Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

アナウンサー志望から番組制作を経て、Chatworkの広報へ。情報と人の間に立つ中で、見えてきたこと。

幼少期はテレビっ子。『ズームイン!!朝!』の現場に憧れ、アナウンサーを志望。新卒でインターネット放送局に就職し、番組制作を一手に担った堤。その後、広報に大きな可能性を感じてキャリアをチェンジし、Chatworkにジョイン。コロナ禍での社内広報の進化を担うなど、カルチャーの醸成にも大きく貢献しています。これまでのキャリアの分岐点や、人に情報を伝えるときのこだわり、これからの広報の可能性について、詳しく聞きました。

■プロフィール

堤 高基
ピープル&ブランド本部 BX*部 コミュニケーションチーム チームリーダー

北海道出身。アナウンサーを目指して上京。2013年4月、新卒でインターネット放送局を運営するベンチャー企業に入社。アナウンサー・番組制作・広報を担当する。2015年4月に、ビジュアル制作の最大手企業、アマナグループに転職。新規事業開発や広報を担う。2021年4月にChatworkに広報としてジョイン。コーポレートPR、インナーコミュニケーションを担当。2022年11月より、広報を含めた社内外のブランドコミュニケーションを企画・先導するコミュニケーションチームのリーダーを務めている。

*BX:Brand Experience

テレビっ子でアナウンサーを志望。「情報と人をつなげる架け橋になりたい」

――幼少期の体験で、今の仕事につながっていることはありますか?

テレビっ子だったことです。小学校から帰宅したらすぐにテレビを付けて、夕方のドラマの再放送を見ていました。そのままニュースや情報番組の時間になって、ゴールデンタイムに突入。晩ご飯を食べた後も、リビングでずっとテレビを見続けていた気がします。テレビに膨大な時間を費やしていると、作り手のことを想像するのが楽しくなってきたのです。「この番組はターゲットの年齢層が高めだから、テロップが大きいのかな?」「今回の番組改編に伴うリニューアルで、番組のコンセプトが変わったのかな?」といったことを子どもながらに考察していました。

アナウンサーになりたいと思うようになったのは、小学校の高学年でした。登校する前に『ズームイン!!朝!』を見ていると、ぼんやり、「あの画面の中で『伝える側』の人になりたいなぁ」と感じたのです。北海道ではアナウンサーへの選択肢が狭まると感じて、大学進学時に東京に出てきました。大学では、メディア系のサークルに入って、学園祭でミスコンのMCなどを務めました。ミスコンが盛り上がる大学だったこともあり、600名を超える観客が集まって大盛況!鳥肌が立つほどの興奮は今でも忘れられません。

就職活動の時期を迎え、エントリーシートと向き合わなければならないとき、なぜアナウンサーを目指すのかを立ち止まって考えてみました。そこで出てきた答えが「情報と人をつなげる架け橋になりたい」という想いです。自分が間に入ることによって、情報が人に伝達されて、知識が増えたり、感動したり、もしかすると人生を豊かにするきっかけを提供できるかもしれない。そのような媒介者になることが、自分が目指す道だと確信しました。ミスコンのMCでは、登壇者と観客がつながって、それぞれの感情がシンクロした瞬間がありました。ずっと好きだったテレビという舞台で、そのような感覚を味わいたい。そう強く願うようになったのです。しかし、アナウンサー試験は狭き門。東京、大阪、北海道などのテレビ局を受験したのですが、内定には至りませんでした。

インターネット放送局へ。自分で企画を立てて、撮影して、編集して、ひとりで番組を制作

――テレビ局からは内定がもらえなかった中で、就職はどのように決めたのでしょうか?

アルバイト先にそのまま就職することができました。立ち上げフェーズのインターネット放送局で番組制作とアナウンサー、SNS運用など広報業務も担当していました。予算にも人手にも限りがある中で、自分でハンディカムを持って撮影し番組を作っていました。社員は3名しか在籍していなかったので、学生にもかかわらずあらゆる仕事を任せてもらっていて、その仕事や環境にやりがいを感じていたので、就職を決めたのです。

