Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
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セガ、メルカリの人事から、Chatworkへ。急成長に耐えうる強い組織を、アジャイルで作る。

新卒で入社した会社から、一貫して人事としてのキャリアを積み重ねてきた武田。SIer、セガ、メルカリ、資生堂、そして、Chatwork。規模も事業フェーズも異なる会社で、様々な採用・人事施策を形にしてきました。10年以上に渡るキャリアで培ったものや、人事としての仕事のこだわりについて、詳しく聞きました。

■プロフィール

武田 遼介
ピープル&ブランド本部 HRBP&TA*部 マネージャー 兼 組織企画部 兼 CTO室

大学のビジネス系学科を卒業後、2011年4月、SIerに入社。人事・総務部に配属され、採用や研修業務などをほぼ一人で担当。2015年7月にセガゲームス(現:セガ)に転職して、採用や人事企画を手掛ける。2018年5月にメルカリにジョイン。カスタマーサービス部門の人事(HRBP、General affairs)組織のマネージャーを経験後、人事ERPの全社導入をPMとしてリード。2021年8月に資生堂に転職し、2022年5月にChatworkに入社。全社のHRBP(部門人事)・中途採用を担う部署のマネージャーと、プロダクト開発部門のHRBP、組織企画部(全社人事施策の企画)を兼任している。

*HRBP&TA:Human Resource Business Partner & Talent Acquisition

SIerに「ひとり人事」として入社。「むちゃぶり」への対応で成長できた

――学生時代に取り組んでいたことと、最初に入社した会社について教えてください。

出身は横浜市です。商業高校で簿記を勉強したことで、数字の大切さを学ぶことができました。P/LやB/Sを見ながら、全てを数字で表現する世界観に惹かれ、大学はビジネス系学科に進学。情報処理の授業が楽しくて、IT系企業に興味を持ったのです。

就職活動を進める中で、大学の就職課で紹介されたのが、あるSIerでした。職員の方に「直受けの仕事が多くて、開発から運用・保守まで一気通貫で携わることができる会社ですよ」と案内されて応募したのがきっかけです。

キャリアのスタートも、人事でした。営業コンサルタントの部署へ配属予定だったのですが、「人事のポジションが空くので、よければ人事として働いてみない?」と打診され、人事からキャリアをスタートできるのは希少性が高いと感じて、その道を選びました。

最初に担当したのは新卒採用です。多くの予算を割けない中、毎年数十名を採用する必要がありました。会社の知名度もほとんどなかったので、各大学の合同説明会で直接口説くことにフォーカス。大企業向けのシステム開発実績や、未経験者を3ヶ月でエンジニアに育てる”充実した研修”をアピールするなど、目の前の学生をアトラクトすることに全力を注ぎました。連日の説明会を乗り越え、何とか採用目標数を達成することができたのです。

――採用以外の業務も担当したのでしょうか?

「ひとり人事」として、多くの業務を担当しました。社内のメールサーバーを再構築するプロジェクトに参加したこともあります。オンプレ(自社運用)のメールサーバーが停止したときに、社長から「何とかしてくれ」と頼まれたので、私がPMを担当して社内のエンジニアに声を掛け、改修作業を行いました。そのような「むちゃぶり」とも思えるものに対応することは、嫌いではありません。前例の無い課題に対して、解決策を短時間で決めていく。そして無駄のない形で実行するのが性に合っていると思います。

セガに転職。競合企業に勝つために、早期1Dayインターンをスタート

――4年勤めたSIerを退職して、2015年にセガゲームス(現:セガ)に転職します。その背景を教えてください。

人事としてレベルアップしたかったからです。SIerでは、幅広い人事業務を担当していましたが、一人でやれる範囲に留まっていました。もう少し大きな会社で、未知の課題に組織として挑戦したかった。スマートフォン向けゲームを開発して成長途上にあったセガゲームスを選んだのは、その志向にマッチしたからです。

入社後は、新卒採用をメインで担当。当時のスマホゲーム業界では、DeNAやGREEが急成長していて、採用力も非常に高く、セガの新卒採用は苦戦を強いられていたのです。

