Chatworkのプロダクトデザイン部は、ユーザー体験を向上させるための“デザイン”に取り組む組織です。デザイナーたちが個性を発揮し、良質なアウトプットを続けているこのチームで、マネージャーを担うのが茂木由紀子。彼女は「デザイナーたちのキャリアデザインのサポートをすること」を大切にしているといいます。今回は茂木のこれまでの歩みやChatworkで目指すことなどをインタビューしました。
■プロフィール
茂木 由紀子
プロダクト本部プロダクトデザイン部 マネージャー
コンテンツ・メディア事業などを担う企業にて、サービス開発のチームリーダーとしてPdM兼UX、UIデザイナーを担当。以降、ベンチャー起業を経て、受託開発会社にてUXチームの立ち上げに従事。数多くのスマートフォンアプリ・Webサイトの大規模開発案件で、UXおよびUIデザインやPdM/ディレクション業務を経験。2021年よりChatworkに参画し、プロダクト本部プロダクトデザイン部のマネージャーを担う。Chatwork外の活動として、87lab.(個人事業主)UX Architect / あめつちデザイン株式会社 社外取締役 / HCD-Net 教育事業部所属 / HCD-Net認定人間中心設計専門家 / Design Roundabout Fukuoka発起人・主催
「餅は餅屋」お互いにリスペクトがなければ、ものづくりはできない
――茂木さんがChatworkへ入社するまでのキャリアをお聞かせください。
もともと福岡で暮らしていて、大学時代は教育心理学を学び、教員を経てから心療内科のカウンセラーとして就職しました。デザイン関係の仕事に興味を持ったきっかけは、勤務先のクリニックのWebサイト制作を任されたことです。上司から「うちのクリニックでパソコンを扱えるのは、あなただけだから」という感じでお願いされました(笑)。ホームページ・ビルダーでサイトを構築して、デジタルなものづくりをする面白さに目覚めました。
その後、東京に引っ越して仕事を探すときに「Webサイト制作、楽しかったな」という思いから職種を変えることにしました。独学で初級システムアドミニストレータの資格を取得したり、CGIのサービスやCSSTips配布サイトを作ったりしながら、スキルを磨いていましたね。そうして出版社に就職し、プランナーとしてモバイルサイトの企画・運用を担当しました。それから、複数の会社でデザイナーやマネージャーの役割を行ったり来たりしてキャリアを積み、今に至ります。
――さまざまな経験をされたなかで、Chatworkのマネージャー業務に直接的に役立っているエピソードはありますか?
一番役に立っているのは、私が最初にマネージャーになったときの経験です。大手電子機器メーカーの関連会社で、企画部/デザインチームのマネジメントをしていました。
――現在と当時のマネジメント方針は違いますか?
かなり違いますね。当時の私はミッション必達主義でした。メンバーにはかなり厳しいことも言っていたと思います。その頃はITバブルの時期でサービスが急増したため人手が不足していて、中途入社の社員をすぐに独り立ちさせる必要があり、必死でした。そんななか、あるトラブルが起きたんです。
――トラブル、ですか。
私が直接的にマネジメントしていた数人のディレクターの下に、派遣社員や業務委託のメンバーが配置されていたチームだったのですが、先ほど述べたようにミッション必達の空気があったので、ディレクターのなかには仕事に一生懸命なあまりチームメンバーにかなり厳しい対応をしてしまう人もいました。そんな状況が続いた結果、あるチームのみんなが仕事をボイコットし、サービスの運用業務が停滞してしまう事件が起きました。
――おおお、大変な事態……。胃が痛くなりそうです。
お互いが言いたいことを言える場を何度も設けて、事態をなんとか収拾しました。この経験を通じてすごく反省しましたね。マネージャーは自分ひとりだけの力では何もできなくて、みんなに協力してもらう必要がある。私は「餅は餅屋」というフレーズを大切にしているんですが、それはこの頃の経験が大きく影響しています。
それぞれ違う専門性を持つ人同士が集まってサービスを作るわけですから、相互のリスペクトがなければプロジェクトは円滑に進みません。みんなで仕事をしていることを絶対に忘れてはいけないと、自分のマネジメントの仕方を見直すきっかけになりました。
会社のことを包み隠さず伝える姿勢に惹かれた
――先ほどのエピソードとは逆に、マネジメントに関する成功体験はありますか?
