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2人の法務が、日本の中小企業の生産性を向上させる。本気でそう思っている。

大企業やベンチャー企業での法務経験を経て、Chatworkにジョインした慶野と平山。中小企業向けのDX支援サービスなど、次々と新規事業が立ち上がる中で、どのようにその成長に関与しているのか。チームリーダーとして、法務部門を牽引している2人に聞いてみました。

■プロフィール

慶野 江美
コーポレート本部 法務総務部 事業法務チーム チームリーダー

看護師の資格を取得した後に、ロースクールに進学。シナジーマーケティングに入社して、法務を軸にバックオフィス業務を幅広く経験。その後、ベンチャー企業での法務経験を経て、2021年6月にChatworkに入社。

平山 有輝子
コーポレート本部 法務総務部 総務・商事法務チーム チームリーダー

パナソニックで知財業務を担当後、ロースクールに進学。製造業での法務・知財業務を経て、ラクスで法務機能立ち上げを行い、IPO後はマネージャーとして法務・総務業務に従事。その後、クラウドワークスの法務・総務マネージャーやUbieでの法務機能立ち上げ・IPO準備を経験して、2022年10月にChatworkに入社。

看護師の資格を取得後、ロースクールに入学

――まずは、慶野さんに伺います。法律に興味を持ったきっかけを教えてください。

慶野:父が医療機関向けのコンサルタントの仕事をしていて、食卓で医療や経済、法律の話が出ていました。そこで医療と経営に何となく興味を持って、看護師不足の話題も多く聞いていたことから、大学は看護系の学科に進学。医療政策や経営も併せて学びました。大学で看護師の資格は取得したのですが、卒業論文を書く中で、その後の進路について悩んだのです。このまま病院で働くのか、父のように医療系のビジネスの道に行くのか。結局、そのときに決めることができませんでした。当時は特に法律に興味を持っていたので、もう少し専門的なことを学んでから決めようと思い、ロースクールに入学したのです。

ロースクールを卒業して、法律の知識を活かせる医療系の仕事を探したのですが、なかなか求人がありませんでした。そこで医療系にこだわることはやめて、法律の知識を活かしながら会社の経営を学ぶ方向に舵を切りました。

そして、2017年に入社したのが、マーケティング関連のソリューションを展開するシナジーマーケティングです。当時は上場後にヤフーのグループ企業になったタイミングで、従業員数は300名くらいの規模でした。大企業のグループ企業として色々と整備することが多く、法務に留まらず、幅広い業務を経験できることに惹かれたのです。入社後は労務、給与計算などにも携わりました。

パナソニックでライセンス交渉を担当。スキル不足を補うために、ロースクールへ

――それでは、平山さん、法律を扱う道を選んだ経緯を教えてください。

平山:私は法学部で国際関係論を専攻していました。国と国との経済の相互依存を学ぶ中で、知財の仕事に興味を持ちました。当時、日本の製造業は多くの特許を生み出していたため、そのど真ん中に身を置きたいと、パナソニックに入社したのです。

携帯電話の「FOMA」が出始めた頃で、モバイル事業が急成長していたタイミングです。私は2年目に「FOMA」のライセンス担当部署に配属になりました。2〜3名の小さなチームで、様々なライセンス関連の交渉を行っていたので、若くして大きな仕事を任せていただきました。3大キャリアや国内外の権利者との契約交渉、クリアランスの舞台に立たせてもらったのは、とても印象に残っています。そこで、事業の最前線に立つ醍醐味を感じて、今の仕事観のベースも形成されました。

ただ、特に大企業を相手にするにあたって法律知識が足りず、悔しい思いをすることも多くありました。もっと知識やスキルを高めて、事業の成長に関与したい。そう強く思って、まずは法律の専門知識を強化するために、ロースクールに入学しました。

慶野:平山さんのお話を聞いていると、キャリアのスタートが似ていると感じました。法律自体を突きつめようとするのではなく、法律を武器にして、企業に貢献しようとするスタンスは同じですね。私は経営に近い場所で仕事をしていて、平山さんは事業のど真ん中で奮闘していた。