そこで、ターゲットとなる学生が、どのような就職活動を行っているのか、徹底的に調べました。ゲームプランナー志望の学生は、いつ就職活動を始めているのか。すでにプログラミングの実績がある情報系の学生は、どのように情報収集をしているのか。レベルの高い芸術系の学生をデザイナーとして採用するには、どのような接点を持てばいいのか。

様々な情報を分析すると、「ほとんどのターゲット学生は、3年生の夏には就職活動を終えている」ことが分かりました。そこで、採用活動を大幅に前倒しし、早期1Dayインターンシップを実施することにしたのです。ただ施策を早めるだけでは、競合企業に勝つのはなかなか難しいので、学生に伝えるメッセージも、採用協力いただくマネージャーと共に刷新しました。『ソニック』『龍が如く』などの実績を全面に出しながら、「セガではオリジナルIP(IP:知的財産・キャラクター)をゼロから作れる」とアピール。その年の新卒採用は大成功しました。劣勢をどう跳ね返すか。その戦略を立てて、自ら推進するのは楽しかったですね。

プロの落語家を呼んだり、デザイナーと美術館で学ぶ企画を実施

――採用以外では、どのような業務を担当しましたか?

人事企画や研修企画も担当しました。かなり抽象度の高い課題にアプローチする必要があるため、理想の姿を明確に描いて、ギャップを埋めていくアプローチを取りました。ただし、最初は周囲を巻き込むのに苦労しましたね。抽象的な目標を数値に置き換えたり、施策の妥当性を定量的に示した経験がなかったので、何度も何度もフィードバックをもらいました。ここで鍛えられた経験が、その後のキャリアで活きていると感じています。

多様な価値観に触れることができたのも財産です。デザイナー、プログラマー、プランナーなど、セガには様々な専門職が所属していて、「新しいものや楽しいものが好き」な社員が多い。福利厚生として、社員が自由に発想して企画を提案し、応募人数が多ければ実行できる施策を展開しました。この施策を始めてみると、会社にプロの落語家さんを呼ぶグループがいたり、ボードゲーム大会が開催されたり、社内が盛り上がるきっかけを多く作れる制度になりました。私もデザイナーと美術館に行く企画に参加したのですが、プロが解説してくれるので勉強になりましたね。

一人ひとりの専門職の価値観に触れることができて、人事の仕事を見直すことができました。これだけ多様な人材が所属しているのは、会社にとって大きな財産ですし、画一的な施策を実施するのは、人事の本当の仕事ではないなと。一人ひとりに寄り添うことの大切さを実感しました。セガでの4年間で、人事としての視野が広がりましたし、視座も高まったと思います。

メルカリでは、仙台や福岡の拠点を行脚しながら、CS独自の人事制度を作り上げた

――そして、2018年にメルカリへと転職しました。その背景を教えてください。

セガの優秀な社員には、ベンチャー出身の人が多かったので興味を持ちました。成果にコミットして、とにかく仕事が速かった。彼らが育った環境に身を置くことで、自分も成長したかったのです。たまたまメルカリのイベントに参加した際に「カスタマーサービス(CS)部門の採用に困っている」という話を聞いて、自分でも貢献できることがありそうだと感じて入社しました。

入社後は、CS部門の採用を経験した後に、CS部門の人事チームのマネージャーに就任しました。500名の大組織に対して、あらゆる人事施策を推進するのがミッションです。最初に手をつけたのは、評価制度でした。全社の評価基準は抽象度が高く目標設定やフィードバックが難しく、不安に感じているメンバーも多かったのです。

大変な仕事でしたが、CS部門に適した形で運用が可能な制度を作り上げることができました。たとえば、お客様対応のレベルをスピードや数で評価したいCS部門と、全社の制度との整合性を取ることにも取り組みました。また、制度を作るだけでは、現場メンバーに納得してもらうのは難しいので、仙台と福岡の拠点をVP(Vice President)と共に行脚しました。直接メンバーに説明して意見を集め、改善を続けるという、とても泥臭い仕事でした。しかし後日、現場のマネージャーやスタッフから感謝の言葉をもらえたのは、嬉しかったですね。

メルカリの急成長を支えるために、人事ERPの導入をリード

――CS部門人事の次は、どのような業務を担当しましたか?

