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「ただ続けていたら、道が開けた」試行錯誤の末に見つけたデータエンジニアという生き方

データ分析・活用のための基盤を構築するデータエンジニアは、近年非常に注目を集めている職種のひとつです。事業改善のためにデータを活用する企業が増えていることから、その業務の重要性は増しています。

今回インタビューするのは、Chatworkでデータエンジニアリングを担う三ツ橋和宏。彼は自身のキャリアを振り返って「決して華々しい仕事ばかりではなく、泥臭い仕事がたくさんありました。けれど、そういった仕事と真摯に向き合ってきた結果、道が開けたように思います」と語ります。三ツ橋のこれまでの歩みについて話を聞きました。

■プロフィール

CTO室(次世代データ分析基盤エンジニア)
三ツ橋 和宏

次世代データ分析基盤構築担当としてChatwork株式会社へ2021年9月入社。Chatwork入社以前はアド系ベンチャーのエンジニアとして、サーバー運搬から始まり、開発、新人育成と様々な役割を経験。特に大規模データ処理の効率化に情熱を注ぐ。サービス拡大と比例して日々難度が増していくアド系データ処理にて、地獄の泥臭運用から生還した経験から、最先端のクラウド(マネージドサービス)を乗りこなして運用労力を最小化することに無上の喜びを感じている。

華やかなネットベンチャーに憧れてITの世界へ

――三ツ橋さんがITの世界を選んだきっかけを教えてください。

もともと大学時代は理工学部経営工学科で、プログラミングや経営理論など幅広い分野の勉強をしていました。独学でWebアプリケーションやサーバーの仕組みを勉強して、学生向けのポータルサイトを作ったりしたこともあります。

就活の時期になって、大企業の説明会などにも参加しましたが、そういうところで働くイメージが持てなくて。最悪の場合、自分で起業したり、士業のような自営業をやったりしてもいいかなと思って、そのまま卒業しました。今考えるとあまりにも無謀でしたね(笑)。今の大学生の皆さんにはこのようなやり方はおすすめしません。

すると、それを心配してくれたのか友人が「自分が入社したネットベンチャーが次年度向け説明会やるから参加してみないか」と誘ってくれたため、参加してみました。説明会で、その会社は華やかなネット起業家を輩出するような集まりが母体であると知り、すごく面白そうだと感じました。

すぐに入社したいなと思ったのですが、会社の社員に聞いてみると「新卒でエンジニアは雇っていません」とのことで……。ダメ元で、大学時代に作ったものをまとめたプレゼン資料を使って面接で強引に説明したら、気に入っていただけたようで、社長から「明日から来なさい」と言ってもらい、なんとか新卒エンジニアとして入社させてもらうことができました(笑)。歴戦の猛者のようなエンジニアの集団の中に、何も知らないやつが入るような形でした。周囲の皆さんに育てられながら、Webサービス開発全般を経験していきました。

――入社後はどのようにスキルを磨いたのでしょうか。

スキルの高い猛者のようなエンジニアの方々のなかに強引に入れていただいたので、学生あがりの自分のスキルは、全くと言っていいほど通用していませんでした。体力はあったため、毎日なんとかついて行こうともがいていました。入社1年目はほとんど記憶がないくらい、何かに必死で取り組んでいましたね(笑)。

余談ですが、私の専門分野であるデータエンジニアリングとの出会いもこの会社です。データエンジニアリングは当時、大切な業務ではあるものの日陰の存在でした。手間がかかる業務だと認識されており、先輩エンジニアが他の業務で手が回らないこともあって、キャリアの浅い私が担当するようになったことがきっかけです。

地味な仕事だったデータエンジニアリングが一気に花形へ

――そのネットベンチャーでは酸いも甘いも経験されたとか。

入社2年目のときに会社が上場しました。自分自身は先ほど述べたような状況だったため、特に何かに貢献したわけではなかったのですが、憧れていたベンチャーの華やかさを一気に経験できましたね。わかりやすいところでは、テレビで見るような綺麗な高層ビルへ移転してオフィスが一気にグレードアップしたり、給料が上がったり、会社の仕組みも整ったり。「これぞベンチャー」という醍醐味だと思いました。

