Cha道

Chatworkの「人」「組織」を
伝えるメディア

社内システムに、 楽しさや創造力を刺激する何かを仕込む。

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「効率性とガバナンスを重んじすぎると、社内システムがメンバーの創造力を劣化させかねない。むしろ高める方向に持っていく」と語るのは、コーポレート本部 副本部長兼CSE部マネージャーの須藤。彼は創業期のChatworkに入社し、10年に渡ってプロダクト開発のマネージャーを務めました。その後、上場に向けたガバナンス強化のために、社内システム開発(CSE:Corporate Solution Engineering)へと転身。そのキャリアの裏には、開発マネージャー時代の葛藤とCSEとしての矜持が脈々と息づいていました。

■プロフィール

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コーポレート本部 副本部長兼CSE部マネージャー
須藤 裕嗣

電気通信大学 情報工学科卒。大学ではプログラミングの勉強よりも、ラクロスに打ち込む。2003年4月、大手電機メーカー系のSIerに入社。物流システムの開発と運用に携わる。2005年にChatworkの前身企業であるEC studioに転職。その立ち上げにエンジニアとして貢献し、開発マネージャーに。2016年以降は、社内システム開発チーム(CSE:Corporate Solution Engineering)をマネージャーとしてリードしている。休日は3歳の息子と、『ポケモン GO』を片手に屋外で健康的に遊んでいる。

安定を求めて入社した大企業を、2年で辞めた。「このままでは自分は終わってしまう」

――学生時代はどのように過ごしていましたか?

大学は電気通信大学の情報工学科に通いました。プログラミングの授業も受けましたが、あまり役に立っていないですね。。むしろ力を入れていたのがラクロス部の活動。ラクロスというスポーツは経験者が少なく、大学から横一線でスタートできるのが魅力で入部しました。弱いチームで、3年までは試合で「全敗」。悔しい思いを味わっていたのですが、4年次に「1勝」できたんですよ。ずっと負け続けていたので、何とかしようと練習メニューとチーム構成を変えました。練習では基礎体力を強化して当たり負けを防ぎ、1軍と2軍で明確にチームを分けてそれぞれがやるべきことに特化したのです。明確な方針を立てて仕組みを変えたら、チームが変わって成果が出た。この体験はその後のマネジメントのキャリアにおいて、一つの指標になっているかもしれません。まあ、たった「1勝」なんですけどね(笑)。

卒業して、大手メーカー系のSIerに入社しました。学校推薦の枠の中で探して、当時は不景気だったので安泰そうな会社を選択したのです。1年間の研修を受けた後、親会社の物流システムの開発と運用を担当していました。結果、この会社には2年間しか在籍しませんでした。確かに安定・安泰な会社だったのですが、そこにぶら下がっている年長者が何人か見受けられて、「このままでは成長せずに終わってしまう」と危機感を覚えた。それが退職のきっかけです。

社員番号は6。Chatworkの前身の会社に飛び込んだ

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――Chatworkへの転職を考えたきっかけは?

そのときですね、大学の同級生で、Chatworkの代表取締役CEOの山本正喜さんに声を掛けられたのは。彼とは大学に入学して最初のオリエンテーションの日に、たまたま同じクラスで出会って、そこからずっと仲が良いですね。情報工学科のクラスは「プログラミング ガチ勢」が多くて、その空気になじめなかったのが僕と正喜さんだったんですよ(笑)。皆の輪の中に入れずにいたのが僕たち2人で、自然と仲良くなって今に至ります。授業はいつも一緒でしたし、アメリカに正喜さんのお兄さんを訪ねに行ったこともありました。あの初日のオリエンテーションが、人生のターニングポイントでしたね。

正喜さんから「一緒に開発やらない?」と誘われて、当時は大阪にあったEC studio(Chatworkの旧社名)の本社に会社見学に行きました。設立されて半年くらいのタイミングで、メンバーは5名くらい。僕自身はもともと安定志向なので転職はすごく悩みましたね。色々な人の話を聞いて考えたのですが、最終的には敬愛する元中日の星野監督の「迷ったときには変化の大きいほうに行け」という言葉を信じて、転職を決めました。特に面識がありませんが(笑)。

企業の成長に自分の成長が追いつかず。新たなステージへの転身

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――設立から1年も経っていないChatworkに入社して、どのような業務を担当しましたか?