CS部門の人事マネージャーを務めた後、メルカリ全社に影響を与える仕事をしたいと考えて、人事ERP「Workday」の導入をリードしました。経営陣の承認を取るフェーズから始めたのですが、かなりタフな仕事でしたね。それまでは内製の小規模な管理システムを運用していて、その評判がとても良かった。ただ、メルカリの社員数が急激に増えていて、このままでは行き詰まることが分かっていました。経営陣に事業グロースのためには「Workday」が必要であることを、現状の課題を整理した上で、かなり密度のある上程資料を作成し訴え、何とか承認を得ることができたのです。

どのような管理が必要になるか、CS部門で肌で理解していたのは大きかったですね。組織が急成長する中で生まれる、新しい課題の解決に取り組んできました。そこで培ってきたノウハウを活かして、メルカリ全社で起こりうる課題を未然に防ぐことができる。そう考えていました。どのようなデータベースが必要なのか、採用管理システムとどのように連携すればいいのか、など、クリティカルな仕様については、クリアにイメージできました。システムに関する知見は乏しかったので、社内外のエンジニアと密にコミュニケーションを取ったり、自分でもPythonを覚えてプログラムを書いてみたりと、様々な取り組みを行った結果、非常に短い期間で実装と運用を開始できました。

メルカリから資生堂へ。大企業の「人事DX」に挑むも、、

――人事として成果を挙げていた中、メルカリを退職します。その理由を教えてください。

「Workday」のプロジェクトが完了して、ふと気づいたのです。やはりメルカリの最大の強みはカルチャー。創業者の思想や、歴代の人事の努力があったからこそ、ここまで成長をしてきた。今度は自分が、大元になる強みを作ってみたい、と。

そこで、ベンチャーから一転して、大企業の資生堂に転職したのです。メルカリと同じく人事系のシステムを刷新して、「人事DX」を進めて組織を改革するタイミングでした。4万人を超える大企業を、メルカリのメソッドで変革できるかもしれない。その機会とタイミングに大きな魅力を感じました。

マネージャーとして入社し、人事ERPのリプレイスや導入を進めたのですが、正直に言いますと、その壁は高かったです。多様なステークホルダーと合意形成を図りながらプロジェクトを進めることは大企業ならではで、これまでにない経験を積むことができた反面、進捗がスローペースだったので、やりがいを維持しながら業務に邁進することが難しかった。一部のシステムは無事に各拠点へローンチできたのですが、もう少し手触り感が得られ、スピード感を持って経験を積める環境の方が自分の強みを活かせると感じていたので、退職をすることにしました。大企業で試行錯誤を重ねることで、人事としての視野は広がったと思います。

Chatworkの組織を強くして、急成長を支援したい

――2022年5月、資生堂からChatworkへジョインしました。その背景を教えてください。

手触り感のあるサイズの組織で、これから拡大するフェーズにある会社を探しました。そこで出会ったのがChatworkだったのです。入社した当時は、従業員が250名くらいで、売上高は年平均40%以上で成長していました*。この拡大のスピードを続けるためには、組織力の向上が必要になるので、私自身が貢献できるシーンも多くありそうだと感じたのです。

また、面接で役員陣とお話しした際に、カルチャーを大切にしていると思いました。会社が急成長するフェーズでは、このような目に見えない価値は疎かにされがちですが、Chatworkの経営陣は違いました。カルチャーを大切にするスタンスは、メルカリと近いです。しかも、規模はまだまだ小さいので、自分自身が貢献できる余白が大きいと感じました。

* 2021年は前年比+47.9%成長(Chatworkセグメント)

HRBP・中途採用チームのマネジメントを担当。制度の改善やブランディングを手掛ける

――Chatwork入社後は、どのような業務を担当していますか?

「HRBP&TA部」のマネージャーを務めています。「HRBP」は部門(本部)担当人事を意味しています。それぞれの本部組織を強化するために、人事施策を企画し遂行していく役割を果たしています。「TA」は中途採用(Talent Acquisition)を意味していて、全社の採用業務を統括する役割です。これらのミッションを6名で進めていて、私がチームのマネジメントを担当しています。

また、私自身もチームのマネジメントと並行して、プロダクト本部のHRBP業務を推進しています。入社してすぐは、プロダクト本部の人事的な課題を明らかにすることがメインミッションでした。CTOの春日さんと週に1回、1on1ミーティングを行い、現場のエンジニアやデザイナーと対話を重ねる中で、組織課題に優先順位を付けることができました。これからは人事制度の改善と社外へのブランディングにも注力する予定です。モノ作りに集中できる組織を作りながら、働く環境の良さを社外に発信していく。その双方を担っていきます。

人事業務にスクラムの手法を導入。課題を見極め、アジャイルに打ち手を実行

――入社後に、これまでの会社と比べて違いを感じたことはありますか?