制作していた番組は、サブカルチャーをテーマとしたものが多かったですね。アイドルの卵に出演していただいて、そのファンに見ていただくという番組が多かったです。私は自分で企画を立てて、撮影して、編集して、たまには出演もして、ほぼひとりで制作していました。最初の頃は、おそらく見るに堪えないものを作っていたと思います(笑)。ただ、ひたすら試行錯誤していると、企画力や編集力が上がってくるのが自分でも肌感で分かりました。出演者の魅力的な部分を引き出せるような企画を考えたり、編集でさらにそれが伝わるように磨きをかけたり。自分の仕事がどれだけ彼女たちの活躍に貢献できたのかはわかりませんが、その後にめざましい活躍をされている方をテレビやSNSなどで見かけると、懐かしさと嬉しさがこみ上げてきます。私が制作として関与することで、出演者の魅力を引き出せ、視聴者が共感してくれる。情報の発信者と受け手の間に入るという意味では、番組制作の仕事は、アナウンサーやMCの仕事にも似ています。今の広報の仕事にも共通点が多いですね。

ビジュアル制作の最大手、アマナグループに転職。映像やゲーム素材の新規事業を手掛ける

――インターネット放送局を退職して、次はどのようなキャリアを歩みましたか?

当時お世話になっていた方の紹介で、ビジュアル制作の大手、アマナグループにジョインしました。画像や映像の素材を預かり、ライセンスを販売するストックフォトビジネスを担当。日本テレビと協業して、同社が持っている映像のアーカイブをアマナ経由で販売するプロジェクトの立ち上げに尽力しました。そのほかにも、映像クリエイターと連携して、ハイクオリティで使いやすい映像素材の拡充も進めました。ニーズがありそうなテーマを選定し、ロケ地を決めて専門スタッフを引き連れてロケを行い、編集する。作品を作り上げるのは楽しかったですね。前職ではほぼひとりで制作していたので、チームでのモノ作りの楽しさに触れることができました。また、スマホゲーム大手のGREEとタッグを組んで、ゲーム素材に特化したマーケットプレイスの立ち上げにも携わりました。スマホゲームは、コンシューマーゲームに比べて開発にスピードが求められるので、既存の素材を使うメリットが大きいのです。多くのゲーム開発者に活用いただきました。

社会人3年目でアマナに転職したのですが、若くても大きな仕事を任せてもらえる環境で、自分には合っていましたね。自分でコンテンツを制作するというよりも、コンテンツを集めて流通させる仕事がメインだったのですが、やりがいは十分に感じていました。情報の発信者と受け手をつなぐという役割は変わりませんでしたし、「売上」という形で成果が目に見えるのは楽しかったです。

広報部長に異動を直談判。社内と社外をつなぐ「最高の媒介者」になりたい

――アマナではその後はどのような仕事を担当しましたか?

事業をグロースさせる施策として、定期的にクリエイターやユーザー向けのイベントを開催していて、そこで司会やファシリテーターとして登壇もしていました。“司会慣れ”していたこともあり評判が良くて、「オフィシャルな記者会見で司会をやってほしい」と広報から声が掛かったのです。そこから広報部の皆さんと仕事をする機会が出てきて、ふとした会話の中で、広報部長に「堤さんは広報に向いていると思うよ」と言われ、興味を持ったのです。

広報の仕事内容を詳しく調べたり、これまでに培ってきたスキルを棚卸しする中で、自分に向いているのでは、と気づきました。まさに、社内の情報と社外の受け手の間に立つ仕事であり、自分がアナウンサーとしてやりたかったことと共通点が多い。社内の先進的なプロジェクトや頑張っている社員たちをもっともっと社外に伝えることで、化学反応が起きて新しい価値が生み出せるのではないか。社内と社外の「最高の媒介者」になろうと決意して、広報部長に異動を直談判しました。経験やスキル、仕事への想いを資料にまとめてプレゼンしたところ、「そこまでの熱意を持ってくれるのなら、ぜひ一緒に仕事をしよう」と首を縦に振ってくれたのです。

コロナ禍で社内イベントをオンライン化。放送局での経験を活かして、多くの社員を笑顔に

――自らの意思で広報に移って、どのような仕事を進めましたか?

当初は、プレスリリースを出したり、記者会見や取材対応を行ったりと、PR業務を担当していたのですが、転機になったのは、2020年4月の新型コロナウイルスの感染拡大です。緊急事態宣言が発出され、社内向けの会議やイベントがオフラインからオンラインに切り替わる中、その設計、準備、運営を一任されました。

インターネット放送局での経験を活かして、オンライン会議の仕組みを構築。司会進行やファシリテーターも自分自身で務めながら、様々な社内イベントをオンライン化しました。アマナの社員にはビジュアルの感度が高い人が多いので、以前の番組制作のノウハウを活かして、テロップや画面に装飾を入れて配信を行いました。

