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ミャンマーでの挫折でキャリアを転向。Chatworkで事業戦略から携わる「温かいマーケター」へ。

大学を卒業して、ネットワークエンジニアとしてキャリアをスタートした眞壁。コンサルタントとして売上トップの実績を挙げて、ミャンマーで新規事業の立ち上げを任されましたが1年半で無念の帰国。その反省を活かして、マーケターとしてのキャリアを積むために、SaaS企業に未経験で転職しました。その後、戦略から一気通貫で携わるためにChatworkにジョイン。これまでのキャリアへの想いや、マーケターとしてのこだわりについて、詳しく聞きました。

■プロフィール

眞壁 和久
コミュニケーションプラットフォーム本部 マーケティングユニット
グロースマーケティング部 デジタルマーケティングチーム チームリーダー

宮城県出身。2012年3月に大学を卒業後、通信キャリア向けのSI業務を展開するIT企業に入社。ネットワークエンジニアやコンサルタント、海外での事業開発職などを経験。2018年に、企業に対してサブスクリプション事業の支援を行うテモナに入社。SaaSプロダクトのマーケティングを推進。2021年10月にChatworkに入社。デジタルマーケティングチームのリーダーとして、オンライン広告、ナーチャリングなどに携わっている。

ネットワークエンジニアで培ったスキルが、マーケティングでも活きている

――今の仕事観につながっている原体験はありますか?

学生時代は「自分は一番にはなれない」「自分の判断は完璧ではない」という想いを常に持っていました。要は、「自分に対して自信を持てない」タイプの人間だったのです。たとえば、勉強や部活動でも、「自分は先頭に立てない。周りを先導するタイプではない」と思いながら、毎日を過ごしてきました。中学ではソフトテニス部に所属していましたが、頑張って素振りをしなくても、上手い人はたくさんいました。また、勉強で自分が頑張っても、どうしても追いつけない人がいる。そして、大学では学園祭の実行委員長を務めたのですが、自分で周りを引っ張るのではなく、皆の意見を尊重して合議で決めていました。だから、社会人になってからも、自分が率先して前に出てリードするのではなく、きちんと事実を集めて準備をして、合意を得ながら進めていく。慎重に、ある意味、臆病に生きてきたと思っています。

――2012年に大学を卒業して、1社目は通信キャリア向けのSI事業を展開している会社に入社しました。そのときの経緯を教えてください。

私は宮城県出身で、就職活動を始めるタイミングで震災が起きました。地元で職を得るのが難しく、また、宮城での学生時代では、何かを成し遂げることができなかったので、自分を変えるためにも、東京に出てきたのです。

震災で日常のインフラは止まっても、インターネットだけは動いていました。当時からYouTubeやニコニコ動画を見るのが好きで、このようなサービスを提供して、人を楽しませたいと思っていたのです。そこで、通信キャリア向けのSIサービスを展開するアドックインターナショナルに入社しました。手に職を持ち、自分なりに自信を持ちたかったので、職種はエンジニアを選びました。

――エンジニアとして、どのような仕事を担当していましたか?

大手通信キャリアに対して、インターネットのネットワークインフラを導入する業務を担当していました。仕事の規模はかなり大きかったです。数千万人がアクセスするネットワークなので、止まると甚大な影響が出ます。そのような事態を防ぐために、エンジニアの作業は標準化されていますし、段取りが非常に重視されていました。慎重な性格の私には向いている仕事でした。

また、ネットワークを「情報の流れ」として俯瞰して捉えるのも、後々では役に立ちました。通信がスムーズに流れるためには、ボトルネックを特定することが大切ですから、データのフロー図を描きながら、問題点を把握します。この考え方は、現在のマーケティングの仕事と共通していますね。「Chatwork」のユーザーを増やすために、認知から活用いただくまで、どの行動に対して注力していくかを考えることと似ています。当時は、ボトルネックを探して手を打つのが好きで、SEからコンサルに転身した際には、売上トップを獲得することができました。プロジェクトに入っている社員の皆さんにヒアリングを行い、フロー図に起こして課題を特定し、改善のための提案を行うと、多くのお客様に導入いただけたのです。このときに、人生で初めてトップを取りました(笑)。

ミャンマーでの教育事業を立ち上げを任されたが、、、「戦略」の大切さを痛感

――コンサルタントを経験した後は、どのような仕事を担当しましたか?

入社5年目に、海外での事業立ち上げに携わりました。部長と2人でミャンマーに渡り、IT関連の教育ビジネスを立ち上げたのです。当時、日本からのオフショア開発が盛んで、ミャンマーのエンジニアのニーズは高まっていましたが、教育が追いついていませんでした。その需給ギャップに大きなビジネスチャンスを感じて、私が先にミャンマーに渡航。3ヶ月間で商習慣を学んで、現地の方々と関係性を構築しました。そして、部長が渡ってきて事業開発をスタートさせたのです。

1年半ほど頑張ったのですが、結果としては失敗でした。大きくグロースするどころか、拠点を維持するのに必要な売上を上げることができず、撤退を余儀なくされました。ITスキルを身につけるためのパッケージソフトを開発し、販売したのですが、多くの方に使っていただくのが難しかった。政府関連の機関に売り込んだり、現地の有名な大学に営業したのですが導入にいたらず、メインターゲットである大学生個人に、ECを通じて販売もしました。価格も下げて、マーケティングの努力もしたのですが、なかなか買ってもらえませんでしたね。大学生もその親御さんも、パッケージソフトを買うだけの経済的な余裕がなかったのだと思います。

コンサルタントとしてトップの実績を出して、海外事業の立ち上げのために抜擢してもらったのですが、その期待に応えることができず、当時はかなり落ち込みました。失敗の原因を振り返ると、「戦略」に行き着きました。「大学生相手にパッケージソフトを売る」というマーケティング戦略が誤っていたのではないかと。ターゲット顧客と商材は、この組み合わせが最適だったのか。現地のエンジニア供給不足の問題を解決して、事業化するためには、別の戦略オプションを考えるべきではなかったのか。自分にはそのスキルが乏しかったために、期待に応えられなかったし、ミャンマーの社会に貢献することもできなかった。悔しかったですね。

マーケティングをゼロから学ぶために転職。常に上司に恵まれ基礎をたたき込まれた

――2018年に、サブスクリプション事業の支援を行うテモナにジョインします。その背景を教えてください。

海外事業での失敗を経て、もっと戦略に関するスキルを身につけたいと思ったからです。特にマーケティング戦略のスキルを身につけようと、未経験で転職できる会社を探しました。そこで出会ったのが、2社目に勤めたテモナだったのです。しっかりとした自社のプロダクトを持っているので、マーケティングに専念できると感じました。

テモナは、「サブスクストア」「サブスク@」といったBtoB領域のSaaSプロダクトを展開しています。私は経験ゼロから専任でマーケティングに携わったのですが、思った以上の成果を出すことができました。歴代No.1のコンバージョンを記録し、SEO・コンテンツマーケティングを実施することでセッション数も2倍に向上。ユーザー獲得に大きく貢献できました。そのきっかけは、2人の尊敬できる上司に出会ったからだと思います。

1人目は、テモナでCMOを務めて、その後EC企業を立ち上げられた青栁 陽介さん。入社当時の上司で、マーケティング担当者としての仕事へのスタンスや、人との付き合い方を学びました。2人目は、マーケティングチームの責任者を務めていた宮本 真光さんです。コンテンツマーケティング施策の設計から設定、その数値管理や顧客志向の考え方などを徹底的に教えてくれました。ターゲット顧客をどのように設定して、欲しているコンテンツをどのように企画するのか、レクチャーしてくれました。他にも、広告代理店の営業の方や社内の先輩には、分からないことがあれば何でも聞いていましたね。当時、28歳になっていたので、未経験から早くキャッチアップしなくては、という危機感しか無かったです。ここで学んだことは、今でも大きなよりどころになっています。

現在も上司である荒川 貴洋さんから、顧客志向を起点としたマーケティングをもとに、戦略設計から戦術遂行までの具体的な流れや仮説検証の進め方について、間近で学んでいます。これまで学んできた知識や経験がひとつにつながっていく感覚があり、とても有意義な毎日です。

エンジニアの知見を活かしたコンテンツマーケティングで、従来比200%の成約を実現

――テモナで大きな成果を出すことができた要因は、どこにあると考えていますか?

