Cha道

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入社1ヶ月で「Chatwork Mobile」の企画を実現。アジャイルな事業開発で、500万人に新サービスを提供する。

2021年12月にChatworkにジョイン。事業開発チームに所属する水口は、SIerや人材系の会社で数々の新規事業の成功と失敗を重ねてきました。入社後すぐに企業向けMVNO事業「Chatwork Mobileの企画が承認され、サービス責任者を務めながらも、さらなる新事業の構想を練り続けています。その発想の原点は何なのか。事業を成功に導くために、どのようなこだわりを持っているのか。過去の泥臭いエピソードも含めて、詳しく、そして熱く、語ってくれました。

■プロフィール

水口 奉哉
ビジネス本部 ビジネスデベロップメントユニット
DXソリューション推進部 事業開発チーム

福井県出身。大学卒業後、2006年4月に電子帳票サービスを展開する会社に入社。主に営業としてファーストキャリアを積む。2012年、SIerに事業企画として転職。複数の新規事業を立ち上げる。2017年に人材系サービス企業で事業企画を務め、2021年12月にChatworkにジョイン。2022年4月に自らが責任者を務める企業向けMVNO事業「Chatwork Mobile」をローンチ。その他の新規事業も同時並行で開発している。

「お前の力で売れてるんじゃない、勘違いするな」

――どのような形でキャリアをスタートさせましたか?

大学を卒業して、電子帳票サービスを提供する会社に入社しました。100名弱の規模でしたが、業界トップクラスのシェアを誇るサービスを展開していることに、魅力を感じて選びました。入社後は営業職に就き、転機になったのは2年目です。有名な製品を扱っていたので、新人時代から一定の売上を獲得できて、天狗になっていました。そこで当時の上司に、「お前の力で売れてるんじゃない。会社の力で売れてるんだ。勘違いするな」とキツく諭されたのです。自分の態度におごりが出ていたのでしょう。会社に対して斜に構えていたところもあったので、ガツンと心に響きましたね。

そこからは営業の姿勢が変わりました。一方通行の独りよがりの営業スタイルから、お客様の課題に耳を傾けるようになりました。お客様に対する認識が「売りつける相手」から「ともに問題解決を図るパートナー」へと変化したことで、営業成績が伸びてトップを獲得。上司や周りの社員からの信頼を得ることができ、その後のキャリアが開けたのです。あのときの上司の言葉は今でも鮮明に覚えていますし、言葉一つで人は変わるということを身をもって実感したことは大きかったですね。

結果を出せない企画職の価値は無い。

――そして、5年間勤めた会社を退職しましたが、なぜですか?

営業として社内の信頼を得られた後に、ある大規模案件に部長とともに携わりました。そこで、会社の成長にインパクトを与える案件を成就できたので、一区切りかな、と。別の仕事にチャレンジしたくなり、ある案件で知り合った社長が経営する会社に転職したのです。

入社したのは、前職よりも規模が小さなSIerです。エンジニア派遣事業がほぼ100%の売上を占める会社だったのですが、別のコア事業を立ち上げるためにジョインしました。上司と2人で部署を作って、新規事業の立ち上げに奔走しましたが、とても苦労しました。

売上がなかなか立たなかったのです。財務的に余裕がなかったので、会社に対して申し訳無い気持ちでいっぱいでした。せめて、給料分の売上を捻出しようと、社長に頼んで特別に警備の派遣の仕事を作ってもらい、警備員としても働いていました。あのときは必死でしたね。

――なぜ、そこまでやるのでしょうか?

何らかの売上を立てないと、部署自体が消滅してしまう。その事態を防ぎたかったことが1つ目の理由です。結果を出さないと企画職としての価値は無い。そう肝に銘じていたので、何とか生き長らえるために、少しでも売上を確保したかったのです。そして、2つ目の理由は、「仕事ができないチームだ」と周りから思われるのが悔しかったからですね。「俺らは本気でやっているんだ」と、態度で見せたかったのです。

ECレコメンドエンジンとチャットボットサービスが、新たなコア事業に

――その後、新規事業の仕事にはどのように携わりましたか?

