Chatworkのプロダクトマネージャー(PM)が目指すものは何なのか?そして、事業の急成長期におけるその役割は?
膨大なログが残り、あらゆる業種のユーザーが活用するツールを、PMたちはどのように進化させて行くのか?
メルカリからジョインした大野木と、数々の新規事業を立ち上げてきた針北。2021年入社の2名のPMに語ってもらいました。
■プロフィール
CTO室
大野木 達也
イギリスの大学を中退帰国後にフリーランスのデザイナーやWebディレクターとして経験を積む。りらいあコミュニケーションズにて「バーチャルエージェント®」事業を立ち上げ、その後、メルカリにジョイン。プロダクトオーナーとして活躍後、2021年4月にChatworkに転職。経営戦略とプロダクト戦略をつなぐ、「プロダクトオペレーションズ」チームを指揮している。
■プロフィール
CTO室
針北 陽平
ヤフーにWebエンジニアとして入社。その後、2社のベンチャー企業にて、広報・事業アライアンス・新規事業の立ち上げを担当し、フリーランスに。2015年からは、オープンエイト執行役員として参画し、動画メディアの立ち上げと現主力事業の「Video BRAIN」を立ち上げ、事業責任者として活躍。2021年2月にChatworkへ転職。プロダクトマネージャーとして、プロダクト戦略の立案と実行、メンバーの育成に従事している。
Chatworkへの転職の際には、メルカリの同僚のPMに相談した
――まず、大野木さんに聞きたいのですが、これまでのキャリアを教えてください。
大野木:私はデザイナーからWebディレクターやプロジェクトマネージャーを経て、プロダクトマネージャーへと転身しました。かなり前の話で、インタラクティブコンテンツのデザイナーとして企画立案から関与していたのですが、クライアントへの提案はプロデューサーに委ねられていました。そこで、自らが提案の責任をとれる役割を担いたいと考えるようになったことが大きな転機でした。りらいあコミュニケーションズでは「バーチャルエージェント®」というチャットボット事業の立ち上げで、サービス開発の責任者も経験させてもらいました。
その後、メルカリに転職しました。上場の半年くらい前のタイミングです。カスタマーサービス部門での新規組織立ち上げやプロダクトオーナーを担当。サービス管理とマーケット監視の領域でロードマップ戦略から担当して、複数のスクラムチームにまたがるプロダクト開発をリードするのは面白かったですね。
――Chatworkに転職した理由は何ですか?
大野木:会社全体の戦略と密接にリンクした環境で、プロダクト開発に携わりたかったからです。しかも、Chatworkがちょうど大規模スクラム開発を導入するタイミングだったので、プロダクトオーナー側の組織を作っていくポジションを私の方で担いたいなと。
ただ、結構、他の会社と迷いましたね。。。上場前の会社からも、内定をもらっていて、自分では決めきれず信頼できるPMに相談しました(笑)。年下の同僚にキャリアのことを相談したのは初めてでしたね。「自分であれば、より多くのユーザーの顔が見える方のサービスを選ぶ」と言われて、Chatworkへの入社を決断しました。
ヤフーでは、リプレイスを1人で担当。その後、国内No.1アプリを1人で開発
――次に、針北さんのここまでのキャリアを教えてください。
針北:私はかなり雑多にキャリアを積んできた感じですね。新卒はヤフーでWebエンジニアとして入社しました。Y!不動産の賃貸領域を担当することになり、1年半くらいかけて全体リプレイスを1人でやりました。その後は、「セカイカメラ」を開発していた頓智ドットに転職します。Webディレクターをやりたかったんですが、そこで経験したキャリアは広報と事業アライアンスでした。次の職場はハイベロシティという制作会社で、1人だけで新規事業部を作り、自分でサービスを企画・開発し、自分で広報をして当時の会社の看板商品として成長させましたね。
大野木:かなりアグレッシブな若手時代を過ごしてますね。。そこまでは知らなかった。
針北:当時はノリで判断することが大きくて。仕事の内容も転職もそこまで深く考えず、面白そうだなと思ったら飛び込んでいました。ハイベロシティで開発したサービスが「Hivelo Social Apps」というFacebookページ向けアプリで、これが結構当たりました。Facebookページ向けアプリでは、国内No.1にまでなりました。ここでの経験を活かし、フリーランスを数年やった後、オープンエイトに創業メンバーとして参画しました。おでかけを主軸にした動画メディア「ルトロン」、AIによる動画自動生成サービス「Video BRAIN」の立ち上げと事業責任者をしていました。
エンジニア出身の社長のもとで、プロダクトをつくりたい。ベンチャー役員からChatworkへ
――「Video BRAIN」は、WebやタクシーでCMを目にします。すごい事業に育っていますよね。
針北:立ち上げ時期は、開発以外を全て自分がやっていたので、かなり大変でしたね。営業も初めてでしたが、やりました。大手クライアントを中心に攻めていたのですが、サービスの完成度とクライアントの期待値をうまく調整しながら、なんとか契約をいただいたりしていましたね。βの状態で提案することもあり、プレゼン中に不具合が起きるなどのアクシデントを気合いで乗り切ることも多々ありました(笑)。
オープンエイトは4年在籍していたんですが、個人的にはやり切った気持ちになり、Chatworkにジョインする1年間くらいは、友人の会社をお手伝いしながら、のらりくらり過ごしていました。1年くらいまったり過ごしてると、刺激が足りなくなってたんですよね。同時期くらいに今からアクセルを全力で踏もうとしてるChatworkと出会い、とても魅力に感じました。社長の正喜さんがエンジニアであることも選んだ理由として大きいです。会社のトップが技術者出身って、プロダクトをやってる人間からするととても魅力的に見えますね。
大野木:社長の正喜さんには、私も驚きました。社内で情報を展開するための経営ダッシュボードを、自分でつくってるんですよ。GoogleのData Studioを使って、バックエンドからデータを取れるシステムを開発して、本人が管理している。必要だから、というよりも、技術的興味が先行してやっているみたいです。
Chatworkの中心には、経営や各現場の方針と密接にリンクしたプロダクト戦略がある
――おふたりは、それぞれ、どのような役割を担当していますか?