多くの方の教えをもとに、トータルな打ち手を実行できたからです。加えて、ネットワークエンジニアとして培ってきたことが活きました。入り口から出口までをフローで捉えて、数値のモニタリングを導入し、ボトルネックを特定する。そして、打ち手を枠にとらわれずに実行する。このような仕事の進め方を大切にしていました。

特に、効果を上げることができた打ち手は、コンテンツマーケティングですね。通販を支援するプロダクトを主に扱っていたので、通販業者が欲する情報をカテゴライズしました。「売上の向上」「コスト削減」「商品の仕入れ」「配送の体制」といった課題をテーマごとに、コンテンツを作成して配信し、かなり細かく数値を見える化して検証していました。どの情報を顧客が欲しているのか、少しずつ明らかになっていくことで、ヒットするコンテンツのパターンが見えそうな時は嬉しかったです。ここで得られた知見を、広告配信やセミナー運営などにもフィードバックすることで、全体への最適化へもつながりました。仮説検証と要因分析、そして他への展開を丁寧に重ねていくことで、従来比200%の効果を実現することができたのです。

Chatworkに転職。事業戦略とマーケティング戦略をつなげたい

――そして、2021年10月にChatworkにジョインします。このときの経緯を教えてください。

テモナで成果を出すことによって、戦略の重要性に改めて気づきました。あくまでメインの担当業務はマーケティングの実務でしたので、より上流工程のポジションに身を置ける会社を探していました。事業戦略に触れながら、マーケティング戦略を自ら立案したかったのです。さらに、その戦略をもとに、セールスやカスタマーサクセスともより深く協働したいと考えていました。それぞれで得られた顧客のインサイトを共有することで、より広義なマーケティング活動ができるのではないかと。

Chatworkを志望したのは、そのような活動が実現できると感じたからです。事業の戦略が明確であることが、自分の中では大きかった。Chatworkは3つの戦略を掲げています。プロダクト自身が事業成長を加速する「Product-Led Growth 戦略」、業界理解を深化させ、顧客課題をともに解決する「Horizontal x Vertical 戦略」、チャットをプラットフォームとした新たな事業展開を行う「DXソリューション 戦略」です。取締役COOの福田さんと面談でお話した際に、これらの戦略が非常に洗練されていることを感じて、マーケティング戦略もブレることはないと確信しました。

「施策立案→実施→改善」のサイクルを、部署を横断して回せるように

――入社後はどういう仕事を担当しましたか?

「Chatwork」のユーザー創出のために、Webマーケティング施策を、戦略をもとに手掛けています。約1年に渡って、様々な取り組みを重ねてきました。具体的な成果としては、コンテンツチームと密に連携することで、サインアップ登録をしていただきやすいユーザーのセグメントを、コンテンツのPDCAを繰り返すことで想定できたことです。特に「IT化を望んでいるが、環境が伴っていない」属性のユーザーに、有益な情報を提供することが、現状のコンテンツ制作の柱になっています。たとえば、顧客の事業運営のIT化に役に立つ資料(ホワイトペーパー)を制作し、マーケティングオートメーションツールを活用してメールでご案内することで、「Chatwork」を活用する動機を高める施策を行ったり。さらに、そこで見えてきた傾向を制作チームにフィードバックすることによって、コンテンツの精度を向上させたり。「施策立案→実施→改善」の一連の流れを作ることができました。

また、Chatworkは「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッション、「すべての人に、一歩先の働き方を」というビジョンを掲げています。特に中小企業で勤務する皆さんに一歩先の働き方を提供することが事業の目的ですから、ビジネスチャットにとらわれない価値を提供することが、社内でも奨励されています。そこで、コンテンツマーケティングチームでは、かなり自由に広い範囲での記事を提供しています。会社のミッションとマーケティングが直結しているので、日々の仕事が非常に進めやすいですね。ホワイトペーパーでは、「中小企業が直面する経営課題」「今の日本の働き方のトレンド」「現場レベルでの業務効率化」などのコンテンツが、多くの方に支持をいただいています。

参画いただけたメンバーには、市場価値を上げて欲しい

――眞壁さんがリーダーを務める、デジタルマーケティングチームについて教えてください。

私のチームのミッションは、主にWebマーケティングの手法を活用して、「Chatwork」ユーザーを増やすこと。主に広告による集客のフェーズと、メールを中心としたナーチャリング(動機形成)のフェーズに分かれるのですが、双方を総勢5名で担当しています。