そのような泥臭い努力の甲斐もあって、ほどなくして浮上の兆しが見えてきたのです。キッカケとなったのは、EC向けのレコメンドエンジンを海外から導入したこと。今では一般的になっていますが、検索ワードを入れるとユーザーの嗜好に合わせた画像が表示されるシステムです。大手小売店に提案したところ、「こんな面白いシステムがあるんですか!」と喜んでいただき、ECサイト全体の開発も併せて受注できました。大きな売上を上げることができたのと同時に、他のクライアントからも引き合いをいただきました。

そして、チームとして一定の売上を見込めるようになり、メンバーを増やして成長基調に乗りました。レコメンドエンジンに続いてチャットボットの専用サービスを立ち上げて、大手化粧品会社に導入。Web上での対面接客を実現することができ、好評をいただきました。このチャットボットサービスも会社の成長に大きく貢献。5年の歳月を経て、新規事業開発チームは10数名の組織に拡大し、複数のコア事業を生み出すことができたのです。

人材系企業に転職。インサイドセールス部隊と名古屋支社を開設

――新規事業チームも成長したのに、なぜ転職を考えたのでしょうか?

「企画職にできる限り専任として携わって、スキルを磨いていきたい」と思うようになったからです。当時所属していた会社は社員数が少なかったので、事業を立ち上げるだけではなく、営業やマーケティング、システム開発のマネジメントなど、あらゆる役割を果たす必要がありました。そこで企画業務に集中できる環境を探したところ、人材系のメディアを運営している会社に出会い、「1人目の企画専任担当」としてジョインしたのです。

――具体的にはどのような仕事を担当しましたか?

製造業・工場に特化した求人メディアの事業企画を任されました。様々な施策を実施して、メディアの売上をグロースさせることがミッションです。加えて、私自身が企画職のロールモデルとなって、「事業企画チーム」を作ることにも取り組みました。

この会社でも、入社当初は苦労しました。特に大変だったのが、株主のベンチャーキャピタルへの報告業務です。単年および中期経営計画を引き、その達成に向けてKPIや戦略を設定して、課題解決に向けた打ち手を報告する仕事です。なかなか数字が上がってこない状況では、厳しいご意見をいただくことも多かった。株主が要求する業績と現場でできることの折り合いをつけることも、私の役目でした。現実的に達成できるラインをどのように設定するのか、常に心を悩ませていました。

――その状況は、どのように突破したのでしょうか?

業績を向上させるために、大きく2つの施策に取り組みました。1つ目は、インサイドセールス部隊の立ち上げです。当時は若手の営業スタッフが多く、訪問営業として一人前に育てるには、かなりの時間が掛かっていました。その育成期間を短縮するために、電話で商談を進めるインサイドセールス部隊をゼロから作ったのです。先輩が客先に同行する必要がなく、目の前でのアドバイスが可能になるので、効率良く育成ができるからです。私自身は体制を企画するだけではなく、組織のマネージャーを兼務しました。企画がゴールではなく、事業のグロースがゴールだと捉えているので、実行フェーズにも関与して、必要なことはなんでもやる。企画と実行の両輪を回すスタンスを、今でも大切にしています。

2つ目の打ち手は、名古屋支社の立ち上げです。人材ビジネスの市場環境や求職者のマーケット規模、お客様である工場の立地を徹底的に調べて、名古屋での支社の立ち上げを提案。自らで推進しました。日本有数の工業地帯にもかかわらず、営業活動拠点がないことに着目し、営業部長に赴任してもらって拠点を開設しました。

インサイドセールス部門は順調に成長し、会社全体の売上の約10%を占めるまでになりました。自分自身がマネージャーとして、メンバーの育成も行ったので、グロースできたのは嬉しいですね。一人ひとりの商談の録音データを聞いてアドバイスをしたり、お客様向けの資料作成にも携わりました。事業企画職を極めようと専念できる環境を選んだつもりだったのですが、やはり現場の仕事まで関与しましたね(笑)。自分の事業企画としてのスタイルは、企画と実行の両方をやり切ること。そのことを改めて認識しました。

入社1ヶ月で、「Chatwork Mobile」の企画が承認された

――そして、2021年12月にChatworkにジョインします。そのときの経緯を教えてください。

入社理由は、「Chatwork」というサービスに大きな可能性を感じたからです。ここまで常時使われているサービスは他にはそうそうない。500万人以上*のユーザーが使っていて滞在時間も長いので、大きなビジネスチャンスが眠っている。そして、会社としても投資フェーズにある。そのような環境にどっぷりと身を投じて、自分の手で新しい事業を具現化してみたいと考えました。

――入社して、どのような仕事を担当したのですか?