大野木:私は「プロダクトオペレーションズ」という組織を指揮しています。経営と現場を「縦軸」と「横軸」で連携することで、プロダクト開発と事業成長を密接につなぐのがミッションです。「縦軸」は「経営計画→プロダクト戦略→現場の開発」を結びつけることを意味しています。経営ボードと直接やりとりをすることによって、課題を設定して、その解決のためのプロダクト戦略を立案するのが仕事です。プロダクト目線から事業戦略に影響する提案を常に上げられるような状態が理想的だと考えています。そこで練られたプロダクト戦略を、丁寧に言語化して開発の現場に伝えることで、ブレの無い開発を推進する。それが「縦軸」としての役割ですね。
――一方で「横軸」はどのような役割を意味していますか?
大野木:ビジネスやエンジニア組織との連携を強めることです。先ほどの「プロダクト戦略」を経営陣や各本部のステークホルダーにも解像度高く共有し議論することで、横の連携も密接になります。ステークホルダーにも1on1などでフォローすることで、「コミュニケーションの透明性を担保してくれるのはありがたいです」と言ってもらえたことも。また、その1on1でのフィードバックも、今後のプロダクト戦略で大きく役立っていくと思います。
針北:「プロダクトオペレーションズ」は発足したばかりですが、組織としては機能し始めている印象です。私自身もありがたいなという場面に多々遭遇してます。プロダクト側はユーザー価値の最大化に向けて施策をどんどん走らせたい一方で、ビジネス側は売上に直結する施策を求めていたりするので、ベクトルが合わずうまくいかないケースは過去にもありました。「プロダクトオペレーションズ」が機能することで、動きや考え方が揃いつつあり、それぞれの強みを活かしながら、健全な協業ができつつある実感は得られていますね。
大野木:プロダクト戦略を、経営方針や各部署の方向性とリンクしていくことで、プロダクトマネージャー(PM)からの提案に対するジャッジもクリアになります。PMのAさんとBさんからそれぞれの提案が上がってきた場合、どちらにどれだけのリソースを投下するのか、納得度の高い判断を下せるようになります。
Chatworkのデータには、「中小企業の営みの全て」が残っている
――針北さんのメインのミッションは何ですか?