2005年の入社後は、僕と正喜さんとほか1名のエンジニアとで開発を担当。当時はChatworkというプロダクトは生まれておらず、SEOの支援ツールなどをつくっていました。業績の拡大とともに徐々に組織は大きくなり、ほどなくマネジメントを任されるように。Chatworkが社内ツールとして誕生して、2011年3月1日に一般にリリース。企業としての成長が一気に加速します。

僕自身は、2005年から2016年まで、11年に渡って開発を担当して、その大半の期間をマネージャーとして過ごしました。プロダクトの売上や人員が急拡大する中で、正直に言えば、自分には荷が重かった。開発業務とマネジメント、双方の役割を担ったのですが、どちらも中途半端に終わってしまった感があります。

――確かに、急速に成長する中での開発マネジメントは、大変だったと思います。

ユーザー数が拡大する中、既存のシステムで対処しようとする余り、新しい技術を導入せずに結果的に脆弱性を招いたこともありました。また、エンジニアの採用を強化して負荷を分散するべきなのに、特定の社員に頼って業務過多の状態をつくってしまったり。僕個人としても、目の前の対応に追われるばかりで、新しい技術に触れる時間を取れず、開発スキルが停滞してしまって。。。自分が書いたコードが、技術的負債を生み出していることに気付いた時には、何とも言えない気持ちになりました。

そして、2016年。10年以上にわたって務めた、開発マネージャーの任を解かれることになりました。異動することは考えていなかったので、正直、驚きましたね。「これから上場を本格的に目指すので、社内システムを刷新してくれ」と頼まれました。「なんで僕が、、」とも思いましたが、ここから僕の開発者としての人生が劇的に変わりはじめたのです。今振り返って見ても、新しいステージを用意してくれた会社には改めて感謝です。

守りから攻めのCSE(社内システム開発)へ。ガバナンス強化とメンバーの意欲との両立を図る

――創業期に入社して、ずっと開発に携わっていたので、ショックもあったかと思います。

少しの期間は落ち込みましたが、切り替えました。普通に社内システムを整えるだけでは面白くない。どうせやるなら、守るのではなく攻めよう。社内システム開発のエキスパートを「Corporate Solution Engineering(CSE)」と定義して、上場後に必要な業務フローの見直しからはじめました。たとえば「稟議」もその一つです。当時は起案と承認の仕組みが整っておらず、システムも統一されていなかった。現場の個別の判断をもとに手作業で稟議が進められ、ログも残らない。そのような状況は上場企業としてはふさわしくないので、稟議のフローを整備してシステムを入れて管理しようと試みました。

ここで気をつけたのは、規則で縛りすぎないこと。フローの過度なシステム化はメンバーの働くモチベーションを下げるケースもあります。先ほどの稟議を例にしますと、承認の回数を多くすればするほど、新しい提案を行う意欲が削がれてしまう。そのような事態を未然に防ぎつつ、企業のステージに合わせたあるべきガバナンスを担保する。このバランスを実現しながら、システムを構築するのはやりがいを感じますし、プロダクト開発とは違った面白さがある。CSEとして活動をはじめてすぐに、この仕事の魅力に気付きました。そこからは、自分の持ち味を発揮できるようになってきたのです。まさに転機でしたね。

社外の先端事例を取り入れるだけでは機能しない。そこにCSEとしての存在意義がある

――そして、今はどのようなミッションを遂行しているのでしょうか?