平山:そうですね。その背景には、ロースクールに入学したプロセスが影響しているかも知れません。法学部からストレートに入るのではなく、私は企業勤めを経験して、慶野さんは看護師の資格を取得した後に入学しています。言わば「寄り道」のような形ですが、法律以外の経験が今の仕事にも活きているように感じますね。

個人情報を含むデータ利活用のプロジェクトで、自分の視野の狭さを実感した

――次に、お2人の法務職としてのキャリアを伺います。慶野さんはシナジーマーケティングで、どのような仕事を担当しましたか?

慶野:様々なプロジェクトを担当しました。特に印象に残っているのが、全社での個人情報を含むデータの取り扱いポリシーを決めたプロジェクトです。クライアント企業の売上を最大化するために、ユーザーの個人情報等をデータベースに蓄積していくのですが、取得する際の規定をどうするのか、管理する際の法的リスクをどのように定義して、自社でどこまで担保するのか。マーケティング企業として事業の根幹につながる事案だったので、かなり綿密に詰めていきました。

世間では、情報流出の問題が相次いで、個人情報保護の厳格化の機運が盛り上がっていたタイミングです。インターネット業界のリーディングカンパニーとも言えるヤフーのグループ企業として、どのように個人情報に向き合うべきなのか。コーポレート部門だけではなく、プロダクト開発や営業のマネージャー陣と、何度も何度も議論を交わしました。「クライアントのことを考えて、もっと多くのユーザーデータを収集して利活用したい」「このご時世だからリスクを最小化したい」など、様々な意見が飛び交う中で、ポリシーをまとめていくのは大変な仕事でした。

法務の知識を、事業や経営の重要なシーンで活用する醍醐味を味わえましたが、自分の未熟さを感じることも多かったです。私個人として、ブレーキよりもアクセルの役割を果たしたかったのですが、広範なリスクを考慮せざるをえず、法務として「攻め」のスタンスで臨むことが難しかった。結論を出せずにペンディングされた案件も多くて、専門性の足りなさを実感。ものすごく悔しい思いをしました。

当時はまだまだ周りがよく見えていなくて、個人情報保護法の知識不足が自分の課題だと思っていました。しかし、今振り返ってみると、ミクロな法律の知識よりも、社会情勢や自社の事業の方向性など、マクロな視点が足りなかった。どのように事業を伸ばしていくのか、その中で障壁となりそうな規制は生まれてくるのか。広い視野を持ちながら、自らの知識を活かす。そのようなスキルが充分ではなかったと感じています。

ラクスで株式上場前の法務機能立ち上げを経験。事業成長に寄与する法務の役割とは

――平山さんは、法務のキャリアの中で、転機になった出来事はありますか?

平山:私は、ラクスでの経験が大きかったですね。上場する少し前のタイミングでジョインして、法務機能の立ち上げを任されました。法務担当者不在の状態でしたので、まずは法務としての最低限の機能を作り、組織化するために、当時のスキルを総動員しました。その後も、「法務」の枠を超えて総務や人事企画などにも挑戦させていただき、成長する機会をどんどん作っていただきました。

また、当時は社長含め役員と直接仕事をすることが多かったのですが、全員が1つひとつの仕事に妥協を許さなかった。その姿勢から多くのことを学び成長させていただいたと感謝しています。「リーダーとは」「マネジメントとは」ということをたたき込まれるとともに、管理部門であってもKGI・KPIを設定しPDCAを回して常に振り返り改善することを徹底的に求められるなど、急成長するベンチャー企業でのコーポレートや法務のあり方を経験させていただきました。ラクスで学んだことは、今でも大きな糧になっています。

求められるところが非常に高いレベルで、全てを完璧にこなすことは難しかったのですが、様々なシーンで会社の成長に貢献している実感を持つことができたのは、その後のキャリアにも大きな影響を与えていますね。