針北:大野木さんと練り上げたプロダクト戦略をもとに、その実現に向けて自分も手を動かしながらチームもマネジメントしています。チームでプロダクト戦略を進めていく上で、とても大事にしているのが様々なデータです。Chatworkは、中小企業で働く様々なユーザーに利用いただいています。その活用方法は、本当に多種多様なので、一部のユーザーからのフィードバックをもとに戦略を練っても、データの信憑性でいうと低いので、それだけを活用したくはないです。より俯瞰した視点からデータを見て、戦略を考えることが大切だと考えています。
大野木:私もハリーさん(=針北さん)と同じ考えです。ユーザーの行動ファネルを俯瞰で捉えて、見るべきデータを決めていきながら、どこに課題があるのかを毎日のように議論しています。
針北:Chatworkの行動データは、かなり深いところまでデータとして保持されています。コミュニケーションのログはもちろん、「誰がどんなアクションをした」については、かなり細く定義されており、多角的な分析を行うことができます。様々なデータを検証する中で、課題として大きい部分や、大きく成長することができるポイントが明確に見えてきました。
大野木:まさにChatworkのデータは、「中小企業の営みの全て」に繋がると言っても過言ではないほど。私たちプロダクトチームにとって、大きな武器になることは間違いありません。経営陣に対しても、データを元に様々な提言をしていけるような体制を作れるよう奔走しています。
Chatworkのビジネスモデルと事業モデルを考えるのも、PMの仕事のひとつ
針北:初めてビジネスチャットを利用するユーザーが、「Chatworkが1番いいかもしれない」と思うプロダクト作りを目指しています。ビジネス側とも連携し、シンプルな問いではあるんですが「なぜ、Chatworkでなければならないんだろう」の答えを探し続けています。複数解答はありますが、「業務プロセスの中にいかにChatworkが入り込めるか」はこれから特に大切にしていきたいです。様々な業種で日々使われているITツールに、どんどんChatworkがハブとなる役割を担うことで、他社サービスでなく、Chatworkである理由を提供できるのではないかと考えています。様々な業種ごとのユーザーの営みの中に「自然に溶け込む」には何が最適なのか。日々、データや顧客の現場に触れて、試行錯誤を重ねています。
大野木:プロダクトの観点で見ると、私もそこがすごく面白いところだと思っています。現状は、フリーミアムモデルでユーザーに使っていただき、アップグレードを通じてアカウント単位でお金をいただくビジネスモデルです。それにどういう価値を加えることができれば、ユーザーのビジネスに溶け込むことができるのか。そして、我々にとっても、どのような事業モデルを構築するのが最適なのか。このコアな部分を突き詰めるのが、ChatworkのPMが担うべき最大のミッションだと考えています。
Chatworkは中期経営方針として、2024年末までに「中小企業No.1 ビジネスチャット」を掲げています。そして2025年以降に、ビジネス版スーパーアプリとして中小企業のあらゆるビジネスの起点となるプラットフォームを目指しています。まずは中期の経営方針を実現できるように、いまの時点でのプロダクトビジョンを明文化して、会社全体の意識を共通化していこうとしています。
ユーザー一人ひとりの喜怒哀楽に触れることが、次のプロダクトにつながる
――そのようなプロダクトは、日本はもちろん、海外を見ても存在していませんよね。どのように実現していきますか?
針北:Chatworkを活用してくれているユーザーから答えを考えていきたいですね。多くのユーザーに活用いただき、そこに蓄積された行動データには、次のプロダクトへのヒントは絶対あるだろうなと考えています。さらに、日々ユーザーに向き合っているセールスやカスタマーサクセスとも密に連携をとり、課題感などを吸い上げ、日々の業務で何に困っているのか、Chatworkを使ってみてどのように働き方が変わったのかなど、ユーザー一人ひとりの喜怒哀楽を感じ取り、次のプロダクトに活かしたいです。
大野木:ずっと国内のユーザーに寄り添ってきた、Chatworkならではの強みですね。そこから得られたヒントをプロダクト開発に活かして、事業戦略にも紐付けることができれば、世界で唯一のプロダクトを生み出せる可能性は十分にあります。その可能性を最大化するために、組織全体をより良い方向に変えていくのも、私自身の仕事です。Chatworkという「会社」も、一つのプロダクトだと捉えて向き合っています。
PM全員の力で、No.1を獲得する
――最後に、今後の目標について教えてください。
針北:PMメンバーをもっと強くしていきたいと考えています。これから入社してくれるであろう新しいメンバーもそうですし、今一緒に働いている仲間をスピード感持って成長させたいです。現状、一部分では属人化している部分もあり、大きく成長させようとした時に、ボトルネックになる可能性が高いと考えています。どのPMメンバーに任せても、再現性を持って、同じ結果を出すことができる状態まで持っていくことが、会社が掲げる大きな目標を達成するには必要かなと。
なので、私みたいに多少経験値が多い人が、率先してプロダクトマネジメントに関する背中を見せたいです。一緒に動くことで、吸収できると思うので。2024年末までに「中小企業No.1ビジネスチャット」という中長期方針を実現しなければなりません。それは、僕一人の力ではとても難しいです。全PMメンバーにスポットライトが当たり、活躍できる状態を、すぐにでもつくりたいですね。
大野木:ハリーさんと同じで、組織全体の底上げが最大の関心事ですね。私は組織の「型」をつくることに注力しているので、人の教育やマネジメントまで手が回っていないのが正直なところです。ハリーさんやプロダクトマネジメント部マネージャーの石田さんが、メンバーを背中で教育してくれて、実務のOJTも含めて担ってくれている。とてもありがたいです。
私はメルカリに30歳を過ぎて入社したのですが、最初はかなり不安でした。若くて優秀な同僚ばかりで、ついて行けるのだろうかと思っていたのですが、すぐに「この職場が働きやすい」ということに気付いたのです。同じ事業成長を目指すPMの施策からも、「この問題に対してこういう考え方があるのか」という学びが豊富に得られました。また、スキルにかかわらず認めあえる関係があることで、働いている意味も見出しやすい。そういう組織をつくっていきたいですね。