ただ、その華やかさは長くは続きませんでした。リーマン・ショックという、当時「100年に一度の出来事」と言われたレベルの金融ショックが起きて、会社の資金繰りが悪化して。そこで、私が出向していたアドテクノロジーの会社に転籍することになったんです。

――華々しい上場からの再出発とのことで大変だったと思います。

それが、当時はあまり過酷だとは思っていませんでした。オフィスは駅から遠い雑居ビルに変わり華やかさはなくなりましたが、成功すれば全てが報われるという確信みたいなものがありました。アドテクノロジーが流行し始めた時期で、自分たちが最先端のことをやっているという実感もあって。相変わらず上手くいかないことも多く、泥臭い開発が多かったですが、下っ端だったので「最後の砦になる」くらいの覚悟は持って取り組んでいましたね。

――アドテクノロジーを扱う会社で印象に残る経験はありますか?

当時は自社運用のオンプレミス環境でプロダクトを運用していたのですが、データ量が増えるにつれてどうしても処理が追いつかなくなりました。月次のレポートを生成するのに半月かかることもザラになるほど急激にデータが増えていたので……。そこで、まずはデータ処理だけAWSのAmazon EMRというサービスを使ってみることにしました。

移行した結果、レポート生成に半月かかっていた作業が3日間でシュッと終わるようになりました。加えて、自分たちで実施していたサーバ搬入や部品交換などの物理作業もなくなり、開発に集中できるようになりました。

また、クラウドは使った分だけ払えばよく、料金も後払いというところもインパクトが大きかったです。それまでは数ヶ月後の需要を見越してインフラを前払いする必要があったので、コストが無駄になるケースも多くて。こうしたさまざまな要素を鑑みて「革命だ」と感じました。以降、プロダクトのインフラはクラウドを前提とする方針が定着しました。

クラウド推進に伴い、データエンジニアリングに関してもさまざまな施策を積極的に実施する流れが生まれました。それまで、データエンジニアリングは社内で自分くらいしかやる人がいない泥臭い仕事でしたが、一気に花形になった感じがあります。それがキャリアの転機となり、今につながっています。

Chatwork社員のデータリテラシーの高さに驚いた

――Chatworkへ転職した経緯を教えてください。

2019年頃から、個人情報保護の規制が厳しくなるにつれて、他社のプラットフォームに導入してもらい、サービスを提供する形でアドテクノロジーを行うのが難しくなりました。私がこれまで取り組んできた大規模データを扱う技術が、アドテクノロジーの分野では活かせなくなりそうだと如実に実感するようになりました。

世の中のデータが加速度的に増えているのに、自分のスキルを活かせない状況を変えたいと思い、“データが集まるところ”という軸で転職を考えました。そのなかで、Chatworkが求めるデータエンジニアリングのスキルと、私が持っているスキルがマッチしたのが一番大きいです。それに、まだまだChatworkは企業として発展途上のフェーズであり、自分の技術的なスキルのみらず、組織作りの経験も活かせそうだと思えたのが決め手でした。

さらに、多くの人のビジネスをサポートする「Chatwork」というプロダクトに携われるのも魅力でした。「Chatwork」は、大企業から中小企業まで幅広く導入されており、リモートワークなどの働き方改革のど真ん中にいるツールです。日本企業の大部分を占めている、中小企業の生産性向上のサポートを通して、社会に貢献できる会社だと感じました。また、純国産企業でありながら、海外のテックジャイアントと勝負できる可能性がある点にも惹かれました。

――入社後にChatworkの良さを感じた点はありますか?

入社前から、Chatworkは技術的に尖ったエンジニアが多いと知っていました。入社後もその認識は変わっておらず、優秀な人たちと一緒に仕事ができており刺激的です。入社前のイメージとのギャップとして感じたのは、エンジニア以外のメンバーのデータに対する考え方です。データ活用に力を入れたいと考えている人が多く、データに関するリテラシーやモチベーションが高いですね。

私が担当しているプロジェクトは、エンジニア以外の職種の人と関わる機会が多いんですが、新しいテクノロジーを積極的に使っていく意識が強い人ばかりです。エンジニア以外の職種から新しい技術への拒否反応が出るケースはありがちだと思うんですが、Chatworkではそれが一切ありません。非常に仕事がしやすく、そして意外でした。

――現在、Chatworkでどのような業務をされていますか?

