Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

PwC、DeNA、ベンチャー執行役員を経て、事業戦略の責任者へ。中小企業マーケットの奥深さを知る。

1浪・2留で大学を卒業。遅れを取り戻すためにコンサル業界に飛び込み、DeNAでは数々の事業の立ち上げを担った達山。Webマーケティング企業のベーシックの執行役員を経て、Chatworkにジョイン。2023年1月からは、副本部長として「Chatwork」のアカウント獲得を全体統括しています。「あらゆるマーケットに対峙してきましたが、中小企業のマーケットは奥深いし面白い」と語る達山に、その真意や仕事へのこだわりを聞きました。

■プロフィール

達山 裕一
コミュニケーションプラットフォーム本部 副本部長
兼 マーケティングユニット ユニット長

慶應義塾大学商学部を卒業後、2006年にPwC(当時はベリングポイント)に入社。リスクマネジメントのコンサルティング業務を担当。2009年にディー・エヌ・エー(以下DeNA)に転職し、広告営業、ゲームやアプリのデータ分析・マーケティング業務やメディア事業の立ち上げを経験。2019年にWebマーケティング支援会社のベーシックに執行役員として入社。2021年7月にChatworkにジョイン。

1浪・2留で社会人に。その遅れを取り戻すために、PwCに入社

――どのような学生時代を過ごしましたか?

一言で言えば、面倒臭がり屋の性格です。勉強でもバイトでも、余計なことをやらずに、コツを理解して最短アプローチで成果を出すことに、自然にこだわっていました。裏を返せば怠惰な性格とも言えます。周りに努力している人が多くて、必然的に勉強せざるを得ない環境に身を置かないと、堕落してしまう。だから、高校は進学校で過ごしました。

1浪の末に大学は商学部に進学。テニスサークルの代表を務めて楽しい毎日を送っていましたね。結局、2学年留年して、卒業までに6年掛かってしまいました。

そのような大学生活を送っていたので、就職活動は上手くいきませんでした。ほぼ全滅してしまって、1社だけ内定をいただけたのですが、内定者研修で「自分には合わないな」と辞退しました。その環境に厳しさを感じなかったからです。周りに優秀な人材がいて、努力せざるを得ない状況でこそ自分は頑張れるのですが、そのようなカルチャーとは遠かった。大学に6年間も通った自分が言うのも贅沢な話なのですが、卒業してバイトで生活費を稼ぎながら、就職活動を再開しました。

2度目の就職活動の軸は、4年の遅れを早期に取り戻せるかどうか。1浪と2留もあり、同級生よりも4年遅れて社会人になります。そのビハインドを取り戻すことができる業界はどこなのか。必死になって探しました。そこで出会ったのがコンサルティング業界です。ハードな業務を若いうちから任されて、優秀な社員たちと切磋琢磨できる環境に身を置くことで、急速に成長できると考えました。そんな中、縁あってPwC(当時はベリングポイント)から内定をいただいたのです。

総合商社や金融機関向けのリスク・コンサルティングを担当

――2006年にPwCに入社して、どのような業務を担当しましたか?

最初は苦労しました。商学部に在籍していましたが勉強をほとんどしていなかったので、会計の知識はありませんし、ExcelやPowerPointも使ったことがなかった。PCの使い方から習得を始めました。周りは優秀な社員ばかりなので、常にお尻に火がついた状態で努力しましたね。何とか基本的な作業ができるようになって、総合商社や金融機関向けのリスクマネジメントのプロジェクトにジョイン。当時はJ-SOX法(財務に関する内部統制報告制度)が日本に導入されるタイミングで、クライアントの業務プロセスを可視化したり、財務諸表上のリスクを評価する仕事などを任されました。

3年にわたって食らいついていると、徐々に仕事をこなせるようになり、クライアントからも評価されていました。この頃には、大学時代のロスは取り戻せたと感じていて、マネージャーや上司に対しても意見をできるように。

ただ、自分もマネージャーへのキャリアが見えはじめて、このままコンサルティング業界で働き続けるのが良いのか、悩みましたね。入社当初の目標は達成できて、現場の仕事は問題なくこなせるようになってきた。私は怠惰で面倒臭がりの性格ですから、このままだと楽をして成長が止まってしまう、と感じました。環境を変えなければ、自分は伸びなくなってしまうと、転職を決意したのです。

DeNAでは、データ分析のスキルを武器に、数々の主要事業の立ち上げを任された

――はじめての転職活動はいかがでしたか?