Chatworkの急成長フェーズに、法務として貢献したい。社会的な意義も感じたい

――お2人とも様々な経験を経て、Chatworkにジョインされました。そのときの経緯や動機を聞かせてください。

慶野:シナジーマーケティングから、ベンチャー企業へと移りました。その会社には上場に向けての法務体制を作ることをメインミッションとして入社したのですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、先行きが不透明になってしまって。リアルを起点にしたビジネスモデルを展開している会社だったため、社会情勢もあり当時は法務として貢献できる幅に限界がありました。そのようなタイミングに、シナジーマーケティング在籍時の知人がChatworkに転職していて、声を掛けてもらいました。Chatworkはコロナ禍が追い風になり、事業も組織も急拡大していた。新規事業が続々と立ち上がるフェーズで、法務の専任メンバーはマネージャー1人しかいませんでした。会社の成長にダイレクトに貢献できそうと感じて、2021年6月にChatworkに入社しました。

平山:私がChatworkに転職したのは、2022年10月です。事業が成長フェーズにあり、法務、ひいてはコーポレートの体制強化に携わることができる点に魅力を感じました。また、プロダクトの可能性にも惹かれました。前職でもビジネスチャットを活用していましたが、「もっとこういう機能があったら良いのに」「こういうサービスと連携すれば、もっと使いやすくなるのに」と感じていたことが、Chatworkの中期経営計画に書かれていたのです。「スーパーアプリ構想」と呼んでいますが、ビジネスチャットをハブにして、様々なサービスと連携しながら、中小企業のあらゆるニーズに応える。その事業の拡大を法務の面から支援するのは、社会的な意義も大きいと感じて、入社を決意しました。

入社後早々に、「Chatwork Mobile」の通信障害のリスクを検討

――Chatworkへの入社後は、どのような仕事を担当したのでしょうか?

慶野:数々の新規事業の立ち上げに携わりました。「Chatwork DX相談窓口」や経営改善を支援するWebメディア「ビズクロ」など、サービス企画の段階からプロジェクトに法務の主担当者として携わらせてもらい、法的なリスクを指摘したり、その回避策を提案しました。中でも印象に残っているのが、「Chatwork Mobile」のプロジェクトです。大まかな企画が固まってから、リリースするまで約3ヶ月しかありませんでした。自社で回線を用意するのではなく、通信会社の回線を借りて運用するので、どのような権利関係で契約するのか、リスクをどう取るのか、密な議論を短期間で重ねました。特に慎重に検討したのは、通信障害のリスクです。対応するべき不具合と、金銭的な損失額のシミュレーションを事業開発担当者と共同で行い、リスクを最小化できるスキームを組み立てました。

平山:私もベンチャー企業を複数社経験しましたが、入社当初から、そこまでの仕事を任せる会社は珍しいと思います。

慶野:そうですね。Chatworkは、マイクロマネジメントする会社ではなく、とりあえずやってみる、失敗から学べば良い、とするカルチャーが醸成されています。自らアイデアを出して、事業や経営に直接関与したい人には向いている環境です。今は特に“ストッパー”としての法務ではなく、“アクセラレーター”としての法務が求められているタイミングでもありますね。このような風土の中で働きたい人にはマッチする会社だと思います。

Chatworkの法務の3年後を言語化。チームで事業成長にコミットするために

――平山さんは入社後どのような仕事に取り組みましたか?

平山:慶野さんと協働しながら、法務チームとしてのロードマップを作成しました。Chatworkの法務のあるべき姿を描き、どういう役割を担うべきなのか。ゼロベースで考えて、3年後までのロードマップに落とし込んだのです。「Chatworkの法務は、どのような役割を担うべきなんだろう。私たちがここから3年間、会社に対してコミットすることを言語化した方が良いですよね」と提案してまとめていきました。

慶野:法務としてはまだまだ整備するべきことも多い中、事業領域も急速に拡大していて、取り組むべきテーマが多岐に渡っていたのです。組織が変化の渦中にありながら、「守り」と「攻め」の双方を強化していかなければなりません。そこで、平山さんと毎日のように議論しながら、少し先の未来を見据えてロードマップを作成したのです。