データ分析基盤を最先端のアーキテクチャにリプレイスするプロジェクト*を、第1号社員として推進しています。「Chatwork」のデータ分析基盤はもともと、あるデータプラットフォームを用いて構築されていました。しかし、そのアーキテクチャのままだと、扱うデータ量が増加するにつれて、各種コストも増大してしまうという課題があります。

そこで新しいデータ分析基盤では、クラウドデータプラットフォームのSnowflakeを導入しようと構想しています。SnowflakeはChatworkが構想する中長期経営計画のデータの使い方にフィットしており、従来のデータプラットフォームのまま開発を続けるのに比べて、格段に開発・運用コストが下がる見込みです。

また、Snowflakeはデータクラウドという形でデータ利活用を促進しており、「データを自社に留まらせない世界を目指す」という先進的なミッションを掲げています。かつて自分がインフラのクラウド化で経験したような革命が、データ利活用の領域でも起きるのではないかと期待しています。

余談ですが、日本でSnowflakeの本格的なユーザーコミュニティができたのが2021年9月で、それほど新しい技術です。そして、ChatworkはSnowflakeの認知拡大を担う外部エバンジェリストの称号をいただきました。

また、コミュニティ活動へ参加して、そこで得た知見を自社のプロジェクトにも活用できたりと相乗効果が生まれています。つまり、データ分析基盤構築のプロジェクトに携わることが、自社だけではなく他社にもポジティブな影響を与えられると感じています。

*参考:プロダクトへの貢献を目指す、Chatworkの次世代データ分析基盤 - Chatwork Creator's Note

「ただ続けていたら、道が開けた」

――これまでの三ツ橋さんのキャリアを総括すると、どのような言葉になるでしょうか?

「ただ続けていたら、道が開けた」ということです。世の中にはいろいろなタイプの人がいます。中には、自分が何かに取り組む前に「正解らしき道」を先に探して、効率の悪そうな選択肢をはじめから除外するタイプの人もいると思います。でも、道を探す時点で「コッチだ」と決めてしまうのは、可能性を狭めている場合もあるんじゃないかと思うんです。

私自身の場合、決してはじめから「データエンジニアとしてキャリアを歩もう」と考えていたわけではありませんでした。キャリアを振り返ると、どうにも通用しないところから始まったり、誰もやりたがらないことをやり続けたり、ふりだしに戻ってやり直したり、時代の波に乗ってみたらクラウド化に伴ってデータ活用が主役になったりと、さまざまな出来事がありました。

大変な経験もしましたが、自分なりにその時その時でやるべきことに前向きに取り組み続けた結果、今のキャリアの道が見つかった感じがあります。未来が見える人なんて誰もいません。だからこそ「常に最短経路を」と考えるよりも、遠回りと思える道に入ってみたり、色々な道を経験しておいたりする方が、むしろ良いのではないかと。そうすると足腰が鍛えられて、思いもしなかったチャンスの波が来たとき、柔軟に乗れる可能性が高くなるのではないかと最近は思います。

――エンジニア個人としての目標はありますか?

ゆくゆくは周りの人を巻き込んで、新しいプロジェクトを立ち上げたりリードしたりしていけたらいいなと思います。今は次世代データ分析基盤プロジェクトをある程度任せてもらえていて、すごくいい経験ができています。ここで信頼を積み上げていき、これからさらに多くのチャレンジをしていきたいです。

――新しく入社するデータエンジニアに期待していることはありますか?

データエンジニアはまだ新しい職種なので、経験者はそれほど多くないと思います。だからこそ、必要なスキルを持っていれば、他のジャンルのエンジニアからの転向も大歓迎です。会社のフェーズとしても、これから多くのことに挑戦できるはずです。ぜひ私と一緒に最先端の次世代データ分析基盤を構築していきましょう。

 

撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)