内定をいただいて迷ったのは2社でした。戦略コンサルティングファームとDeNAです。DeNAを選んだ理由は、事業会社で経験を積んでみたかったことと、南場社長をはじめとしたコンサル出身者が多くて自分に合っていると感じたからです。2009年にジョインしました。

――DeNAではどのような仕事を担当しましたか?

事業のグロースに関わるあらゆる業務を担当しました。入社当初はモバイル広告の営業で、その後はマーケティングやデータ分析も担当しましたし、事業責任者を任されることもありました。スマートフォンゲーム、コミュニケーションアプリやキュレーションメディアなど、DeNAでの主要事業の黎明期を任されることが多かったですね。

例を挙げると、ガラケーからスマホへの移行時期において、ゲームのマーケティングを担当したのですが、成功事例が世の中に生まれていない状況からトライしました。色々な仮説を作りながら、精度を磨いていくのが楽しかったですね。攻略法の無いパズルゲームを解く感覚で、様々な試行錯誤を行いながら正解を見つけたときは、大きな達成感を味わえました。

その膨大な試行錯誤の中で培われたノウハウは、社内でも重宝されました。どの番組で、どの地域に、どのCMを流せば、どれくらいダウンロードが増えるのかなど。かなりの精度で把握できていたので、アプリやゲームの開発責任者がプロモーションの相談に来ることも多かったです。

DeNAの凄さは、データへの徹底したこだわりにあると思っています。分析に必要なデータを設計するだけでなく、取得するタイミングやチャネルなども細かく考えて運用されていました。膨大なデータを日時で分析するスピード感も、本当にすごかったですね。

女性向けメディアのリスタートで、ユーザーの思いに応えた

――DeNAでは、他にどのような仕事を担当しましたか?

マーケティング以外では、事業マネジメントを任せてもらいました。特に印象に残っているのは、DeNA時代の最後の仕事でもある、女性向けメディアのリスタートです。立ち上げ時から私は関与していましたが、一度クローズした後、出版社さんとの合弁企業としてリスタートすることに。DeNAでの立ち上げ時はマーケティングやデータ分析がメイン業務でしたが、再開に当たっては事業マネジメントや出版社さんとの連携や、マーケティングの仕事もこなしました。そのメディアは多くのユーザーに支えられていて、再開を待ち望んでいる人も多かった。大変なことも多々ありましたが、ユーザーの思いに応えようと全身全霊で取り組みました。

そして、メディアのリスタートに目処が立ち、DeNAに戻りました。ただ、当時のタイミングでは自分が熱くなれるポジションが少なかった。ゲームの分析部に戻ったのですが、自分の一部のスキルだけを活かす形で、事業マネジメントやアライアンスなども含めた幅広い経験を活かすのは難しい。そこで、悩んだ末に、約10年にわたってお世話になったDeNAから、転職することにしたのです。

ベーシックに執行役員としてジョイン。目標達成の喜びは、PwCでもDeNAでも味わったことがなかった

――2019年、DeNAを退職してジョインしたのが、Webマーケティング企業のベーシックです。選んだ理由を教えてください。

執行役員として事業運営を経験できることと、DeNAで培ったメディアビジネスの知見を活かせることが、入社の主な理由です。BtoC、BtoBの様々なメディアを担当しました。