また、コンテンツの構成も練りに練りました。会社全体の戦略を説明するミーティングでは、単に役員がスピーチを行うだけではなく、必要な映像を撮影して具体的なイメージを持てるように。半年に1回、グループ社員約1,000名(当時)が参加するイベントでは、音楽フェスのように3チャンネルを同時進行して、好きな時間に好きなコンテンツを視聴できる形にリニューアルしました。

これらのイベントが非常に好評だったのです。「コロナ禍で世の中が暗くなっていた中で、このイベントは楽しかった」「社員同士のつながりを感じることができた」「アマナだからこその映像クオリティだと思う」といった感想をいただきました。小さなインターネット放送局で、ゼロからコンテンツを制作する経験を積み、アマナで社員や事業の魅力を肌で感じていたことがつながったのは嬉しかったですね。これまで必死に頑張ってきて良かったな、と思いました。

Chatworkに入社3日目、全社イベントのリニューアルを敢行

――そして、2021年4月にChatworkに転職します。どのような点に魅力を感じましたか?

アマナで社内向けコミュニケーションの魅力や可能性に気づきました。コロナ禍で気分が沈んだ社員の気持ちに寄り添うことができるし、会社としての一体感も生み出せる。より成長している会社で、その可能性を追い求めたかったからです。

当時は、新型コロナウイルスの感染拡大が進んでいて、Chatworkではオフィスへの出社が制限されていました。一方で、年間100名ペースで社員が増え続けていたので、社員同士が一堂に会すことができなくなり、会社のビジョンや方向性を直接伝えるのが難しい状況でした。「コロナ禍 × 成長企業」の大きな課題が顕在化していたのです。まずはこの状況を何とかしたい、と入社した初日から意識していました。

入社して3日目に、月に1回のオンライン全体会議が実施されることになっていました。ここが勝負所だと感じて、大リニューアルを敢行。これまで培った知見をフル活用して、コンテンツを練り上げ、台本も書いてテロップも入れて、自分で司会進行も務めました。さらに随所に双方向性を取り入れて、コロナ禍で乏しくなったコミュニケーション量を補えるよう工夫しました。雰囲気がガラリと変わっていたので、皆さんにとても喜んでいただけました。「テレビ番組みたい!」「プロの司会を呼んだのか?」などとリアルタイムのチャットで反応してもらえたときはすごく嬉しかったです。このように正直であたたかいリアクションをとってくれるChatworkの皆さんのために、力を尽くしたいと想いを新たにした瞬間でした。リニューアルのタイミングで「Cha室」と改名したオンライン月次会議は、現在も続いていて、月に1度Chatwork社員が集う大切な時間になっています。この取り組みはこちらのnoteでもまとめましたので、興味がありましたらご覧ください。

note.com

社内ラジオもスタート。頑張る社員の想いを、「声」を通じて配信する

――「Cha室」とはユニークなネーミングですね(笑)。その他の社内広報の取り組みを教えてください。

次に始めたのは社内ラジオです。「Cha室」は月に1回、1時間で開催される会議なので、伝えられる内容が限られるんです。たとえば、「このような新しいプロダクトがリリースされました」と伝えるのが精一杯で、そのプロジェクトのプロセスや担当者の想いまでは盛り込めない。知ってほしいことはもっとあるのに、非常にもったいないと感じていました。

そこで、作業を止めずに耳だけで聞くことができるラジオ「Chadio」を立ち上げたのです。「このプロジェクトはどういう想いで始めたのですか?」「大変だったエピソードを教えてください」「今後の展望はどのように考えていますか?」など、私からプロジェクトメンバーにインタビューすることで、プロジェクトの裏側を引き出しています。ブログやチャットのような形で配信するよりも、生声の方が感情が伝わりやすい。しかも、聞く側は手軽に聞くことができますし、もっと深い話を聞きたい場合は、本人に直接コミュニケーションを取ってもらうこともできる。そこで得られたものは、自分の業務にも活かすことができます。任意視聴ですが、部署問わず多くの社員に聴いてもらえています。「Chadio」誕生の経緯も、こちらのnoteにまとめました。

note.com

半年に1回、6時間半の全社イベントを有意義なものにするために、全ての経験と能力をぶつけて臨む

――チャット文化のChatworkで、ラジオが喜ばれるのも興味深いです。社内向けのコミュニケーション施策はかなり進化していますね。

そして、最も大きなイベント「Cha会」もリニューアルしました。半年に1回、Chatworkの全社員が集まって、経営戦略の共有やチームビルドを行う6時間半に渡るオンラインイベントです。漫然と配信するのではなく、まずはその時に伝えるべき内容をイメージして、会のテーマを明確にすることからはじめました。「今回は●●というテーマで開催します!」と宣言して、そのテーマに基づいてコンテンツをブレずに構成して、1日が終わったときにはそのテーマが伝わり切っている状態を目指しました。

前回実施したイベントの構成としては、まずは午前中にCEOの正喜さんやCOOの福田さんから全社方針を話してもらいました。次に、その話を深掘りするために、現場メンバーも含めてのクロストークを展開。参加者から質問を投稿してもらって、その場で役員にぶつけるコンテンツも設けました。「この質問はきわどいですけど、ぶっちゃけどうなんですか?」と、司会を務める私がピックアップして、(ほぼ)忖度無しで聞いていきます。

「Cha会」の様子

午後は休憩を挟んで、各本部ごとに制定した行動指針「クレド」について意見を交わすコンテンツを用意したり、表彰のパートでは受賞者それぞれの仕事仲間からのコメントを事前に撮影したり。また、360度カメラを活用して臨場感を出したり、東京と大阪のサテライト会場に中継してピッチ対決を行うなど、演出面にもこだわりました。6時間半の長いイベントですが、1秒たりとも飽きさせたくはないのです。イベント全体の企画、コンテンツごとの企画・演出、事前収録VTRの監修、そして、当日の司会。これまでに培ってきた経験を総動員して、臨んでいます。正直かなり大変ですが、ピープル&ブランド本部のメンバーも力を尽くしてくれるので、毎回心強いです。結果、前回のイベント後のアンケートは9割の社員が「満足」と答えてくれました。ただ、アンケートで寄せられたフィードバックは1件1件目を通し、受け止め、さらにチャレンジを続けていきたいと思っています。

新しい世界を作る。そのために全社が一丸になれるように、社内広報を推進する

――そこまで堤さん自身が、全社イベントのクオリティにこだわる理由は何ですか?

Chatworkの社員は300名(2022年12月末時点)を超えました。「Cha会」にはその全員が1営業日を費して参加してくれるので、無駄にするわけにはいかない。急成長フェーズにある会社の1日の重要度は、相当なものです。だからこそ、社員の皆さんに「1日を割く価値があった」「この日がきっかけになって何かが生まれた」「明日からもこの仲間たちと頑張ろう」と感じていただき、会社の成長を加速させる1日にしたいのです。

ただ、プレッシャーや使命感を感じているだけでは、人の心に届くコンテンツは生まれません。Chatworkのバリュー(大切にしている価値観)の1つには、「遊び心を忘れず、チャレンジを楽しもう」が掲げられています。コンテンツを企画・制作するためには、遊び心を持っていてこそ、見る人を楽しませることができる。「Cha会」「Cha室」「Chadio」の随所に、遊び心を感じられる仕掛けを用意しています。会社としてこのようなスタンスを奨励してくれるので、私自身も楽しく仕事ができていますね。

――Chatworkでインナーコミュニケーションを推進するやりがいは、どのように感じていますか?

中期経営計画で「2024年に中小企業向けビジネスチャットのシェアNo.1を獲得する」という野心的な目標を掲げています。2024年、中小企業で働くほとんどの人たちが、毎日「Chatwork」を使っていきいきと仕事をしている。そのような景色を社員全員で見たい、と心の底から思っています。そのためには社内広報がとても重要ですし、私自身が中心となって推進できるのが大きなやりがいにつながっていますね。

先日、CEOの正喜さんに、「Cha会やCha室は、Chatworkのカルチャー醸成のためには欠かせないよね」と言っていただく機会がありました。戦略だけで人を動かすのはなかなか難しい。カルチャーが後押しすることで、会社が一体となって未来を実現できる。正喜さんをはじめとする役員の皆さんが、そのために必要な打ち手だと感じてくれているのは、とても嬉しいことだなと思っています。

グループ会社が拡大する中で、どのようなカルチャーを醸成するのか。考えるだけでも面白い


――
最後に、今後の展望について聞かせてください。

Chatworkに入社して約2年が経ちましたが、変化に富んでいて刺激の多い会社だと感じています。一方で、Chatworkらしい、変わらないコアな部分もきちんと持ち合わせている。そのコアがぶれないように、そして変化にも対応するために、インナーコミュニケーションを改善し続けるのは、おそらく変わらないと思います。

これからもChatworkは拡大していきます。グループに新たにジョインする会社も出てくるでしょう。Chatwork単体だけでなく、グループとしてどのようなカルチャーを醸成するのか。そのためにどのような情報を社員に提供して、どのように意見や要望を吸い上げていくのか。やるべきことは多いです。答えが無い仕事ではありますが、今から考えるだけでもワクワクしています。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)