2019年の上場や、コロナ禍での業績の急伸を経て、また1つ企業としてのステージが上がろうとしています。まさに開発マネージャー時代に経験したことが再現しつつある。ここで同じ失敗をすることは、何としても避けたい。今回は自分の殻に閉じこもらずに、外部の成功事例に数多く触れて、ノウハウを積極的に取り入れています。

ただし、外の事例を取り入れるだけでは、なかなか意味のある解決策になりません。自社のカルチャーや企業としてのステージに合わせて、カスタマイズして組み込むことが重要です。ここがCSEとしてのセンスやスキルが問われる部分でもあり、やりがいでもある。Chatworkは「働くをもっと楽しく、創造的に」というコーポレートミッションを掲げています。よって、システムを使って業務を効率化させるだけでなく、そこに楽しさや創造力を刺激する何かを仕込む必要がある。CSEとしては、チャレンジのしがいがある環境です。

CSEチームが創造性高く働くことが、会社全体と日本の生産性向上につながる

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――最近のCSEのチャレンジとして、具体的なものを教えてください。

 ちょうどいま、コロナ禍もあり、MDM(モバイルデバイス管理)のシステムを導入しています。リモート環境下で、会社貸与のPCやスマートフォンを管理するための仕組みです。リスクを最小化するために、USBを使えなくしたり、パスワードを複雑にしたりと、厳しいレギュレーションを設定することは可能です。ただ、そのような規定をつくると、Chatworkのカルチャーの良さを削いでしまう。だから、自由度の高いラインでの運用を心掛けています。監視ポイントは決めておいて、押さえるべきところは押さえながら。加えて、運用の負荷を抑えるために、そしてメンバーに無駄な作業をやらせないように、できる限りの自動化を行っています。

――確かに、色々なメンバーの意見がある中で、二律背反のバランスを取るのは難しいですよね

リスクと自由は相反するものではありません。システムの力を借りながら、規則と創造性を両立させる働き方をメンバーに提供していく。いや、効率性と創造性を高め合うシステムを実装する。それがCSEチームのミッションです。最近、実感しているのは、僕たちが最も創造性が高く働くことが何よりも大切だということ。その創造性が社内システムに反映されて、メンバー全員の働き方へも大きく影響しますから。

そして、Chatworkのメンバーたちが「楽しく、創造的に」働くことで、プロダクトも進化していくでしょう。そして、プロダクトを使ってくださる皆さまの働き方が変わり、日本全体の生産性が上がっていく。少し言い過ぎかも知れませんが、その土台やきっかけをつくることがCSEの仕事の全てと言ってもよいと思います。

「CSEになりたい!」という人を増やしたい。そのために社外での存在感も高めていく

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――確かに、そこまで広い視野で仕事に取り組めると、毎日が楽しいですよね。

ただ、ぶっちゃけ課題も多いです(笑)。Chatworkは170名くらいの会社ですが、それほど時間を要さずに300名、500名、1000名へと拡大していくでしょう。単に人数が増えるだけでなく、まったく新しい組織が誕生したり、M&Aや業務提携の可能性もあります。会社としてのサイズや在り方が急速に変化していく中で、システム面での準備が万全とは言い切れません。そのギャップを何としてでも埋めておくのが当面の目標ですね。

――今後の須藤さん自身の目標はありますか?

社内にとどまらず、社外でのプレゼンスを高めていきたいですね。「ChatworkのCSEは凄い!」と、外部のCSEの方々に一目置かれるような存在になりたいです。最近の情シス界隈では、外部の情シス担当者ともやりとりができるコミュニティがあり、そこでの情報交換が盛んに行われています。ここの情報には何度も助けられていますが、今後は情報発信も増やして恩返しをしていき、より情シス・CSEを盛り上げていきたいです。「CSE業界」が切磋琢磨することが、日本全体の生産性を上げると信じているからです。

社内だけでなく社会にもコミットしていく。まずは3〜5年後の目標として、自分だけではなくて想いのある方とも連携しながら、「CSEとしてのキャリアパス」を確立させていきたいです。CSEを目指してくれる人を増やして、様々な会社での成功事例が蓄積された先に、この国の未来があるはずです。