組織の規模は40〜50名。DeNAでも同等の人数をマネジメントした経験はありますが、勝手が全く違ったので学ぶことが多かったです。DeNAには、プロフェッショナルな意識を持った優秀な社員が多く、組織はロジックで動く。ベーシックは若手メンバーが大半を占めていました。ロジックだけでは動かなくて、メンバー一人ひとりのハートをつかむ必要があります。ですから、対話に多くの時間を使いました。一人ひとりの内面にも向き合いながら、組織のビジョンやミッションを共有することで、成果をあげてくれる。そんな甲斐もあって、皆で目標を達成したときは、本当に嬉しかったです。あの喜びは、PwCでもDeNAでも体験したことはなかった。格別な瞬間でしたね。

ベーシックに来て学んだことは、今のChatworkでの仕事でも活きています。BtoBの商材を扱った経験はそのまま活用していますし、社長との距離が近かったので、経営者と対峙する際に必要なマインドも学ぶことができました。Chatworkも経営ボードとの垣根は無くフラットなので、事業の成長につながることは何でも進言しています。

戦略ドリブンな事業運営、圧倒的な事業のポテンシャル、社会貢献性の高さに魅力を感じて、Chatworkへ

――そして、2021年7月に、Chatworkにジョインしました。そのときの経緯を教えてください。

人材紹介会社からは、様々なポジションを紹介いただきました。BtoC企業でのCMOや、BtoB企業での事業責任者など、幾つかのオファーをいただきましたが、Chatworkに決めました。その理由は、戦略ドリブンな事業運営に興味を持ったからです。COOの福田さんから、ネットワーク効果(既存ユーザーが新規ユーザーを呼び込む効果)やProduct-Led Growth戦略(プロダクト自体を成長のドライバーとして定義する戦略)についての話を聞いたのですが、極めて合理的で洗練されているように感じました。

すでに出来上がった会社ではなく、圧倒的にスケールするのはこれからという事業フェーズにも惹かれました。Chatworkは、「2024年に中小企業マーケットでシェア40%を占めるビジネスチャットになる」という野心的な目標を、中期経営計画で掲げています。DeNA時代でも体験した、「誰も解いたことのない問題」にチャレンジできるのは魅力的に映りました。

さらに、その目標達成は社会問題の解決につながっています。まだまだアナログな中小企業の職場に、ビジネスチャットの活用が広がることで、より創造的な働き方にシフトできる。中小企業の生産性が向上すれば、再度日本が海外と肩を並べることができるかもしれない。目の前の問題解決が、社会の問題解決にしっかりとリンクしている。そのような仕事ができるのもChatworkならでは、と感じて入社を決めました。

介護、医療、建設など、業界ごとに働き方のDX戦略を描く

――入社当初、具体的にはどのような業務を担当しましたか?

事業企画と戦略推進が所属していた組織のマネジメントを任されました。事業企画は、Chatworkのビジネスサイド全般で活用するデータに関して、基盤を整備して、分析して、運用するチームになります。『Cha道』にも登場した池田さんがリードしています。

戦略推進は、介護、医療、建設など、業界別の戦略を立ててグロースを支援するポジションです。セールスやマーケティングチームを巻き込んで、その戦略の実行を促しています。ここで大切にしているのが、業界特性を正しく把握した上で、それに適応した戦略を実行すること。たとえば、介護業界と建設業界では、働き方も違えば、業務上のコミュニケーション手法も全く異なります。それぞれの業務課題を肌身で感じた上で、働き方改善のストーリーを設計して「Chatwork」の価値を実感していただく。言わば、現場のDX戦略を練り上げるのです。その業界ごとのDX戦略の実現を支援するために、セールスやマーケティングチームの具体的な動きに落として、マネジメントを行うのが戦略推進の仕事になります。

中小企業向けの戦略の立案には、圧倒的な深みがある

――戦略推進の仕事において、どのようなやりがいがありましたか?