チームのマネジメント方法には、ずっと悩んでいます(笑)。「これで行くぞ!」と方針を立てて巻きこむのは、社会人になっても苦手ですね。ただ、自分のチームに参画していただけた方には、市場価値を上げて欲しいと考えています。私が学んだ考え方や、知っている理論などをお伝えし、メンバーの方々が持っているスキルや経験などを組み合わせてグロースしていきたいと考えています。

顧客が持っている期待と課題の想像と、客観的なデータやファクトに基づいて仮説を考えながら推進すること。この2つをマーケティングの仕事の中では、両立することを意識しています。冷静と情熱、具体と抽象。この双方を行ったり来たりしながら、一つひとつの仕事を重ねていくことが、メンバーの成長の近道だと感じています。マネジメントでは双方の視点を身につけられるように、働きかけています。これまで経験したことを、自分のメンバーにも返したいなと思っています。

550万以上のユーザー数、全ての「働く人」がターゲット。戦略を描く面白さがある

――Chatworkでマーケティングを手掛ける面白さは、どのように感じていますか?

BtoBのプロダクトで、ここまでユーザー数が多いものは珍しいですね。現状でも、「Chatwork」は550万人以上*1の方に使っていただいていますし、対峙している中小企業のマーケットも大きい。日本の99%以上の法人が中小企業で、ビジネスチャットの国内普及率は20%未満*2という状況です。このマーケットには大きなチャンスが眠っていると感じています。母数が大きいので、一つひとつのマーケティング活動の成果が可視化されやすいのも特徴ですね。

加えて、全ての「働く人」が対象になるマーケティングを行えるのは、Chatworkならではだと思いますね。前職では「通販事業者」に特化していましたから。ただ一方で、マーケットが広いがゆえの難度の高さもあります。狙うべきターゲットが明確であれば、どのような情報が刺さるのかが想像しやすいのですが、Chatworkのように広いマーケットを扱う場合はそうはいきません。自分たちでユーザーやマーケットをセグメントする必要があります。ただ、それはマーケティング戦略を自分たちで描けるのと同義なのです。

プロダクトが特定のターゲットに向けて開発されたものではないので、売り方は自分たちで考えなければならない。それが非常に面白いし奥深い。どのターゲットに、どのような情報を提供して、どのように売るのか。これらをゼロから組み立てるのは、まさしく「戦略」を立案するのと同じです。また、ユーザーデータもしっかりと管理されているので、SQLさえ使えれば、誰でもいつでもアクセスできる。戦略を立案するのに、豊富なデータを元に仮説を立てることができるのも、恵まれた環境だと思います。

人々の働き方を変えるために。プロダクト自体の戦略立案にも携わりたい

――最後に、眞壁さん自身の今後のキャリアについて、聞かせてください。

より上位のポジションに身を置いて、さらに上流から情報を定義したいですね。広告だけでなく、セミナーや展示会なども手掛けてきましたが、マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)全てをマネジメントできるようになりたい。特にプロダクトなども含めた戦略立案にも挑戦していきたいと考えています。

マーケティングの仕事は、仮説を考え、情報を届けて、評判として返ってくる、その一連のPDCAを続けることで、態度変容や市場創造・拡大につながっていくと思っています。IT業界を選んだのも、もともとインターネットで流れている情報やコンテンツが好きだったからで、その志向は変わっていない気がします。

「Chatwork」のユーザーのほとんどは、中小企業で働いている方々です。情報を届けた先には、皆さんの働き方が変わるという世界観があります。そこに大きな意義を感じることができているのは、ありがたいですね。ユーザーの反応に直接触れることで、勇気づけられることも多いです。単にユーザー拡大を目指して数字を追い続ける「冷たいマーケティング」ではなく、そこに550万人の「働く」があるからこそ、「温かいマーケティング」を戦略から作り上げることができる。一つひとつの数字が持つ意味合いや重みを、最近はひしひしと感じるようになりました。Chatworkでしかできない、マーケターとしての新しい生き方と働き方を、メンバーのみんなにも見せていきたいですね。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)

*1:574.1万ID(2022年12月時点)

*2:18.1%(当社依頼による第三者機関調べ、2022年9月調査、n=30,000)