その会社で自分なりに力を入れていたのが、しっかりとメンバーの評価をすることです。私は学生時代のゼミで評価学を学び、「子どもを教育するうえで根幹となるのは、正しく評価すること」という教授の話に賛同していました。
マネジメントもメンバーを評価する機会がありますし、デザインも結局は評価から始まります。だからこそ、適切に評価することを何よりも大切にしようと思いました。そこで、半期に1回、良い点と伸ばしてほしい点を書いた通知表のようなものを、メンバー全員、30人分くらい作って渡していました。今でも、一緒に働く人たちのことを適切に評価・フィードバックすることを、マネージャーとして常に心がけています。
それから、成功体験というよりも強みですが、これまでのキャリアのなかで事業会社・受託会社両方での業務経験があるのは、私の特徴だと思います。規模の大きなプロジェクトを担当してきたのは、自分の血肉になりました。何かうまくいかない事態がプロジェクトで生じたとしても、ステークホルダーとの調整をして円滑に進めるスキルが培われました。
特に、ある企業で経験した「炎上プロジェクト対応」の話は、Chatworkの採用面談でCEOの山本正喜さんからも「すごくいい!」と褒められました。炎上プロジェクトは大変なので、なるべくなら回避したいですけど(笑)。
――Chatworkに転職したきっかけを教えてください。
実はもともとChatworkへの転職を考えていたわけではなかったんです。ある日偶然、登録していた転職サイトからのスカウトメッセージを目にしました。そのメッセージ自体はChatworkからのものではなかったんですが、なんとなく気が向いて転職サイト内の他の求人情報をいくつか見ていました。そのなかに、Chatworkの求人があり、募集職種に「デザイナー(マネジメント)」と記載されていました。
当時は再び東京から福岡へと拠点を移して、自分のキャリアについて振り返る機会が多い時期でした。自分は何の仕事をするのが一番好きなんだろうと考えた結果、現場との距離が近い中間管理職のポジションが一番楽しかったと気づいたんです。そんな折にChatworkの求人が目に入ったので「マネージャーをやろうかな」と思い、応募ボタンを押しました。
――中間管理職のポジションが好きなのはなぜですか?
私はデザインや美術の学校を出ておらず、現場のたたき上げでデザイナーのスキルを身につけました。かなり紆余曲折して、一定以上のスキルになるまでに時間がかかっています。だからこそ、これからキャリアを積む若い人たちに対しては、しなくていい苦労はなるべくしてほしくないと思っています。
中間管理職の面白さは、試行錯誤せずにショートカットできる方法をダイレクトに伝えられる点です。私は、自分自身が手を動かすのではなく、それぞれの業務領域を得意な人に任せて、メンバーが成功体験を積めるようにサポートしたいという思いが強いです。
――マネージャーを募集している会社はたくさんありますが、そのなかでChatworkを選んだ決め手はありますか?