プロダクト本部のHRBPを担当することになって、最も驚いたのが「DevHR(Developer Human Resources)」の存在です。人事や採用のプロジェクトを統括するバーチャル組織で、スクラムの手法を用いて業務を進めています。プロダクト本部のEM(Engineering Manager)や、スクラムマスター、そして中途・新卒採用担当と私でスプリントを回しています。1週間を1スプリントに設定して、しっかりと課題を見極めてアジャイルに打ち手を実行しているのですが、かなり面白いですね。

ここまでのスピード感で、気持ち良く人事業務を進められた経験はありません。これからの人事には、定常的なタスクをこなすだけではなく、現場の課題を抽出して解決する動きが求められるはず。大企業においても、ベンチャー企業においても、スクラムの手法を人事業務に持ち込むことで、時代の流れを先取りできると感じています。私自身も認定スクラムマスターの社外研修を受けて、人事の立場からもこの手法を推進していく予定です。そして、Chatworkで確固たる実績を作って、そのノウハウを社外に発信することで、何らかの形で人事の現場の進化に貢献できればと思います。

開発者一人ひとりのスキルは非常に高い。そのレベルを維持しつつ、グロースしたい

――さらに少し先の展望を教えてください。

Chatworkの経営計画の実現のために、人や組織の面からサポートすることです。「中期経営計画」では、「2024年に中小企業向けビジネスチャット市場で40%のシェアを獲得して、No.1になる」という野心的な目標を掲げていますが、達成できるだけの経営力や組織力は十分にあると思っています。

現在、私がHRBP業務を担当しているプロダクト本部は、100名前後の規模です。この規模の組織で、インフラ化したチャットサービスを開発・運営しているのは凄いなと感じています。現場のエンジニア、プロダクトマネージャーやデザイナーのポテンシャルは非常に高いので、十二分に発揮できる環境を人事的な側面から作り、パートナーとして支える。それが私の仕事になります。

中期経営計画を達成し、様々な新規サービスを展開するためには、組織を今まで以上のペースでグロースさせる必要があります。現状の組織のレベルを担保しながら、社員を増やすのは難易度が高いですが、何とか勝ち筋を見出していきたい。一人で実現するのは難しいので、CTOや現場の皆さん、そしてDevHRと一丸になって、組織を成長させていきたいですね。強固なカルチャーを持ち、一人ひとりが自立して働いているChatworkだからこそ、他社には真似できないような成長が実現できるはずです。

世の中に働きがいを生み出すために、Chatworkの組織を強くする

――最後に、今後のご自身のキャリアは、どのように考えていますか?

明確なキャリアプランは掲げていません。世の中の流れや市場環境は変わっていくものですので、今このタイミングでやりたいことができる、チャレンジに没頭できる環境に身を置きたい。その積み重ねで、なりたい自分になれると考えています。まずは、Chatworkのこの先を見据えながら、人事課題・組織課題を解決することで、メンバーのポテンシャルをより発揮できるようにすることが最大の関心事です。その先のことはあまり意識していません。

Chatworkのミッション「働くをもっと楽しく、創造的に」にも、共感しています。過去には、「働きがい」を感じられていない社員も見てきました。そういった方に対して、無駄な業務を排除して効率的に働ける環境にすることで、働きがいを持っていただけるのではないかと。本質的にやるべきことに集中できれば、自然と働きがいが生まれ、毎日が楽しくなるはず。そのきっかけに「Chatwork」というプロダクトはなりえると思うのです。私自身も、メルカリ在籍時にチャットツールを使って、一気に仕事が効率的になりました。同じような体験を、世の中の皆さんに提供したい。そのためにもこの会社の組織を強くして、もっと成長させたい。そう日々願いながら、仕事をしています。

 

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)