DeNA、トラベルコで、Webマーケティングなどの組織マネージャーを務めてきた西村。マーケティングのプロとして、自身のスキルの幅を拡げたいと、ChatworkにテレビCMマーケターとしてジョインしました。未経験だった領域を急速にキャッチアップ。入社3カ月後に放映したテレビCMで、自社プロダクトの認知度の大幅アップに貢献。これまでのキャリアと現在の仕事の面白さ、そして未来について語ってくれました。
■プロフィール
西村 裕樹
ビジネス本部マーケティングユニット
グロースマーケティング部プロモーションチーム
富山県出身。2013年3月に東京大学経済学部を卒業後、DeNAに入社。旅行サービスのWebマーケティング業務や組織マネジメントを手掛ける。2018年6月、歯科業界向けの人材紹介やBPOを手掛けるグローマスに転職。その後、「トラベルコ」を手掛けるオープンドアを経て、2021年9月、ChatworkにテレビCMを活用するマスマーケティング担当としてジョイン。
学生向けキャリア支援NPO「カタリバ」の事務所に入り浸る日々
――社会人になるまでに、どのようなことに注力していましたか?
富山県出身で、高校卒業までを過ごしました。大学進学時に東京に出たいと思っていましたが、高校2年生のときに、父親が心筋梗塞で倒れて働けなくなってしまって。私立大学への進学は難しいと思って、勉強に注力しましたね。コツをつかんでからは成績が上がりはじめて、東京大学の経済学部に入学しました。
大学3年次に「カタリバ」というNPOで、インターンシップを経験しました。大学生等のボランティアスタッフと一緒に高校を訪れて、ワークショップ形式の授業をするんです。楽しくて、大学に行かずにNPOの事務所に入り浸る日々でした。結局、就職活動はそこまで本腰を入れて取り組まずに、友人がインターンで通っていたDeNAを何となく受けてみたんです。非常にアグレッシブな環境で、ここなら自分を成長させることができそうと感じて、入社を決めました。
DeNAではEC営業に苦しみ、マーケティングへと異動
――新卒入社したDeNAではどのような仕事を担当しましたか?
2013年4月に新卒で入社して、グループ会社を含めて丸5年勤めました。入社時はビジネスの基本を学んでみたいと、営業を志望しました。結果、ECの法人営業の部署に配属になったのですが、このときはキツかったですね。ひたすら電話を掛ける仕事を半年くらい続けたのですが、一度も目標を達成することができませんでした。個人で進める仕事で、誰のせいにもできない中で、結果が出ないのが続くのはしんどかったですね。9月に部署内の人員の変更があって、マーケティングの業務を兼務するように。2年目になったタイミングではマーケティングの専任になって、今のキャリアにもつながっています。
その後、EC事業の組織変更に伴って、旅行系インターネットサービス「エアトリ」の前身である「DeNAトラベル」を運営する部署に異動しました。幾つかの仕事を経て、Webマーケティンググループに所属し、はじめてマネージャーを経験したのです。最大で10名くらいのメンバーが在籍していたのですが、私以外のほとんどはマーケティングのプロフェッショナル。しかも私よりも年上の方がほとんどでした。そのようなチームの中でどのようにメンバーを統率してサポートするのか、身に染みて学べましたね。
4年目でマネージャーに就任。メンバーの役割分担を明確にすることで、事業がグロースした
――どのようにチームをまとめたのでしょうか?
とにかく役割の違いを意識しました。Webマーケティングのテクニカルな部分はメンバーに任せて、私はP/Lを見ながら全体の方向付けと管理を行うことに特化したのです。役割分担を意識したコミュニケーションを取ることで、変なハレーションもなく、事業も堅調に成長させることができました。
――DeNAとグループ会社に5年間勤めて、このタイミングで転職したのはなぜですか?
社長の交代など、組織の方向性が大きく変わっていったことと、もう少し小さな会社で自分の力を試してみたいと思ったからです。スタートアップ企業を中心に転職先を探しました。ご縁をいただいたのが、歯科業界に特化したスタートアップである「グローマス」という会社です。
このまま仕事を続けると、心身が潰れてしまう
――グローマスでは、どのような仕事に就いたのですか?
新規事業の立ち上げ担当としてジョインしました。私が入社した当時は、トライアル的に進めていたサービスを引き継いで、事業として形にするべく、サービスの内容や価格を整理し、自ら営業に行って、受注したらサービスの提供までやるといった感じで、ほぼ一人でやらせてもらいましたね。
――そこから新規事業は、順調に成長したのでしょうか?