平山:私も慶野さんも、「事業成長にコミットする法務でありたい」と同じ想いを持っています。その想いを共有しながら未来を考える時間は、非常に有意義だったと思います。現在は、ロードマップ実現のために日々活動していますが、同じ想いを持った慶野さんと仕事ができているので、ワクワクしながら迷うこと無く進めています。

慶野:平山さんが来てくれる前は、法務の実務は1人で回していたので、頼もしい限りですね。幅広い専門知識を持っていて、分からないことがあれば丁寧に教えてくれる。何気ない会話の中から、勉強になることも多いです。

日本の中小企業の生産性を向上させるカギを握っている。本気でそう思っている

――ロードマップの実現に向けて、現在はどのような仕事を担当していますか?

慶野:2人でゆるやかに役割分担をしています。私は事業に近いポジションで仕事をしていて、平山さんにはコーポレート領域を担当してもらっています。私は、中小企業のDXをあらゆるツールを活用して支援する、BPaaS(Business Process as a Service)事業の拡大にコミットしています。ITサービスを提供するだけでなく、人の手も導入して中小企業のDXを進めるソリューションですので、これまでの常識が通用しないのです。顧客にカスタマイズされた形で、データを扱うことも多い。今後はAIなど先進的なソリューションも活用していくこともありえます。さらに人の手を活用しながら業務効率化を行うので、法務としては様々なリスクを想定する必要があります。それが面白くて新鮮な気持ちで取り組めていますね。この「BPaaS」は、日本の中小企業の生産性を向上させるカギを握っている。本気でそう思っていますし、その安全・安心な普及に一役買えるのは、大きなやりがいにつながっています。

平山:今年の1月〜3月は、私は株主総会に注力していました。来年の株主総会では新たな取り組みに挑戦できるように、まずは今年、株主総会の「型」を作ろうと考えていて、どのメンバーでも対応できるように整備をしたところです。また、株主総会において、ガバナンス強化等のために、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行が承認されました。現在は、運営事務局として社外の取締役の方々や内部監査室と議論を行いながら、運営を型化しています。そのほかには、総務として、社員の労働環境や生産性を向上するために何ができるのか、総務担当のメンバーと試行錯誤しながら施策を検討中です。グループ会社も増えていますので、子会社を含めた管理体制の構築にも携わっています。Chatworkは上場企業でありながら、変化が激しい会社です。「守り」と「攻め」の双方に関わることができるのが、この会社の法務・コーポレートの醍醐味だと感じています。

自分の成長と会社の成長が、密接にリンクしている

――最後に今後の展望について教えてください。

慶野:これまでは実務としてはほぼ1人法務だったので、何とか日々の対応をこなすだけで精一杯のことが多かったです。平山さんにジョインいただいて、チームとして活動できるようになり、中長期での課題に取り組めるようになりました。すごく充実していますし、2人で試行錯誤していくこと自体が血肉になっている。また、会社としても私たちの活動を応援してくれているので、今の環境には非常に満足しています。これからは、事業の成長やコーポレートの基盤作りに粘り強く寄与していくだけですね。Chatworkでは、見たこともない事業が続々と立ち上がるので、毎日がチャレンジです。自分自身の成長と会社の成長が密接にリンクしているのを感じています。一緒に、次のステージに登っていきたいです。

平山:私自身も「成長」がキーワードですね。Chatworkの社員は、事業を成長させるために、みんな真面目に着実に努力をしています。だからこそ、コーポレートとして、法務として、真摯に全力で支援をしていきたいのです。自分自身が何をするべきなのか、どのようなコーポレートや法務であるべきなのか、根源から考える機会が増えていきました。慶野さんやコーポレートメンバーと意見を交わすことで、私自身も勉強になることが多い。自分のスキルや視野をアップデートしながら、この会社の成長に寄与していきたいです。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)