ジョインした12月に新規事業の企画を選定させてもらいました。10〜20の事業案のリストを見て、「ここまで幅広い事業がフィットするのは、Chatworkだけではないか」と強く感じました。サービスというよりは「一つの大都市」のような印象です。500万人以上のユーザーに対して提供できるサービスは、無限にある。「Chatworkというコミュニケーションツールの可能性はものすごい」と、改めて認識しました。

新規事業リストから中期経営計画にマッチするものとして、私が選定したのが企業向けMVNO事業の「Chatwork Mobile」です。自社でスマートフォンの端末と、通信サービスを提供しようと考えました。既存のChatworkのユーザーにそのままアプローチできますし、携帯電話は誰もが知っているので、営業もしやすい。よって、セールス部隊をゼロから立ち上げる必要もない。「きちんとサービスを整えて、サポートをしっかり提供できればグロースできる」と判断して上長に提案したところ、すぐに承認いただけました。ここまでで、入社して実質1ヶ月です(笑)。

シンプルで安価なサービスプランで勝負。想定以上に好評をいただいている

――「Chatwork Mobile」が企画として承認された後は、どのようなプロジェクトを推進しましたか?

そこからは、プロダクトを選定して、タイアップできるパートナーを探し、事業の骨子を詰めていきました。2022年1月の下旬に役員陣にも承認をいただき、正式にプロジェクトが発足。プライシングを行い、個人情報の管理とユーザーサポートの体制を作って、社外にリリースしたのが4月25日です。私自身は、サービス責任者として、ずっとプロジェクトに関与しています。

――入社後、短期間でサービスを立ち上げましたが、苦労したことはありましたか?

モバイルのサービスを扱った経験が無いので、「土地勘」を身につけるのに苦労しましたね。最初は業界の構造も理解していなかったですし、個人ならまだしも法人契約の中身はあまり表に出てこないので、サービスプランやプライシングには悩みました。それらの情報を集めるために、業界の経験が長い知人にヒアリングを重ねました。

――「Chatwork Mobile」のリリース後の反応はいかがでしょうか?

ありがたいことに、好意的な反応をいただいています。「月額基本料金3,280円(税別)」「10分かけ放題」「高速データ通信3GB」「24時間365日のサポート対応」というプランが好評です。多くの方に使ってもらえるように、シンプルで安価なプランにしたので、その意図が伝わって嬉しいですね。ただし、端末のスペックやサービスの内容についてご要望もいただいています。それらのご要望を吟味しながら、今後はサービスに磨きを掛けていきたいですね。

早く立ち上げて失敗すれば学べばいい。ここまでフラットで柔軟な会社は他に無い

――入社して半年と少しが経ちましたが、Chatworkの印象はいかがでしょうか?

新規事業を企画する環境としては、最高と言ってもいいかもしれません。アジャイル的な事業開発が奨励されているカルチャーが私には合っています。まずは早く立ち上げて、市場の反応や様々な事情を見ながら、アクセルを踏むのか、修正するのか、撤退するのかをフラットに選択することができる。社内で掲げられているバリューの1つに「速く学び、変わり続けよう:Be agile, be adaptive」がありますが、失敗から学ぶカルチャーが現場に根付いているので、遠慮無くチャレンジできます。社会に対してしっかりとしたインフラを提供している会社で、ここまで柔軟でフラットな会社はなかなか無いと思いますね。

社内の他部署との連携もしやすいです。事業開発と直接の接点が無い人からも、「モバイル事業は面白そうですね!」「ぜひ、うちの部署とも協業しましょう!」と複数の方から声を掛けていただきました。新しいものに興味があるメンバーが多いので、社内を巻きこみやすいのも、この会社の長所の1つですね。だからこそ、モバイルサービスを4ヶ月でリリースできたと思います。モバイル業界の知人からは「どんなに早くても1年は掛かります。ここまで短期間で立ち上げた例は聞いたことがないです」と驚かれました(笑)。

3ヶ月に1本のペースで、社会にも貢献できる新規事業をリリースしていく

――今後はどのような仕事をしていきたいですか?

現在、「Chatwork Mobile」の他に、幾つかの新規事業の企画を同時並行で進めています。できれば、コンスタントに、3ヶ月に1本ぐらいのペースでリリースしていきたいです。成功することも失敗することもあると思いますが、その一つひとつを糧にできればいいと思っています。

このタイミングでChatworkに入社できたのは幸運だと思っています。プロダクトの認知が広がり、500万人以上のユーザーへのタッチポイントを持っていますし、新事業への投資も野心的に進めている。ビジネスチャットと連携しながら、事業をどのように拡大していくのか。それが全社としての注力テーマです。私が生み出す新規事業は、自社のグロースだけでなく、これからもっと増えていく「Chatwork」のユーザーの新しい体験や働き方に直結しています。もっと視野を広げて、日本社会のDXに貢献できる仕事をしていきたいですね。

 

*登録ID数 509.7万(2022年3月時点)
撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)