1年半を掛けて、ある程度顧客開拓はできましたが、事業として成長したとは言えない状態で会社を辞めました。当時の自分は、一人で仕事を抱えすぎてパンクしてしまったのです。もう少し組織をきちんと作ればよかったのですが、目の前の仕事をこなすことに必死で気が回りませんでした。
ただ、ふとした瞬間に「このまま続けると、心身が潰れてしまう」と思ってしまって、退職を決意しました。今振り返れば、すごく身勝手なことをしたと反省していますし、当時の仕事の進め方については非常に後悔しています。顧客やメンバーに対して不義理をしてしまったし、もっと他のやりようがありました。ただ、余裕がなさ過ぎました。
――ですが、そこまでコミットして、やり切ろうとする熱意はすごいと思いますが。
もともとの気質として、プロジェクトが失敗に向かっているのを、手を出さずに見て見ぬふりをするのは苦手なんですよね。なんとか自分で頑張ろうとして、抱えてしまうタイプだと思います。DeNAの新人時代に「あなたがやることに価値があるのではなく、結果が出ることに価値がある」と言われていたのですが、そのことを実践できていないことにも気が付きました。ああ、これは自分を変えなくては、と身に染みましたね。
トラベルコへ。ゼネラリストとしての自分の可能性に限界を感じた
――そして、2020年1月、「トラベルコ」を運営するオープンドアに転職されました。このときの経緯を教えてください。
DeNAトラベル時代にお世話になっていた方からお誘いいただいて転職しました。その方が幅広く事業全般に関わっていたので、入社後はその下で様々な業務を経験しました。新卒研修のリーダーや、「Go to トラベル」キャンペーン向けにサイトを改修したり。ただ、コロナ禍の影響を避けることはできず、先行きに対する漠然とした不安がありました。
そこでふと気付いたのです。自分は会社に依存しているな、、と。会社の状況がどうであれ、個人としてのスキルがあれば、社外の仕事を通じて報酬を得られるし、自分を成長させることができる。前職のグローマスでも、ゼネラリストがゆえに業務を抱え込んでしまった。このままオープンドアにいても、組織をうまく回せる人にはなれるが、何かに特化した人にはなれない。専門性を確立して、自立的なキャリアを重ねていきたい。そう感じて、マーケティングの専門性を磨きたいと決意し、出会ったのがChatworkだったのです。
中小企業のDXを進める世界観に共感。テレビCMを手掛けるためにChatworkへ。
――DeNAトラベル在籍時に注力していた、マーケティングを選んだのですね。でも、なぜ、Chatworkだったのでしょうか?
Chatworkを選択した第一の理由は、事業戦略に高い納得感を持てたことです。ビジネスチャットを軸に、様々な事業のプラットフォームを提供することで、中小企業のDXを進めていく。グローマス在籍時にDXを進めることに苦労する歯科医院を目の当たりにしていたので、その事業の方向性は、非常に魅力的に映りました。また、グロースのフェーズにおいて大きな意味を持つ、テレビCMへも挑戦したかったのです。その重要かつエキサイティングなミッションを遂行することで、マーケティング職としての幅広い専門性も身につけられる。そのように確信して、入社を決めたのです。
クリエイティブを見直し、テレビCM放映前は17.1%だった認知率が、放映後には28.5%へと向上
――2021年9月、Chatworkにジョインしたのですが、具体的にはどのような業務を担当しましたか?
入社以来、テレビCMを含む認知獲得目的の広告を担当しています。ChatworkがテレビCMを放映したのは、2021年の6〜7月、9月、10〜11月、12月の4つの期間です。私は9月入社ですので、2回目の放映がまさに始まるタイミングでプロジェクトにジョインしました。2回目の放映の検証を行いながら、3回目以降の企画を練るところから本格的に関わりはじめたのです。
――1回目、2回目の放映の検証結果は、どのようなものでしたか?