日本の会社の99.7%を占めるのが中小企業です。そのDXに対して、まだ有効な解を国として見いだせていない。まさにDeNAでアプリのマーケティングを担当していたときのように、未開の地を開拓しています。

当然、そこには困難が伴います。中小企業で働く皆さんは、ITリテラシーが必ずしも高くありません。コロナ禍が追い風になり、DXやリモートワークの必要性が叫ばれても、ビジネスチャットの活用まではなかなかたどり着かないのが現実です。

中小企業の皆さんは目の前の商売に命を掛けています。そこに「便利なツールがあるので使ってください」と軽く提案しても、使っていただくのは難しい。私たちが皆さんの働き方にしっかりと向き合って、啓蒙活動から進めていく必要があります。単にお客様の業務を理解するだけではなく、皆さんが日々の業務の中で「Chatwork」を使っているシーンを、鮮明にイメージすることが大切です。スマホゲームやメディアを扱うよりも、圧倒的な深みがある世界だと感じています。だからこそ、この仕事では新しいことを次々に発見できますし、お客様からの喜びの声が届くと嬉しいんですよね。

スマホゲームのビッグデータと比べても、質・量ともに遜色はない

――これまでのキャリアで培ってきたスキルを、どのように活かしていますか?

業界の構造を理解して、現場での課題を洗い出すのは、コンサルタントでの経験が活きています。事業企画やデータ分析は、DeNAで担当していた業務に近いですね。また、ベーシックでのBtoB領域の知見も活用できているので、これまでのキャリアで培ったことは、非常に役に立っています。

データについては、DeNAで扱っていたビッグデータと比べても、質・量ともに遜色はありません。双方とも膨大なトラフィック量を扱うのですが、そこからの仮説立てが大きく異なります。ゲームやスマホアプリの場合は、自分自身がユーザーでもあるので仮説が立てやすい。たとえば、ゲームのインストールや離脱のタイミングは、ある程度の予測がつけられますが、「Chatwork」での仮説立ては難しい。中小企業の皆さんが、なぜ突然使うのをやめたのか、筋の良い仮説を立てることは困難です。だからこそ奥深いし、未開の地を開拓するモチベーションも生まれる。この仕事の面白いところだと思います。

――働く環境としてのChatworkはどのように感じていますか?

自分には合っている環境だと思います。Chatworkは、「すべての人に、一歩先の働き方を」をビジョンに掲げているので、働き方への取り組みが自社でも進んでいます。入社して1年半が経ちましたが、オフィスには10回も行ってないですね。コミュニケーションもチャットが中心ですし、効率的に働けているので、面倒臭がりの性格の自分には合っていると感じています。

日本の働き方が変わる。その景色を目の当たりにするまでは、今の仕事を続けたい

――今後の展望はどのように描いていますか?

2023年1月から、組織の再編もあり、任せられるポジションが変わりました。コミュニケーションプラットフォーム本部の副本部長が主務で、マーケティングユニットのユニット長も兼務しています。コミュニケーションプラットフォーム本部は、「Chatwork」のアカウント獲得を推進する組織です。その中にマーケティングユニットが配置されていて、マーケティング全般を担います。これらのチームの戦略を描き、日々の業務のマネジメントを行うのが、今の私の仕事です。

2024年末までに、中小企業の40%のシェアを獲得するという中期経営計画が掲げられている中で、この2023年は非常に重要な1年になると捉えています。ここで大きくシェアを伸ばすことができれば、ユーザー同士のネットワーク効果でさらに拡大できる。そのためには、特に新規獲得のマーケティングがカギになると考えています。

――最後に、達山さん自身のキャリアの未来像について教えてください。

正直、あまり深くは考えていません(笑)。今年はマーケティングに注力しますが、翌年以降は分からないですね。自身のスキルや経験を総動員して、「Chatwork」のグロースに貢献できるのであれば、業務内容にそれほど大きなこだわりはありません。

入社して1年半が経ちましたが、自分自身の成長実感も持てています。PwCで3年、DeNAで10年、ベーシックで2年を過ごしましたが、Chatworkでの1年半は最も濃密な時間でした。

「Chatwork」が日本の働き方を変えている、その景色を目の当たりにするまでは、今の仕事を続けていると思います。中小企業で働く40%の皆さんが「Chatwork」を使ってくれれば、生産性は大幅に向上しているはず。日本の未来にも貢献できると信じています。

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷FORT TOWER)