの急成長期のChatworkでセールスやカスタマーサクセスをやっていたのですか」とメンバーが言われる未来を実現したいのです。

社内でも、昨年は8名のスタッフが別部署に異動したのですが、セールス・カスタマーサクセスで学んだスキルを発揮して活躍してくれています。今後、さらに事業領域を拡大していくChatwork。「人材輩出部署」としての存在感を社内で高めることで、様々な非連続なチャレンジの機会を提供できる。そう考えています。

ユーザー数1000万人、次々に生まれる新規事業。想像が追いつかない未来が待っている

――飯田さんご本人の今後のキャリアは、どのようにイメージしていますか?

セールスやカスタマーサクセスの領域にとどまらず、より事業に貢献できるケイパビリティを身につけていきたいですね。まずは小さくてもいいので、事業全体を見られるようになるのが当面の目標です。Chatworkという会社は、ビジネスチャットを軸に様々な事業が立ち上がっていくので、このタイミングは大きなチャンスだと捉えています。

正直、2025年以降のChatworkがどうなっているのか、想像するのは難しいですね。採用を加速することで、様々なスキルを持つ優秀な方が既にジョインいただいていますし、ユーザー数も1000万人を超えるでしょう。そうなると巨大なコミュニケーションインフラを中心に、多くの事業が生まれているのは間違いないですね。既にその兆しは見えつつあるのですが、非常に面白い未来が待っていると感じています。そこに自分がどう関与しているのか、想像がつかない。それくらい非連続で刺激的な環境は、他には無いと思いますね。

 

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)