通常の想定を上回る認知度の向上ができていました。それを受けて、以降は都市圏への放映を検討していたので、さらに検証を重ねるために新たなクリエイティブの制作を進めました。
10〜11月は近畿・富山・石川に新たに制作したクリエイティブも活用し放映を実施し、その結果を踏まえてクリエイティブや放映枠を適切にチューニングし、12月には近畿・中京に加えて初めて関東への放映を実施しました。テレビCM放映前は17.1%だった認知率が、放映後には28.5%に。10ポイントを超える認知度の向上が確認できました。想定を大幅に上回る広告効果を実現できたのです。
▼12月以降に放映したテレビCMがこちら
https://youtu.be/wPI1AI7J8Rs
▼2021年度の本決算説明会でも、テレビCM効果について紹介されました
テレビCMは初めてだったのに、大部分を任せてもらっている
――なるほど。クリエイティブを変更することで、ここまで大きな効果につながったのですね。
ただ一方で、シェア拡大の最重要フェーズであることを考えると、認知の先の行動につなげるという部分はまだ改善の余地があります。Chatworkはコミュニケーションアプリですから、使うにも相手が必要ですし、すぐに課金いただくわけではありません。いかに多くの人の行動への壁をテレビCMで突破していくか、工夫を重ねている最中です。テレビCMの中で伝える内容、尺や構成、他のマーケティング施策との連携など、様々な方向性を模索しています。
――テレビCMの放映エリアは、どのように決めているのでしょうか?
エリアについては、コストと効果のバランスを見ながら決めています。首都圏で放映すると視聴者は多いのですが、コストが非常に高いんです。以前は、リスクを軽減するために、まずはローカルでPDCAを回しきって、そのノウハウを元に関東で放映していました。4回目の放映においては、その手法が奏功したとも言えます。
――テレビCMの制作と放映について、西村さんに一任されているのでしょうか?
CMOの大森さんと部署のマネージャーと議論しながら決めています。上司の言われたことをただ実行するというのではなく、私の意見も含めて議論しながら、一つひとつの施策を決定していく。そして、実行のフェーズになると、その大部分を任せていただいていますね。テレビCMに関する業務は、ほとんど初めてだったのにもかかわらず、ここまでの裁量を与えてくれるのはありがたいです。多額の予算をつぎ込むので、かなり綿密にシミュレーションは行います。
テレビCM業界全体も変革のタイミング。その中でのチャレンジが面白い
――この仕事には、どのような面白さを感じていますか?
テレビCMに関する仕事には、Webマーケティングに比べて、以前からの商慣習が色濃く残っています。色々と制約が多い面もあるのですが、その中での新しい取り組みができるのは面白いですね。運用型テレビCMという形で新たなサービスが生まれたり、テレビCM業界全体がチャレンジをしている状況だと思います。その最前線に身を置き、日々、刺激を受けながら仕事をしています。
Chatworkは「2024年までにシェアを拡大し、中小企業No.1ビジネスチャットのポジションを確立する」と中期経営計画を掲げています。難易度はかなり高く、非連続な成長が求められます。その実現のためには、テレビCMのような「飛び道具」が必ず必要になるので、テレビCMに対する期待感もひしひしと感じているところです。この会社の中でも、多くの予算を消費しているのがテレビCMなので、刺激もありますが、緊張感も半端ではないです(笑)。
中小企業のDXのきっかけをテレビCMでつくる。そして、日本の働き方を変える
――確かに、会社の成長戦略の中で、外せない取り組みの一つですね。
会社の成長戦略にはもちろんのこと、日本の中小企業のDXにおいても貢献していきたいです。ビジネスチャット自体の認知率は4割くらいで、6割の方々はその存在すら知らない*。メール、電話、FAX、対面での会議で、日々の業務を回している皆さんを、少しでも楽にするためにも、ビジネスチャットの存在を伝えていきたいのです。ただ、そこに至るまでがものすごく難しい。ここにきて身に染みて分かってきました。
だからこそのやりがいも感じているんですよ。日本の法人の99.7%を占めるのが中小企業です。そこで働く皆さんの日々のコミュニケーションや働き方を変える。テレビCMがそのきっかけになるのは間違いない。自分の仕事は、モノを売るためのものではあるのですが、この国を元気にするためにもやっています。誰も手を付けていないマーケットに対して、自ら切り込んでいって、新しい価値を生み出す。それがこの仕事のやりがいだと思ってます。
Chatworkという会社は、ビジネスチャットにとどまらず、今後は様々な中小企業向けのサービスを展開していきます。それらのプロモーションを私自身が担当するかは分かりません。ただ、現時点での取り組みがベースとなって、次のフェーズのマーケティング戦略が生まれる。この会社のグロースとともに、私自身もマーケティングの専門家として成長していきたいですね。
*当社依頼による第三者機関調べ、2021年10月調査、n=30,000
撮影場所:東京オフィス(WeWork 日比谷 FORT TOWER)