Chatwork社員の人柄が大きいです。選考過程でのやり取りがすごく気さくで、いい会社だなと感じていました。それから、会社のリアルな姿をポジティブな面もネガティブな面も包み隠さず伝えてくれたので、信用できました。「採用面接を受ける人には、きちんと企業の裏側も知ってもらい、納得したうえで入社してほしい」という思いを感じましたね。
初めてだったフルリモートでのマネジメント。メンバーの優しさで不安が消えた
――Chatworkでの茂木さんの役割について教えてください。
プロダクトデザイン部のマネージャーとして、メンバーが働きやすい仕組みづくりに取り組んでいます。基本的に裏方的な仕事が多いですね。具体的には、チームの目標設定をして実現までの道筋を作ったり、評価制度を整えたり、デザインプロセスの整備をしたりしています。その他にも、細かな調整作業やタスクのお手伝いなども私の役割です。
私は福岡に住んでおり、フルリモートでマネジメントをすることになるため、正直なところ最初は不安もありました。パソコン越しにしかメンバーに会えない状態でのマネジメントは初めてでしたから。でも、いざ入社してみるとみんながすごく優しくて、歩み寄ってきてくれるので不安は全くありません。フルリモートでありながら円滑にマネジメント業務を進められています。
チャットツールを取り扱う企業だけあって、コミュニケーション上手な人が多いですね。誰かが独り言のようにチャットしても、必ず誰かが拾ってリアクションしています。例えば、私が困ったことがあってチャットでつぶやいたら、必ず誰かが参考になる情報を送ってくれます。いつもメンバーに助けられていて、本当にありがたいです。
Chatworkのメンバーの人柄のよさは、会社のミッションやビジョンの影響が大きいのかなと思っています。例えばミッションの「働くをもっと楽しく、創造的に」は「Chatworkのプロダクトなどを通して働くことや人生を豊かにしたい」という意味を持った、温かみのあるものです。その考えに共感するメンバーが集まっているから、こんなに優しい人ばかりなのかなと感じます。
Chatworkというプロダクトそのものも、使う人がなるべく困らないようなUI・UX設計がされていて、手取り足取りしてくれる優しいツールだと感じています。誰も独りにしない社風は、Chatworkの開発を通して形成されてきたのかもしれません。
高い専門性を身につけて、どこでも通用するデザイナーになってほしい
――今後Chatworkで実現したいことはありますか?
個人的に絶対に成し遂げたいのは、デザイナーがChatworkの外でも通用するスキルを身につけられるキャリアパスの構築です。プロダクトデザイン部のデザイナーには、どこに行っても食べていけるようになってほしいと考えています。
私はこれまでのキャリアで広く浅くスキルを身につけてきたので、器用貧乏な時代が長かったです。その経験から、キャリアデザインのサポートをしたいと思うようになりました。デザイナーが身につけるべきスキルは多岐にわたるので、何にでも手を出してしまうと、なかなか専門性を高められません。
メンバーには、自分のコアとなる強みを見つけて、軸足を定めて専門性を高めてほしいと考えています。そうすることでスキル習得のスピードが上がりますし、得意な分野を学ぶのはとても楽しいです。身につけたスキルで人の役に立つのは幸せだと思います。この思いは、「複雑化するデザイナーの役割や職域の整理とキャリアパスについて考えてみた」というブログにも記しています。
この目標を実現するための取り組みとして、スキルテーブルを作成しました。これは、社員のグレードに合わせて、到達してほしいスキルを表したものです。デザインスキルとソフトスキルの両方を含んでいます。得意不得意を可視化したうえで、「得意なことを伸ばす」「苦手なことを克服する」といった目標をメンバーに立ててもらっています。この評価を通して、自分のスキルへの理解を深めてほしいですね。今後はスキルテーブルをチーム編成にも役立てるなど、より有効に活用していきたいです。
――最後に、Chatworkというプロダクトに携わる魅力を教えてください。
チャットというツールの魅力は、人々のコミュニケーションを支えることにあります。インターネットの黎明期には、人々がこれほど軽快にリアルタイムで文字のやりとりをできるツールはありませんでした。その時代を知っているからこそ、私にとってChatworkは夢のツールのように感じています。
それから、私たちはChatworkを通じて中小企業の業務を支えることを目指しています。私は社外の活動で地方創生や中小企業の支援をしているため、自分自身のモットーとChatworkの理念とがマッチしています。同じような考えを持った方にとって、Chatworkでの業務はすごく魅力があると思いますよ。
撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)